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第4章 人材

86.断りたいみたいです

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年の瀬も迫った頃の夕方、ハジメの書斎にスクナヒコが突然現れる。

「こんばんは、ハジメさん。お願いがあってきたんだよ」

とハジメに言う。神様のお願いは聞かざるを得ないだろうが、そこはちょっと反抗したくなる。

「え?ヤです」

と即答する。

「おけー。分かった。良かったよ。正直さー、僕も自分のお願いじゃないのに、ハジメさんにお願いするの嫌だったんだよー」

とほっとしたように言う。そこにはなんの含みもなかった。ハジメ的には「そこは聞いてよー」と言われるのを期待していたのが。

「それなら良かったです。まぁ、断っておいてなんですが、念のために何のお願いだったんですか?」

と問うと

「あぁ、そうだね。子供のお使いじゃないから要件も言わず断られたと帰ったら僕が理不尽に怒られちゃいそうだしね。えっとね、魔法神と戦闘神、商神あきないがみがさ、わがまま言い始めてね」

あいの入れたお茶を飲みつつ言う。あいもスクナヒコの扱いに随分慣れたようである。取りあえず普通に対応している。

「魔法神様、戦闘神様、商神様・・・がですか?」

とハジメが繰り返すと

「うんうん。ハジメさん・・・、もう仲良しだからハジメっちでいいよね。ハジメっちがさ、スクラド様と僕の像を作ったでしょ?」

「えぇ、常世とこよの神様で知っているのはスクラド様だけですし、スクナヒコ様はどっちか分からなかったので、教会には設置せずに温泉に設置しましたけど」

とスクナヒコの話に相槌を打つ。

「僕はさ、自由を愛するひとだからさ、それで良いんだけどね。まぁそれは置いといて、僕が優雅に薬草茶を飲んでいたらね、3柱がさ、怒鳴り込んできたんだよ。失礼しちゃうでしょ?」

スクナヒコは腕を胸の前で組んで頬を膨らませる。

「3柱様が?」

「そうなんだよ。ハジメの教会に自分たちの像も作って欲しいってー。そんなの自分たちでお願いしたらいいのにね」

アニメなら頭上に湯気が出そうな感じである。確かにスクナヒコの言い分はよくわかる。

「はぁ・・・。それでなんでスクナヒコ様がここへ来られることに?」

「面識あるのが、僕かスクラド様じゃん?スクラド様はあんな調子だからハジメっちの所に来たら帰らなくなる確率が高くて、仕事が滞るってさー」

まぁ、そうじゃなくても天地創造神のスクラドは常世とこよのトップなのだから、その配下がお願いしてわざわざ人間ハジメの住む場所に来させる訳にはいかないだろう。

「魔法神サージェリーと戦闘神コンバトールはエルフの国滅ぼしちゃったじゃん?だから恥ずかしくて来れないって言って、商神メルクリウスは最近商売上の契約が多くて忙しいんだってー」

商神ネスが忙しいのはハジメの行いせいが大半を占めるらしい。土地の契約からはじまり、奴隷の契約、雇用の契約、建築の契約など短時間で行ったのだから仕方ないとのことであった。

「あぁ、今まで暇々言ってたんだからハジメっちが気にすることじゃないからね」

と言う。

この世界の商売上の契約は勿論紙面に残すのだが、それは商神よって認可される仕組みになっている。そうすることでその契約は効力を持ち違反すればその後契約は保護されなくなる。一般的に商人・商業ギルドでは神が認めたイコール信用ありと判断しているのである。その仕組みは知らないが、スクナヒコの話では神が承認するとそれが分かるようになるらしい。それが無ければ、新たな契約を結べなくなるのである。流石神が普通に居る異世界、神様が信用調査をするのだ。その精度は100%である。

「なるほど・・・。でもそれで3柱様が像を作って欲しいと言うのは何故なんです?」

とハジメは問う。

「神がこの世界に来るっていうのは結構力を使うんだよね。そこで像の話になるんだけど、自分を形どった神像ってその大きさと品質に比例して信仰心を溜めることが出来るんだよ。その力を使ってこの世界に来ることが出来るんだよ。僕は薬と温泉の神だから2つとも移動しないじゃん。だから割と大きい像が各地にあって、両方から信仰が集まるから気軽に来れるんだけどね。魔法神も戦闘神は冒険者が信者に多いんだけど、中くらいの像が冒険者ギルドの本部だけしかないんだよね。商神も商業ギルドの本部に同じくらいの大きさがあるだけだし」

