上 下
31 / 173
第2章 ポーショントラブル

27.心配されるみたいです

しおりを挟む
平和な時間が1週間経ち、破裂草も十分に育った。アベルから鉄丸も出来たと連絡もあり、破裂丸を作ってみることにした。いつまでも小石では心もとないと思ったからだった。ハジメは鑑定で確認しながら破裂草を潰し始めて10分程で火薬のようになってきた。鑑定によると乾燥させて初めて破裂するらしいからまだ爆発などが起こる可能性は低い。

ハジメは中心部に鉄丸を5つ入れ団子を作っていく。10分程で1個完成させることができた。2時間少々の時間で20個の破裂丸を作り上げていた。ハジメはアベルに500個の鉄丸を追加依頼すると「簡単だから今日中に出来るぞ」と言われた。ハジメは出来たら店に連絡してもらうように伝えると、

「弟子が納品しに行くからな。お前は店も開店させているんだから、店番2人なんだろ。近所だし気にするな。あ、もし鉄とか見つけたら持ってこいよ。お礼として受け取るからな」

とがははと笑っていた。「湿地帯に向かう予定だから鉄は取れないと思うんですが」と言うと「冗談だから真に受けるな」と言われた。ありがたいことだ。

ハジメは破裂丸の効果を確かめるために街の外に向かった。
イブの街は西に行くと森と池が、東に行くと海岸が広がっており海岸にそって北に進むと火山があり、温泉が湧いている。南に下がると沼地が広がっていた。ハジメは温泉にひかれつつも近い湿地帯を目指してみることにした。

 東に向かい2時間ほど歩くと海岸線が近くなるからか潮の香りがう。この湿地帯を抜ければ海岸線に出るのだ。肌にまとわりつくような懐かしい感じがハジメを包む。ハジメの出身は山と海に囲まれたところであった。そう離島だったのである。

湿地帯までの中間位置まで来ると眼前に小麦の海が広がっていた。ハジメが歩いていた道は3方向へ伸びている。そこをまっすぐ行けば湿地帯へと続いている。因みに北へ向かうと火山帯や南へ向かうと沼地へと続く。街からここまでくて南北へ進むと遠回りになる。小麦の穂が風に揺れている様子はちょっとした本の一節を思い出すかのような光景であった。ハジメはその道をまっすぐ進んでいくと30分ほどで小麦の海は終わり、木々が増え、足元は草に覆われ、地面はぬかるんできた。

「「「「「ちゅー」」」」」

と言う声がし、草むらが揺れるとハジメの膝辺りまであるネズミが5匹出てきた。ハジメは慌ててアイテムボックスから破裂丸と小石を取り出す。

ネズミはその間に距離を縮め2匹はハジメの上半身目掛けてジャンプし、残り3匹のうち2匹が左足に噛みついた。1匹は指揮を執っているかように様子を見ている。ハジメは両手でジャンプしてきた2匹を払い、左足をめちゃくちゃに動かしなんとか引き剥がすとネズミたちはすぐに集まり再度5匹でフォーメーションを取った。見た目に騙されてはいけないくらい賢い。

ハジメは再度攻撃態勢を整えているネズミたちに向かい破裂丸を投げた。その場に丁度あった石に当たったような音がしたかと思うと、バーンと爆竹をならしたような音が響いた。その瞬間2匹のネズミが後ろに飛ばされて光に包まれた。その一瞬を逃さずハジメは小石を2つ投げる。狙いは指揮を執っているネズミにした。組織的に攻撃されると厳しいと判断したのだった。小石は狙いたがわず指揮官ネズミの頭部を打ち抜き、光に包まれた。

残りのネズミは2匹になっている。戸惑っているような様子を見せているためここで畳みかけることにした。ハジメは破裂丸を2匹の間に投げたがそこにあった水たまりに落ちポスっという頼りない音しかしなかった。

「もしかして湿った場所では破裂しないってことか」

とハジメは舌打ちをした。小石を出そうするが1匹のネズミがハジメの顔目掛けて鋭い前歯で襲い掛かる。ハジメは慌てて取り出した小石をネズミの口の中に向かって投げただった。飲み込まれた瞬間、ボンという音が響きハジメの真横をすれすれで鉄丸が通り過ぎ地面の奥まで刺さっていったのが見えた。当たれば軽症では済まなかったであろう。ハジメが頭を上げると丁度ネズミは光に包まれ、消えていくところだった。最後の1匹はいつの間にかその場から立ち去っていた。

「それにしても、凶悪な武器だな・・・・」

ハジメは破裂丸をまじまじと見つめていった。
体内に入ると凶悪なまでの破壊力を生み出すのだが、ただ近距離で使用するにはリスクが大きい。今回もたまたま当たらなかっただけで、下手をすれば大怪我を追うこともあり得たのだ。
ハジメは一息くとネズミの落としたものを回収し始めた。前歯が2個と尻尾が2個を得てアイテムボックスに入れると立ち上がった。

