154 / 173
第6章 新しい国
133.神様が降り立つみたいです
しおりを挟む
呆然と人々が空を見上げていると神々の中央にいた少し幼さが残りつつもひときわ神々しさを携えた女性が一歩前に出る。それと同時に左隣りの神以外は騎士が主に対して行う敬意と服従を示すとされる片膝を立て畏まる。これにより現在立っている2柱の神が神々の頂点にいることが分かる。
「あのお方は・・・」
フラップはバルコニーで平服しながら呟く。
「ハジメさんの教会にあった、アーシラトさま・・・?」
商業ギルド長のエヴァが同じ体勢で頬に汗を掻きながら独り言のように呟く。
【人の子等よ、騙し、傷つけ、奪い合い、私欲を肥やさんとする汝等の行いは目に余る。大を助けるため小を犠牲にするという営み・・・・人が生きていくには必要なこととは言え、我らも、我ら神々の愛する使者も疲れ果た。それ故二度と姿を現さないだろう】
美しく透き通り暖かみを感じる声が全てが凍てつくような言葉を紡ぐ。
「・・・ハジメ君が神々の使者だったと?」
冒険者ギルド長のセバスチャンが呆然と呟く。
アーシラトの左隣りの神がその神託を続ける。
【世界樹が根付いた今、1つの大地であることで争いが起こるのならば、分けることにする。これは決定である。汝らの陳情は聞かぬ。使者の身内たる者たちへの慈悲にて今こうして告げているだけである。我々神も二度とそなた達に姿を見せることはないだろう。加護は全て消え去るが技術は残るようにする。汝らの国というものがどうなっていくのか我らは関与せぬこととなる。汝らの行いにより、神の奇跡は二度と起こらぬ。創造神スクラドの名においてそう告げる】
激しい言葉が人々に降りてくる。
【戦闘神コンバトールの名のもとに、加護を返してもらう】
【魔法神サージェリーの名のもとに、加護を返してもらう】
【商神の名のもとに、加護を返してもらう】
【全ての管理者ワーデンの名のもとに許可する】
その瞬間両ギルド長の体から光の粉が飛び出し、神々に向かって飛んでいく。フラップたちはそれを目で追うと、世界中の至るところから同じような光が神々の手に戻っていっていた。
【人の子等よ。加護は失われた。己の力量を違えぬよう忠告しておく】
ワーデンが少し柔らかい口調で告げる。
【【世界は生まれ変わる】】
アーシラトとスクラドがそう言い、杖を頭上に上げると、世界に激震が走る。地面は激しい振動し、体に伝わってくる。しかし木々は揺れておらず、古い建物も壊れることなく存在していた。木々も風に揺れ、場違いな鳥たちの穏やかな歌声が響いてくる。しかし確かに体は揺れを感じていて、立つことも出来ない。左右で平服している両ギルド長に視線を送ると彼らの体はぶれて見えている。ただただ人のみが揺れているだけという事なのだろう。
『・・・神の御業・・・』
フラップはそれを実感せざるを得なかった。1分だか10分だか、それとも1時間だったか。揺れは唐突に終わりを迎えた。
「・・・私たちは使者様を切り捨ててしまった・・・」
フラップが呟く。
「被害の確認をしてまいります」
エヴァとセバスチャンはそう告げると領主の家を出る。
~冒険者ギルド~
ギルドに戻ったセバスチャンは経験豊富かつ戦闘力が高い冒険者チームに街の外四方へと向かってもらい、登録したばかりの冒険者たちには町の被害状況の確認に向かって貰った。結局イブの街には混乱した住人たちが居るだけで建物などには全く被害がなかった。その日の午後クーラ方面に向かった冒険者たちからは特に変わりはなかったとの報告があっただけだった。しかし、翌日の午後西の大森林方面に向かった冒険者たちからは大森林は海を隔てた向こう岸に小さくあったとの報告があった。
そして更にその数週間後に北の帝国と南のダス国の間に海が出来ていて、対岸が小さく見え、海流も早く、とてもじゃないが泳いで渡ることは出来ないとのことだった。
