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本編

-196- 迎える朝*

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「レン様ー、そろそろ起きてくださーい」

セオの声に、ぱちっと目が覚める。
部屋が明るい……っていうか、日が高い。


え……うそでしょ?なんで?

「……おはよう、セオ」
「はい、おはようございます」

戸惑いながらも朝のあいさつを告げると、返事が返ってくる。
セオは、洗顔代わりのタオルや着替えをてきぱきと用意してくれていた。

とりあえず、パジャマも着てるし、身体もさっぱりしてる。
昨晩の情交が嘘みたいだけど、上半身を起こしたときに下半身の怠さと力の入らなさが夢じゃないって思わせてくれる。

「ありがとう……セオ、今何時?」
「今は、11時過ぎですね」

濡れタオルを受け取り、顔を拭きながら問えば、恐ろしい時間の答えが返ってきた。
思わず手も止まる。

「え……ほんとに?」
「本当ですよ」
「そっかあ……」

途中で寝てしまった挙句、朝の挨拶もお見送りもせずにずっと寝こけていたことになる。
自分自身にがっかりだ。
あんなに尽くしてくれたのに、アレックスの最後を味わえなかった。

アレックスはちゃんといけたのかな?
本当だったら、精を受けて、アレックスのイク時の顔を目に焼き付けて。
それから、キスをしたりちょっといちゃいちゃしながらピロートーク……そんな幸せな時間を過ごすはずだったのに、肝心なところをすっ飛ばしたちゃったよ。

「ねえ、セオ、アレックスの朝の機嫌どうだった?」
「アレックス様はすこぶる機嫌が良さそうでしたよー、揶揄いたくなるくらいには口元が緩みっぱなしでした」
「そっか、ならよかった」

機嫌は良いみたいだ。
ってことは、アレックスにとったら、昨日のえっちは一応気分が良くなる出来事だったってことだと思う。
駄目だったら、みんなに朝からどんよりした顔晒しそうだもん。


「途中で寝落ちしちゃったみたいだから、あんまり覚えてない」
「あー…気失っちゃったみたいですね。
でも、アレックス様は、胸焼けするくらい満足そうにしてましたから、そこは心配せずとも大丈夫ですよ?
それより、歩けそうですか?っていうか、立てます?」
「うーん……無理かも」
「ですよねえ……。なら、アレックス様が戻られるまではその恰好でいましょうか」
「パジャマのまま?今日も、お昼に一度帰ってくるんだよね?」

「はい。身体はさっぱりしてると思うんですけど、中はそのままらしいんです。
帰ってこられてから、綺麗にしましょ」
「ん?中?」

中って……お腹ん中ってこと?
そのままってことは、言葉のとおりそのまんまってことだ。
自分のお腹に目を向ける。
パジャマの上から見たって何も変わらないし、こうしてる分には全然分からない。

「魔道具の使用をせず、産道を安定させるために必要だっておっしゃってましたよ。
さすがにずっとそのままでいいわけじゃないはずです。
今、気分が悪かったり、お腹が気持ち悪くはないですか?」
「……うん、大丈夫」

ってことは、歩いたら出てきちゃうのかな?
何がって……アレックスの精液だ。
でも、そっか。
ってことは、少なくともちゃんと最後までは出来たってことだ。

「ありがとう」
果実水を受け取ってのどを潤す。
今日のお水は、ほんのりレモン味だ。
酸っぱくないのにレモンの香りがする。

「お腹は空いてないと思うんですけど、どうです?」
「うん、全然空いてない」
「ですよね。産道が開いたままだと、お腹は空きづらいらしいんです。
アレックス様が戻ってこられたら、綺麗にして、それからご飯にしましょうね」
「そうなんだ、わかった。……今日は何もしなくていいの?」
「特にこれといって予定はないですよ?」

言いながら、セオは僕の顔にお風呂上りと同じオイルで保湿して、更に髪をブラッシングにかかる。

産道が開いたままだとお腹が空きづらいって、それって神器だからってことだよね?
でも、そっか……お尻の穴と腸が繋がってたら、消化されるもんね。
あれ?じゃあ、このままだったら消化機能がないってこと?
うんちもしないのかな?

