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初恋の相手の相手⭐︎

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 his side


 先一昨日───。





「長……!課長!!!」


「っ!はい!…あ、榊くん…。」


「課長。どうかされました?」
(また、部長のこと見てるし…)




「う…ううん。大丈夫…」




 俺は彼女の顔を覗き込んだ。すると彼女の頬が上気していた。


(なんだよ。その顔…
 部長に対してはそんな顔するのかよ。
 くっそぉ…可愛いじゃねぇかぁぁ…)


「はぁ…。」




 顔が緩みそうになるのを誤魔化すように口実にしていチェック書類を手渡した。




「課長!この書類チェックお願いします。それと、今日の飲み会課長も来ますよね!」


 さりげに本題を突きつけた。
 そう俺が聞きたかったのは飲み会の参加の有無だった。


「はい、預かります。
 んー。今のところ仕事も順調だからね、
 それに霧島部長から来てって言われてるから」





「……部長…が。」
(部長が誘そったから行くんだ…。)



「え?ごめん。何か言った?榊くん?」


 独り言が口から漏れていたらしく、伊織課長が聞き直した。慌てて話を切り替えた。


「いえ!実は僕…飲み会に行くの新歓以来で、新歓には課長居ませんでしたし…来るのかなと思いまして!」

 すると何か思いを巡らせているのか反応が返って来なかった。



「課長…伊織課長!!」


 何度目かの呼びかけに反応した彼女はびっくりした様子で



「っ!」



「大丈夫ですか?もしや、体調でも悪いのですか?」



 顔を伺うと、彼女はじわじわと赤面していく。
(本当に具合悪いのか?)


「う、ううん!大丈夫…少し考えごとしててごめんなさい!」



 伊織課長が俯いて背後にある椅子のキャスターに足が引っかかった。


(わっ…)

 咄嗟に手を伸ばしたが、届かず部長が肩をガッチリと支えた。



「大丈夫かい?伊織さん。」

 ガッチリとキャッチする姿は頼もしい男性像と彼女の少し頬を赤らめている姿は美男美女のカップルの様だ。
「す、すみません!!部長」


「ははっ…伊織さんはおっちょこちょいだからなぁ。目が離せないよ。怪我しない様にね?」
(目が離せないのはテメェが課長を好きだからだろ)



 そう言って手をヒラヒラと振って通り過ぎていった
(スマートな紳士振りやがって…中身は獣の癖に!ぜってぇそうだ。ざけんなよ)


「大丈夫ですか?」


「え?」


「顔赤いですが…」
(ムカつく…めっちゃ好きじゃん!
 俺の勝ち目ねーじゃねーか。いや、まだ決まったわけじゃない!)



「え?!?!い、だい大丈夫!ご、ごめんね!
 チェック完了はい!!」


課長は資料を押し付けて背を向けられ座席に戻って言ってしまう。

「では、頑張って仕事6時までに終わらせます。チェックありがとうございました♪」



俺は引き攣りそうな笑顔を頑張って維持して、声音もいつも通り明るくした。
(クソ!あと少し早く反応できたら)











────────
6時に就業後、大口クラインアント契約取れて広告賞候補に上がる功績を祝っての飲み会だった。



彼女に話しかけるチャンスを周りの女社員に邪魔され、部長以外の男にも言い寄られる彼女を見るハメになるわ最悪な飲み会だった。


時折彼女の笑顔に頬を赤らめるモブ社員に俺のイラつきはピークに達していた。
いつもより飲むペースが早くなっていた。
そしてある時点からの記憶が途切れた。





気がつくと見知らぬ部屋のベットの上でワイシャツの前が全開していた。胸には一つ赤い跡があった。
 その状況に焦りはしなかった。俺をやけ酒したあと介抱と称して女社員の誰かではと思ったからだ。







 だが、次の日課長の朝からのあからさまな態度に、俺は一つの可能性を思いついた。ホテルに連れてきたのが彼女なら……
(えっ……。や、やべぇ…。も、もしもそうなら
 おいおい!!!!俺何かしちまったんじゃ…)




 そう考えると彼女の態度も、あの胸のアザも…合点がいく。その途端体から血の気が引いた気がした。



 脈なしでも関係ないと思っていたが、
 もしこの推測が本当なら脈なしとかより危険なのでは。最悪酔った勢いで女を抱く最低な男って思われて嫌われたら身も蓋もない。




 嫌われるのだけは避けないと。
 なんとしても昨夜の記憶を思いださないといけない。もし彼女に手を出してるなら覚えてないなんてありえない。

(勿体ないにも程がある!!!)




(あー!!!!
待て待て待て待てぇぇぇぇ!!!
それにそんな酒に酔った勢いで襲うクズ男と彼女に思われてるんじゃ………。)



 ガクッ!
「いっ…。」

 足の力が抜けて地面に膝を強打した。この時の自分は相当キャパオーバーだったんだろう。





 だが、この後俺の頭は今以上にキャパオーバーになるとも知らずに、課長の残業終わりを待ち伏せた。




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