「島になったということか・・・。神々の言われた1つの大地を分けるというのはこのことだったのか」
誰もいないギルド長室でセバスチャンはそう独り言を呟きギルド長室を出て1階の受付へと向かった。それを見た受付嬢の一人が
「ギルド長、どうかされました?」
と聞いてきたので
「今は少しでも情報が欲しいところですね。受付で冒険者たちの声を聴くことにしました」
と告げる。彼女は「なるほど」と頷き席を譲り、他の受付嬢の書類整理のサポートを行うことにした。
「お、ギルド長が今日は受付なんです?」
冒険者の1人から声が掛かる。
「えぇ。情報を得ようと思いましてね。それで魔物はどうでしたか?」
「なるほど。少し生態系が移動しているって感じかな」
とギルドに居た冒険者たちはそう言う。
「そうですか・・・・。これはまずいですね・・・。ポーラ、受付を代わってください。私は領主様の所へ行きます」
そう言って1時間もせずに受付を後にしたのだった。
~商業ギルド~
帝国から来たキャラバンからエヴァとベスパは話を聞いていた。彼らは神々が姿を現した時、丁度国境の検問所を通過している最中だった。
「私たちは10人の商人のキャラバンなのですが、私と後2人がアヴァ国に入ったとき、神様たちが降臨されたのでございます。そしてあの揺れが起こった時、検問所の途中から大地がみるみるうちに離れて行きました。私たち3名以外は帝国領と一緒に離れて行きました・・・」
彼らによると検問所も刃物ですぱっと切ったように中央で割れたが埃1つ落ちてこなかったらしい。
「ということは全ての国が島となった可能性が高いということ・・・?」
エヴァは思わず言葉を紡いだ。
「では、私たちはこれで失礼します」
「えぇ。情報ありがとうございました」
商人の言葉にベスパが答える。そしてその数分後、ギルド長室の扉が激しくノックされる。ベスパが怪訝な顔をして開けると受付嬢が慌てた様子で立っていた。
「ギルド長!!契約が、契約が出来ません!」
「え?なんですって!!」
3人で1階の一番奥の神殿へと向かう。元々、契約書を神に捧げることが出来る像は王都の商業ギルドにしかなく、最近までは王都に契約書を送付して神に捧げ、誓約となっていたが、魔力ポーションと体力ポーションの中心地となったイブの街はいちいち王都に送付するのは時間の無駄と言うことで、特例的に商神の神像が設置された。それによりいち早く契約することが出来るようになっていたのだが、受付嬢の話では今は出来ないらしい。以前の契約書は生きていると受付嬢に説明を受ける。
「契約の誓約を伏して願い奉る」
エヴァが神像の前で畏まり契約の儀式をすすめる。本来なら神像が光り、契約書に神の印が付くのだが、今の神像はまったく無反応だった。勿論神の印も浮かばない。
「神の奇跡は二度と起こらない・・・・。以前の契約が生きているのは神の慈悲か・・・」
エヴァの呟きにベスパと受付嬢は沈黙するしかなかった。
「王都の商業ギルドへ向かう。決まるまで契約は仮としておくように。ベスパは領主様へこのことを報告して」
エヴァはそう言ってギルドを、イブの街を出て行った。
ベスパが領主のもとを訪れたのはそれから30分くらい後であった。彼女が執務室へ続く廊下を進んでいると前にセバスチャンの姿が目に入った。ベスパが声を掛けると
「エヴァさんはどちらに?」
セバスチャンがそう問う。ベスパは
「領主様と一緒に報告させてください」
と話し、2人は執務室へと入って行った。
「まずは商業ギルドから報告させてください。契約が出来なくなりました」
そう告げると2人はぎょっとした顔をする。
「商神様が私たちにお応えしてくれなくなりました。ギルド長は『二度と神の奇跡は起きない』と宣言されたからだろうと言っておりました。彼女は今王都の商業ギルドで対応をどうするかの相談に向かっています」
あまりの出来事に2人は言葉を発しない。