帰ろうと思って踵を返すと正面に熊が居た。ばっちりと目があい、ハジメは倒れそうになるが熊は逃がそうとする気はないかのように、両足で立ち上がり大きな口を開け威嚇してきた。

「なんで湿地帯に熊が出るんだよっ」

とハジメは叫んでいた。しかし従業員2人を置いて死ぬわけにもいかないため、湿地帯を走り逃げつつ小石を投げていたが効果が分からない程だった。ハジメは追いかけてくる熊の真横に向かって破裂丸を投げる。バーンという音が上がると熊の足が止まった。偶然石に当たったらしい。ハジメは対峙すると熊はガーっと吠えた。その瞬間にハジメは熊の口の中へ破裂丸を投げた。ボンっと音がし熊はゆっくりと仰向けに倒れていった。ハジメは光に包まれるであろうと思い、ドロップ品を手に入れようと近づくと、熊は最後の力を振り絞ってハジメに向かい右手を下ろした。ハジメはバックステップで避けようとしたが、躱しきれず胸を爪が掠った。血がばっと飛び散り、激しい熱さがハジメを襲う。

「熱い、熱い・・・・」

ハジメが周囲を転げ回っているのを熊は見てにやりと笑ったような気がした。その瞬間光に包まれた。
ハジメは10分程転げ回り、ハジメが自分の死を認識したとき、ようやくアイテムボックスから体力ポーションを取り出せばいいことに気づいた。ポーションの半分を傷にかけるとシューッと音を立てながら痛みが引いていった。傷からの感染が怖かったハジメは残りを飲み干す。10分程経つと痛みと傷は嘘のように無くなっていた。服の傷が実際に危なかったことを現実としていた。

「この世界って本当に死が近い・・・・」

ハジメは夕方近くに街へと帰ってきていた。服が破れているため広場で服を買って家に帰った。

「ご主人様お帰りなさい・・・どうしたんですか、その服!」

とコウが出迎えてくれたが服の正面がボロボロになっているのに気づき近づいてきてハジメの上半身を露わにする。その声にリナリーにもエプロン姿で出てきて慌てて始めた。

「教会へ行きましょう。直ぐに!」

どうやらここでも例に漏れなく治療は教会の様だ。自前のポーションを使ったから傷は何もないし、痛みもないことを伝える。
丁度その時裏口を開け、鍛冶屋のアベルが入ってきた。

「・・・お前らは夕方から何をやっているだぁぁ!」

と大声で怒鳴った。ハジメが上半身裸でコウとリナリーは両手で胸に触れている状況であった。ぱっと見た感じ見間違うかもしれない。ハジメはアベルとコウ、リナリーに今日起こったことを話した。コウは

「危ないことはやめてください」

と言い、リナリーは

「ご主人様、私は今とても幸せなんです。盗賊とはいえ人を殺し、間違えて混乱して襲ってきた一般人を1人殺してしまいました。そんな私がご飯を作ったりできる。何より笑えて、それをご主人様が喜んでくれる。人殺しの私には過ぎた幸せを感じているんです。だからどうかご自愛ください。」

と言い切りハジメに抱きつき泣き始めた。ハジメはリナリーの頭を撫でて、

「ありがとう」

と幸せな気分で呟いた。それを見ていたアベルは

「お前は自分のポーションについて知らないようだから、少し話してやろう」

と言いダイニングテーブルに腰を下ろした。

ハンドブック 7項目目

7-4.破裂草を採取しよう:Clear!

7-5.破裂丸を作ってみよう:Clear!

7-6.破裂丸を使ってみよう:Clear!

7-7.ネズミを倒してみよう:Clear!

7-8.熊を倒してみよう:Clear!

7-9.体力ポーションを使ってみよう:Clear!

7-10.熊のドロップ品を回収しよう:Clear!

7-11.報酬:サイドアイテムボックス2個
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

外れジョブ「レンガ職人」を授かって追放されたので、魔の森でスローライフを送ります 〜丈夫な外壁を作ったら勝手に動物が住み着いて困ってます〜

フーツラ
ファンタジー
15歳の誕生日に行われる洗礼の儀。神の祝福と共に人はジョブを授かる。王国随一の武門として知られるクライン侯爵家の長男として生まれた俺は周囲から期待されていた。【剣聖】や【勇者】のような最上位ジョブを授かるに違いない。そう思われていた。 しかし、俺が授かったジョブは【レンガ職人】という聞いたことないもないものだった。 「この恥晒しめ! 二度とクライン家を名乗るではない!!」 父親の逆鱗に触れ、俺は侯爵領を追放される。そして失意の中向かったのは、冒険者と開拓民が集まる辺境の街とその近くにある【魔の森】だった。 俺は【レンガ作成】と【レンガ固定】のスキルを駆使してクラフト中心のスローライフを魔の森で送ることになる。