「産道が開いたままだとうんちも出来ないの?」
「え、今したいです?」
「ううん、したくない」
「ですよね。まあ、そうみたいですねえ」
「え?それじゃあ食べたものってどこいってるの?」

旅にでも出ちゃってるんだろうか?
大体毎日快調な僕は、朝ごはんを食べてちょっとしたら毎日してたんだけど。

「うーん…詳しくは解明されてないんですけど、神器様は産道と繋がってるときは排泄しないって聞いてます。
だから、繋がってる間はお腹が減らないらしいんです」
「そっか……人間じゃないみたいだね」

「神様が作った実で変えられるって言われていますからねー…でも、ほら、繋がってる間も排泄できる状態だったら、出産のときに困ることになるでしょ?」
「たしかに」

赤ちゃんがうんちまみれだったら困る。

「それに、産道は通常普段は閉じてるものですから。
妊娠してもずっと開いたままでいるってことはないんですよ?」
「アレックスは魔力を注いだら繋がるって言ってたけれど、そうしないと繋がらないの?」
「はい」
「なら……毎回たくさん準備が必要なの?」
「え?やあ……そうではないと思いますよ?
繋がりにくかったのは、産道が開いてから少し時間が経っていたからだと思います。
それ以前に、初めてなら最初は色々と準備が必要だったんです。
少しずつ慣らしていけばいいと思いますよ。
……大変だったからあんまりしたくないって言うんじゃないでしょ?」
「それは、うん、勿論」

入れて抜き差しする分には気持ちよくなかった。
苦しさが勝ってたけれど、それがあっても良い思いをさせて貰えたし、次はいつかな?今日も出来るかな?って思ううくらいにはしたい。

「なら、大丈夫ですよ」

ほっとしたようにセオが頷くから、だったら大丈夫なんだろうなって思う。
セオは、今日は僕のことばかりだから、余裕があるなあ。

神器だと、普通の男の人とのえっちとは根本的な快楽は違うのかな?
前を弄らないと気持ちよくならないのかな?
でも、指ではすごく気持ちよかったんだから、慣れたら気持ちよくなれるはず。

どのくらいしたら慣れるのかな?
三回くらい?
アレックスのは、ぱっと見だけでも立派だからたくさんしないと慣れないかもしれない。

「レン様?何か心配事でも?」
「ねえセオ、何回くらいやったら慣れるものなの?」
「え?っそれは人ぞれぞれですよ」
「セオは?」
「っ俺に聞かないでくださいよー……っアレックス様次第です」
「まあそっか……それもそうだねえ」

人が違えば、相性もあるだろうし、一概には言えないものなのかもしれない。
本当は参考程度に聞きたかったけれど、『この話はおしまいです』って言われたら仕方ない。

「少し日も隠れてきましたし、着てください」
「うん」

背中のあたりに広げられた薄手のカーディガンに腕を通す。
薄手だけれど、肌触りが良いしあたたかい。
カシミヤかな?

「明日からの予定を聞いてもいい?」
「ええ、勿論です。
明日明後日は今のところ特に決まった予定はありませんよ?
明々後日の午後に、キャンベル商会が手掛ける“エイミー”の店長がくるので、レン様の化粧品を見繕ってもらう予定です。
その次の日からは、新しい使用人の面接がいくつか入ってきますから、爺さまとアニーさんと一緒に面談です。
面接の話はアレックス様から聞いてますか?」
「うん。具体的にどうするかっていうのは聞いてないけど、任されたよ」

「レン様が気に入らなかったらアレックス様も気に入らないんで、紹介相手に限らず遠慮なく断ってくださいね。
その方が、後々面倒にならないですし、双方良いはずですから」
「うん、わかった。僕はもう雇う側だもんね、ちゃんと見て選ぶね」
「はい」
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