「これからの契約については神の誓約は得られないでしょう。そうなってくると相手を信じるということしか出来なくなるでしょう・・・・」
あまりの報告にベスパ自身が困惑気味に告げる。
「・・・これは・・・」
フラップは思わず「こんなことあんまりだ」と大声で言いたくなった。自分の決断のせいで神々の力はあてにならなくなったのである。多を助けるために小を切り捨てる、それは貴族階級にとっては当然の選択である。しかしその小の中に神々の使者がいたのだ。ただそれだけだったのに、と彼は思ってしまった。
「冒険者ギルドとして報告します。魔物の生態系は変わっておりません。ですので街の安全は問題ありませんが、中級以降の魔物の素材は入手困難になります。また大森林がありませんので、様々な薬類は入手が困難になることが予想されます。神々の降臨の際大森林に居た冒険者もこの国へ弾き飛ばされたとのことで、10袋程度しかクスリとなる草はありません・・・」
淡々とセバスチャンは報告する。
「なんということだ・・・。なぜこんな目に合わなければならない・・・」
思わず飲み込んでいた思いが口を付く。
「仕方ありません。私たちは街を守るために神々の使者であったハジメさんを切ったのです。知らなかったとは言え、その責は私たちにあります。今はどうやって経済を回すか考えなければ・・・。金貨や銀貨は今ある数しかありません。この国はそういった生産はありませんでしたから。まずは貨幣となり得る鉱石の発見が優先されると思われます、おじい様」
ウォールがフラップの肩に手を置く。
「ベスパさん。今商業ギルドにある貨幣はどれくらい残っているのですか?」
「金貨・半金貨がおよそ50万枚、銀貨が100万枚、半銀貨と銅貨が500万枚くらいです。ハジメさんが資産をほぼ全額降ろしてしまったので1/8になっています。これでハジメさんが国外へと出たというのであれば、他国との交易が容易くない今となっては早くて数か月、遅くても1年程度で貨幣の価値が変わってしまいます」
その回答に絶句するフラップ。ベスパの答えを単純計算すればハジメの預貯金は56億S、白金貨560枚近くあった計算になる。つまり、ハジメにお金を借りれば王弟に支払う白金貨500枚くらいは払えたということであり、そしてなにより今回のこのような大陸の分断は避けられた可能性があったということである。
「おじい様っ」
ウォールの声で我に返る。
「冒険者ギルド、商業ギルドに鉱山の捜査を領主として依頼する」
フラップはそう告げた。
『おじい様は自分の責任をハジメさんに転嫁しようとしているのか・・・・』
ギルド長2人と共に部屋を出ながらウォールはそう思った。
「あのお方は・・・」
フラップはバルコニーで平服しながら呟く。
「ハジメさんの教会にあった、アーシラトさま・・・?」
商業ギルド長のエヴァが同じ体勢で頬に汗を掻きながら独り言のように呟く。
【人の子等よ、騙し、傷つけ、奪い合い、私欲を肥やさんとする汝等の行いは目に余る。大を助けるため小を犠牲にするという営み・・・・人が生きていくには必要なこととは言え、我らも、我ら神々の愛する使者も疲れ果た。それ故二度と姿を現さないだろう】
美しく透き通り暖かみを感じる声が全てが凍てつくような言葉を紡ぐ。
「・・・ハジメ君が神々の使者だったと?」
冒険者ギルド長のセバスチャンが呆然と呟く。
アーシラトの左隣りの神がその神託を続ける。
【世界樹が根付いた今、1つの大地であることで争いが起こるのならば、分けることにする。これは決定である。汝らの陳情は聞かぬ。使者の身内たる者たちへの慈悲にて今こうして告げているだけである。我々神も二度とそなた達に姿を見せることはないだろう。加護は全て消え去るが技術は残るようにする。汝らの国というものがどうなっていくのか我らは関与せぬこととなる。汝らの行いにより、神の奇跡は二度と起こらぬ。創造神スクラドの名においてそう告げる】