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

婚約破棄されたら魔法が解けました

かな
恋愛
「クロエ・ベネット。お前との婚約は破棄する。」 それは学園の卒業パーティーでの出来事だった。……やっぱり、ダメだったんだ。周りがザワザワと騒ぎ出す中、ただ1人『クロエ・ベネット』だけは冷静に事実を受け止めていた。乙女ゲームの世界に転生してから10年。国外追放を回避する為に、そして后妃となる為に努力し続けて来たその時間が無駄になった瞬間だった。そんな彼女に追い打ちをかけるかのように、王太子であるエドワード・ホワイトは聖女を新たな婚約者とすることを発表した。その後はトントン拍子にことが運び、冤罪をかけられ、ゲームのシナリオ通り国外追放になった。そして、魔物に襲われて死ぬ。……そんな運命を辿るはずだった。 「こんなことなら、転生なんてしたくなかった。元の世界に戻りたい……」 あろうことか、最後の願いとしてそう思った瞬間に、全身が光り出したのだ。そして気がつくと、なんと前世の姿に戻っていた!しかもそれを第二王子であるアルベルトに見られていて……。 「……まさかこんなことになるなんてね。……それでどうする?あの2人復讐でもしちゃう?今の君なら、それができるよ。」 死を覚悟した絶望から転生特典を得た主人公の大逆転溺愛ラブストーリー! ※最初の5話は毎日18時に投稿、それ以降は毎週土曜日の18時に投稿する予定です

愚かな父にサヨナラと《完結》

アーエル
ファンタジー
「フラン。お前の方が年上なのだから、妹のために我慢しなさい」 父の言葉は最後の一線を越えてしまった。 その言葉が、続く悲劇を招く結果となったけど・・・ 悲劇の本当の始まりはもっと昔から。 言えることはただひとつ 私の幸せに貴方はいりません ✈他社にも同時公開

異世界のんびりワークライフ ~生産チートを貰ったので好き勝手生きることにします~

樋川カイト
ファンタジー
友人の借金を押し付けられて馬車馬のように働いていた青年、三上彰。 無理がたたって過労死してしまった彼は、神を自称する男から自分の不幸の理由を知らされる。 そのお詫びにとチートスキルとともに異世界へと転生させられた彰は、そこで出会った人々と交流しながら日々を過ごすこととなる。 そんな彼に訪れるのは平和な未来か、はたまた更なる困難か。 色々と吹っ切れてしまった彼にとってその全てはただ人生の彩りになる、のかも知れない……。 ※この作品はカクヨム様でも掲載しています。

前世の記憶さん。こんにちは。

満月
ファンタジー
断罪中に前世の記憶を思い出し主人公が、ハチャメチャな魔法とスキルを活かして、人生を全力で楽しむ話。 周りはそんな主人公をあたたかく見守り、時には被害を被り···それでも皆主人公が大好きです。 主に前半は冒険をしたり、料理を作ったりと楽しく過ごしています。時折シリアスになりますが、基本的に笑える内容になっています。 恋愛は当分先に入れる予定です。 主人公は今までの時間を取り戻すかのように人生を楽しみます!もちろんこの話はハッピーエンドです! 小説になろう様にも掲載しています。

土属性を極めて辺境を開拓します~愛する嫁と超速スローライフ~

にゃーにゃ
ファンタジー
「土属性だから追放だ!」理不尽な理由で追放されるも「はいはい。おっけー」主人公は特にパーティーに恨みも、未練もなく、世界が危機的な状況、というわけでもなかったので、ササッと王都を去り、辺境の地にたどり着く。 「助けなきゃ!」そんな感じで、世界樹の少女を襲っていた四天王の一人を瞬殺。 少女にほれられて、即座に結婚する。「ここを開拓してスローライフでもしてみようか」 主人公は土属性パワーで一瞬で辺境を開拓。ついでに魔王を超える存在を土属性で作ったゴーレムの物量で圧殺。 主人公は、世界樹の少女が生成したタネを、育てたり、のんびりしながら辺境で平和にすごす。そんな主人公のもとに、ドワーフ、魚人、雪女、魔王四天王、魔王、といった亜人のなかでも一際キワモノの種族が次から次へと集まり、彼らがもたらす特産品によってドンドン村は発展し豊かに、にぎやかになっていく。

いきなり異世界って理不尽だ!

みーか
ファンタジー
 三田 陽菜25歳。会社に行こうと家を出たら、足元が消えて、気付けば異世界へ。   自称神様の作った機械のシステムエラーで地球には帰れない。地球の物は何でも魔力と交換できるようにしてもらい、異世界で居心地良く暮らしていきます!

処理中です...