「でもそれだと信仰する人が居て初めて成り立つってことでしょう?それにそれをスクナヒコ様がお願いに来るって言うのは・・・」

とハジメが言うと

「そうでしょ!ハジメっちもそう思うよね?」

スクナヒコが我が意を得たりと食い気味に上半身を乗り出す。するとスクナヒコの背後に4つの姿が現れる。一人は白いローブで足元まで覆われていて、首辺りまである杖を突いた白髪の女性、2人目はまだ若い男性でシックスパックに割れた筋肉を見せつけるように上半身は裸で、胸に大きなルビーの飾りが鎖で四方から留められている。下半身はゆったり目のズボンを履いていて、背後には左肩から右腰へ大きな剣と右肩から大きな斧を担いでおり、履いた靴の左右には小さな翼が付いている。
そして残ったのは5歳くらいの男の子と女の子である。普通の旅人の恰好であるが、男の子はライオンに、女の子はユニコーンに跨っている。

「ほら、3人ともちゃんとお願いして」

とスクナヒコが言う。

「3人?居るの4人だけど?」

とスクナヒコが言うと、幼児2人は

「僕は兄のクリス」

「私は妹のメルク」

と言うと一瞬姿がブレたと思った次の瞬間には一人の青年が頭から角をはやした白いライオンに跨っていた。こうして4人は3人になった。

「私は商神メルクリウス」

上半身裸の男が胸のルビーを触ると一瞬にして鎧甲冑を纏った姿になった。

「俺は戦闘神コンバトール」

続いて女性が前に少しでて、

「私は2柱ほど特徴はないけど、魔法神サージェリー」

ハジメは顔をスクナヒコに向けると彼はお茶のお代わりを固まって動けていないあいにお願いしていた。

それから我に戻ったあいが4人にお茶を出し終わった頃、ハジメは

「なぜ直接神様が依頼しにわざわざ家に?」

と問う。ややお疲れ気味であるがそれは仕方ないだろう。

「あぁ、ハジメっち。それはね、3柱ともこの世界に来ることが多いからなんだよね。魔法とか戦いとか商いって普通でしょ?戦争があったら魔力のバランスが大きく崩れるからね、その度にこっちでバランスを調整しなおしてるんだよ。商神は戦争が起きたら奴隷が多く生まれちゃうからね、それを処理するためにこっちに来ることが多いんだよ。3柱とも年に2-3回はこっちに来てるんだよ」

ともごもごしている3人に代わりスクナヒコが説明する。今までは戦争が起こる1か月ほど前にこっちへ渡り、仕事が終わった後1か月ほどこちらで力を溜めて帰っていたらしい。その2か月間は常世とこよでの仕事は滞っていたらしい。そしてクーラに作って欲しい理由は、

「ハジメ様の所には4大精霊が揃っていますでしょう。そのお陰で信仰力が溜まりやすいのです。今のままですと1回こちらとあちらを行き来するのに必要な力を溜めようとしましたら、およそ2年程の期間が必要になるのです。それがこの街ですと半年で溜まるのです。年に2回往復でき、しかも力が溜まるまで待つと言う期間が必要なくなるのです」

サージェリーがそう真剣な顔で言う。

「魔法神、それは違うよ。ハジメが僕の像を作った素材なら、信仰心がいっぱいになったら、2往復は出来るよ。実際僕の像は小さめだけど4つあって、2か月で1つがいっぱいになって、それで1往復力を使わなくても行き来出来てるからね。それでハジメっちが作るとして、彼に何をお礼にするかは神界常世とこよで話し合うかな。

ハジメ的には常世とこよの教会にはスクラド様1体しか居ないのでそれが4つになったらそれなりに見栄えするだろうから作ろうかなと思っていたのだが、スクナヒコが交渉してくれるなら任せることにする。

3柱の神々はお礼を述べてその姿を消した。魔法神と戦闘神は戦争後のバランスを執りに向かい。商神も契約の認可に向かったのだ。残ったのはハジメとスクナヒコ、ひかりあいの4人になった。
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