激しい言葉が人々に降りてくる。
【戦闘神コンバトールの名のもとに、加護を返してもらう】
【魔法神サージェリーの名のもとに、加護を返してもらう】
【商神の名のもとに、加護を返してもらう】
【全ての管理者ワーデンの名のもとに許可する】
その瞬間両ギルド長の体から光の粉が飛び出し、神々に向かって飛んでいく。フラップたちはそれを目で追うと、世界中の至るところから同じような光が神々の手に戻っていっていた。
【人の子等よ。加護は失われた。己の力量を違えぬよう忠告しておく】
ワーデンが少し柔らかい口調で告げる。
【【世界は生まれ変わる】】
アーシラトとスクラドがそう言い、杖を頭上に上げると、世界に激震が走る。地面は激しい振動し、体に伝わってくる。しかし木々は揺れておらず、古い建物も壊れることなく存在していた。木々も風に揺れ、場違いな鳥たちの穏やかな歌声が響いてくる。しかし確かに体は揺れを感じていて、立つことも出来ない。左右で平服している両ギルド長に視線を送ると彼らの体はぶれて見えている。ただただ人のみが揺れているだけという事なのだろう。
『・・・神の御業・・・』
フラップはそれを実感せざるを得なかった。1分だか10分だか、それとも1時間だったか。揺れは唐突に終わりを迎えた。
「・・・私たちは使者様を切り捨ててしまった・・・」
フラップが呟く。
「被害の確認をしてまいります」
エヴァとセバスチャンはそう告げると領主の家を出る。
~冒険者ギルド~
ギルドに戻ったセバスチャンは経験豊富かつ戦闘力が高い冒険者チームに街の外四方へと向かってもらい、登録したばかりの冒険者たちには町の被害状況の確認に向かって貰った。結局イブの街には混乱した住人たちが居るだけで建物などには全く被害がなかった。その日の午後クーラ方面に向かった冒険者たちからは特に変わりはなかったとの報告があっただけだった。しかし、翌日の午後西の大森林方面に向かった冒険者たちからは大森林は海を隔てた向こう岸に小さくあったとの報告があった。
そして更にその数週間後に北の帝国と南のダス国の間に海が出来ていて、対岸が小さく見え、海流も早く、とてもじゃないが泳いで渡ることは出来ないとのことだった。
「島になったということか・・・。神々の言われた1つの大地を分けるというのはこのことだったのか」
誰もいないギルド長室でセバスチャンはそう独り言を呟きギルド長室を出て1階の受付へと向かった。それを見た受付嬢の一人が
「ギルド長、どうかされました?」
と聞いてきたので
「今は少しでも情報が欲しいところですね。受付で冒険者たちの声を聴くことにしました」
と告げる。彼女は「なるほど」と頷き席を譲り、他の受付嬢の書類整理のサポートを行うことにした。
「お、ギルド長が今日は受付なんです?」
冒険者の1人から声が掛かる。
「えぇ。情報を得ようと思いましてね。それで魔物はどうでしたか?」
「なるほど。少し生態系が移動しているって感じかな」
とギルドに居た冒険者たちはそう言う。
「そうですか・・・・。これはまずいですね・・・。ポーラ、受付を代わってください。私は領主様の所へ行きます」
そう言って1時間もせずに受付を後にしたのだった。
~商業ギルド~
帝国から来たキャラバンからエヴァとベスパは話を聞いていた。彼らは神々が姿を現した時、丁度国境の検問所を通過している最中だった。
「私たちは10人の商人のキャラバンなのですが、私と後2人がアヴァ国に入ったとき、神様たちが降臨されたのでございます。そしてあの揺れが起こった時、検問所の途中から大地がみるみるうちに離れて行きました。私たち3名以外は帝国領と一緒に離れて行きました・・・」
彼らによると検問所も刃物ですぱっと切ったように中央で割れたが埃1つ落ちてこなかったらしい。
「ということは全ての国が島となった可能性が高いということ・・・?」
エヴァは思わず言葉を紡いだ。
「では、私たちはこれで失礼します」
「えぇ。情報ありがとうございました」
商人の言葉にベスパが答える。そしてその数分後、ギルド長室の扉が激しくノックされる。ベスパが怪訝な顔をして開けると受付嬢が慌てた様子で立っていた。
「ギルド長!!契約が、契約が出来ません!」
「え?なんですって!!」
3人で1階の一番奥の神殿へと向かう。元々、契約書を神に捧げることが出来る像は王都の商業ギルドにしかなく、最近までは王都に契約書を送付して神に捧げ、誓約となっていたが、魔力ポーションと体力ポーションの中心地となったイブの街はいちいち王都に送付するのは時間の無駄と言うことで、特例的に商神の神像が設置された。それによりいち早く契約することが出来るようになっていたのだが、受付嬢の話では今は出来ないらしい。以前の契約書は生きていると受付嬢に説明を受ける。
「契約の誓約を伏して願い奉る」
エヴァが神像の前で畏まり契約の儀式をすすめる。本来なら神像が光り、契約書に神の印が付くのだが、今の神像はまったく無反応だった。勿論神の印も浮かばない。
「神の奇跡は二度と起こらない・・・・。以前の契約が生きているのは神の慈悲か・・・」
エヴァの呟きにベスパと受付嬢は沈黙するしかなかった。
「王都の商業ギルドへ向かう。決まるまで契約は仮としておくように。ベスパは領主様へこのことを報告して」
エヴァはそう言ってギルドを、イブの街を出て行った。
ベスパが領主のもとを訪れたのはそれから30分くらい後であった。彼女が執務室へ続く廊下を進んでいると前にセバスチャンの姿が目に入った。ベスパが声を掛けると
「エヴァさんはどちらに?」
セバスチャンがそう問う。ベスパは
「領主様と一緒に報告させてください」
と話し、2人は執務室へと入って行った。
「まずは商業ギルドから報告させてください。契約が出来なくなりました」
そう告げると2人はぎょっとした顔をする。
「商神様が私たちにお応えしてくれなくなりました。ギルド長は『二度と神の奇跡は起きない』と宣言されたからだろうと言っておりました。彼女は今王都の商業ギルドで対応をどうするかの相談に向かっています」
あまりの出来事に2人は言葉を発しない。
「これからの契約については神の誓約は得られないでしょう。そうなってくると相手を信じるということしか出来なくなるでしょう・・・・」
あまりの報告にベスパ自身が困惑気味に告げる。
「・・・これは・・・」
フラップは思わず「こんなことあんまりだ」と大声で言いたくなった。自分の決断のせいで神々の力はあてにならなくなったのである。多を助けるために小を切り捨てる、それは貴族階級にとっては当然の選択である。しかしその小の中に神々の使者がいたのだ。ただそれだけだったのに、と彼は思ってしまった。
「冒険者ギルドとして報告します。魔物の生態系は変わっておりません。ですので街の安全は問題ありませんが、中級以降の魔物の素材は入手困難になります。また大森林がありませんので、様々な薬類は入手が困難になることが予想されます。神々の降臨の際大森林に居た冒険者もこの国へ弾き飛ばされたとのことで、10袋程度しかクスリとなる草はありません・・・」
淡々とセバスチャンは報告する。
「なんということだ・・・。なぜこんな目に合わなければならない・・・」
思わず飲み込んでいた思いが口を付く。
「仕方ありません。私たちは街を守るために神々の使者であったハジメさんを切ったのです。知らなかったとは言え、その責は私たちにあります。今はどうやって経済を回すか考えなければ・・・。金貨や銀貨は今ある数しかありません。この国はそういった生産はありませんでしたから。まずは貨幣となり得る鉱石の発見が優先されると思われます、おじい様」
ウォールがフラップの肩に手を置く。
「ベスパさん。今商業ギルドにある貨幣はどれくらい残っているのですか?」
「金貨・半金貨がおよそ50万枚、銀貨が100万枚、半銀貨と銅貨が500万枚くらいです。ハジメさんが資産をほぼ全額降ろしてしまったので1/8になっています。これでハジメさんが国外へと出たというのであれば、他国との交易が容易くない今となっては早くて数か月、遅くても1年程度で貨幣の価値が変わってしまいます」
その回答に絶句するフラップ。ベスパの答えを単純計算すればハジメの預貯金は56億S、白金貨560枚近くあった計算になる。つまり、ハジメにお金を借りれば王弟に支払う白金貨500枚くらいは払えたということであり、そしてなにより今回のこのような大陸の分断は避けられた可能性があったということである。
「おじい様っ」
ウォールの声で我に返る。
「冒険者ギルド、商業ギルドに鉱山の捜査を領主として依頼する」
フラップはそう告げた。
『おじい様は自分の責任をハジメさんに転嫁しようとしているのか・・・・』
ギルド長2人と共に部屋を出ながらウォールはそう思った。
0
お気に入りに追加
152
あなたにおすすめの小説
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
婚約破棄されたら魔法が解けました
かな
恋愛
「クロエ・ベネット。お前との婚約は破棄する。」
それは学園の卒業パーティーでの出来事だった。……やっぱり、ダメだったんだ。周りがザワザワと騒ぎ出す中、ただ1人『クロエ・ベネット』だけは冷静に事実を受け止めていた。乙女ゲームの世界に転生してから10年。国外追放を回避する為に、そして后妃となる為に努力し続けて来たその時間が無駄になった瞬間だった。そんな彼女に追い打ちをかけるかのように、王太子であるエドワード・ホワイトは聖女を新たな婚約者とすることを発表した。その後はトントン拍子にことが運び、冤罪をかけられ、ゲームのシナリオ通り国外追放になった。そして、魔物に襲われて死ぬ。……そんな運命を辿るはずだった。
「こんなことなら、転生なんてしたくなかった。元の世界に戻りたい……」
あろうことか、最後の願いとしてそう思った瞬間に、全身が光り出したのだ。そして気がつくと、なんと前世の姿に戻っていた!しかもそれを第二王子であるアルベルトに見られていて……。
「……まさかこんなことになるなんてね。……それでどうする?あの2人復讐でもしちゃう?今の君なら、それができるよ。」
死を覚悟した絶望から転生特典を得た主人公の大逆転溺愛ラブストーリー!
※最初の5話は毎日18時に投稿、それ以降は毎週土曜日の18時に投稿する予定です
異世界のんびりワークライフ ~生産チートを貰ったので好き勝手生きることにします~
樋川カイト
ファンタジー
友人の借金を押し付けられて馬車馬のように働いていた青年、三上彰。
無理がたたって過労死してしまった彼は、神を自称する男から自分の不幸の理由を知らされる。
そのお詫びにとチートスキルとともに異世界へと転生させられた彰は、そこで出会った人々と交流しながら日々を過ごすこととなる。
そんな彼に訪れるのは平和な未来か、はたまた更なる困難か。
色々と吹っ切れてしまった彼にとってその全てはただ人生の彩りになる、のかも知れない……。
※この作品はカクヨム様でも掲載しています。
前世の記憶さん。こんにちは。
満月
ファンタジー
断罪中に前世の記憶を思い出し主人公が、ハチャメチャな魔法とスキルを活かして、人生を全力で楽しむ話。
周りはそんな主人公をあたたかく見守り、時には被害を被り···それでも皆主人公が大好きです。
主に前半は冒険をしたり、料理を作ったりと楽しく過ごしています。時折シリアスになりますが、基本的に笑える内容になっています。
恋愛は当分先に入れる予定です。
主人公は今までの時間を取り戻すかのように人生を楽しみます!もちろんこの話はハッピーエンドです!
小説になろう様にも掲載しています。
土属性を極めて辺境を開拓します~愛する嫁と超速スローライフ~
にゃーにゃ
ファンタジー
「土属性だから追放だ!」理不尽な理由で追放されるも「はいはい。おっけー」主人公は特にパーティーに恨みも、未練もなく、世界が危機的な状況、というわけでもなかったので、ササッと王都を去り、辺境の地にたどり着く。
「助けなきゃ!」そんな感じで、世界樹の少女を襲っていた四天王の一人を瞬殺。 少女にほれられて、即座に結婚する。「ここを開拓してスローライフでもしてみようか」 主人公は土属性パワーで一瞬で辺境を開拓。ついでに魔王を超える存在を土属性で作ったゴーレムの物量で圧殺。
主人公は、世界樹の少女が生成したタネを、育てたり、のんびりしながら辺境で平和にすごす。そんな主人公のもとに、ドワーフ、魚人、雪女、魔王四天王、魔王、といった亜人のなかでも一際キワモノの種族が次から次へと集まり、彼らがもたらす特産品によってドンドン村は発展し豊かに、にぎやかになっていく。
いきなり異世界って理不尽だ!
みーか
ファンタジー
三田 陽菜25歳。会社に行こうと家を出たら、足元が消えて、気付けば異世界へ。
自称神様の作った機械のシステムエラーで地球には帰れない。地球の物は何でも魔力と交換できるようにしてもらい、異世界で居心地良く暮らしていきます!
婚約破棄と領地追放?分かりました、わたしがいなくなった後はせいぜい頑張ってくださいな
カド
ファンタジー
生活の基本から領地経営まで、ほぼ全てを魔石の力に頼ってる世界
魔石の浄化には三日三晩の時間が必要で、この領地ではそれを全部貴族令嬢の主人公が一人でこなしていた
「で、そのわたしを婚約破棄で領地追放なんですね?
それじゃ出ていくから、せいぜいこれからは魔石も頑張って作ってくださいね!」
小さい頃から搾取され続けてきた主人公は 追放=自由と気付く
塔から出た途端、暴走する力に悩まされながらも、幼い時にもらった助言を元に中央の大教会へと向かう
一方で愛玩され続けてきた妹は、今まで通り好きなだけ魔石を使用していくが……
◇◇◇
親による虐待、明確なきょうだい間での差別の描写があります
(『嫌なら読むな』ではなく、『辛い気持ちになりそうな方は無理せず、もし読んで下さる場合はお気をつけて……!』の意味です)
◇◇◇
ようやく一区切りへの目処がついてきました
拙いお話ですがお付き合いいただければ幸いです
母親に家を追い出されたので、勝手に生きる!!(泣きついて来ても、助けてやらない)
いくみ
ファンタジー
実母に家を追い出された。
全く親父の奴!勝手に消えやがって!
親父が帰ってこなくなったから、実母が再婚したが……。その再婚相手は働きもせずに好き勝手する男だった。
俺は消えた親父から母と頼むと、言われて。
母を守ったつもりだったが……出て行けと言われた……。
なんだこれ!俺よりもその男とできた子供の味方なんだな?
なら、出ていくよ!
俺が居なくても食って行けるなら勝手にしろよ!
これは、のんびり気ままに冒険をする男の話です。
カクヨム様にて先行掲載中です。
不定期更新です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる