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第四話 信じるより信じたい
深夜の待ち合わせ
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◇ ◇ ◇
日付を跨いだ真夜中。
俺は気だるい体を起こしてケイロのベッドを抜け出す。
まったく起きる気配のないケイロを見下ろして、安堵しながらも複雑な気分になる。
昼間は学校生活を送りながら、マイラットと百彩の輝石の捜索。
夕方以降は自分の世界に戻って用事をこなす日々をコイツは送っている。
なかなかハードな生活だ。その上、俺を定期的に――ってか、最近は三日も空けない――抱き潰しているんだから、見た目によらず本当にタフだと思う。でもコイツだって生身の人間だ。疲れ果てれば深く眠ってしまう。分かっていて、俺は狙ってケイロの負担を大きくした。
……本当に悪いな、ケイロ。
あとで延々と説教コースでもお仕置きコースでも受け入れるから、ちょっと行ってくるな。
枕に沈んでも崩れない端正な横顔に小さくキスしてから、脱ぎ散らかった俺のパジャマを回収し、自分の部屋へと戻った。
もしかしたら寝たフリをして、ケイロは俺の動向をうかがっているかもしれない。
慎重に事を運ぼうと思い、俺はすぐに実行せず、一旦自分のベッドへ潜り込んで目を閉じる。
時間が経ってから再び起き上がり、俺は足音を忍ばせながら着替えを持って部屋を出る。
階段を下りてトイレに入ったら素早く着替えて、足早に家を出ていく。
自宅と百谷家、ふたつの家からそこそこ距離が離れた所から、俺は徐々に加速して深夜の町中を走り出した。
約束した場所は、学校の近くにある神社。
敷地を木々に囲まれたこの場所なら、誰かに目撃されにくいと思って指定した。
深夜二時の待ち合わせ――もし行けなかったらゴメンと先に謝っておいたが、言い出しておいて約束を破るハメにならなくて本当に良かったと俺は胸を撫で下ろす。
神社の入り口前で一旦立ち止まって呼吸を整えると、古しくてか弱い明かりの電灯が二、三個だけぼんやり照らす神社の中へ向かう。
勾配がキツい階段を、滑らないよう手すりに掴まって上っていくと、
「あっ、太智! 良かった、無事に抜け出せて」
鳥居の横に立っていた悠が、俺を見つけて安堵の表情を浮かべる。
「悠も来てたのか」
「僕が居たほうが、太智も安心するんじゃないかって、あの人が……」
チラリと悠が薄暗い社を見やる。俺もつられて目を向ければ、俺たちよりもひとつ頭ほど背が高い大人の男らしき人影が見えた。
あれがケイロたちが探しているマイラットと同化した人。
緊張しながら悠と一緒に近づいていけば、多彩な光球が一帯に現れて俺たちを照らし出す。
目の前に立っていたその人の顔を見て、俺は目を丸くした。
「司書の、舞野先生……貴方がマイラット……」
どこか申し訳なさそうに舞野先生は小さく頷くと、ぼやっとしていた冴えない顔を引き締める。それだけで顔つきが別人のように凛々しくなった。
日付を跨いだ真夜中。
俺は気だるい体を起こしてケイロのベッドを抜け出す。
まったく起きる気配のないケイロを見下ろして、安堵しながらも複雑な気分になる。
昼間は学校生活を送りながら、マイラットと百彩の輝石の捜索。
夕方以降は自分の世界に戻って用事をこなす日々をコイツは送っている。
なかなかハードな生活だ。その上、俺を定期的に――ってか、最近は三日も空けない――抱き潰しているんだから、見た目によらず本当にタフだと思う。でもコイツだって生身の人間だ。疲れ果てれば深く眠ってしまう。分かっていて、俺は狙ってケイロの負担を大きくした。
……本当に悪いな、ケイロ。
あとで延々と説教コースでもお仕置きコースでも受け入れるから、ちょっと行ってくるな。
枕に沈んでも崩れない端正な横顔に小さくキスしてから、脱ぎ散らかった俺のパジャマを回収し、自分の部屋へと戻った。
もしかしたら寝たフリをして、ケイロは俺の動向をうかがっているかもしれない。
慎重に事を運ぼうと思い、俺はすぐに実行せず、一旦自分のベッドへ潜り込んで目を閉じる。
時間が経ってから再び起き上がり、俺は足音を忍ばせながら着替えを持って部屋を出る。
階段を下りてトイレに入ったら素早く着替えて、足早に家を出ていく。
自宅と百谷家、ふたつの家からそこそこ距離が離れた所から、俺は徐々に加速して深夜の町中を走り出した。
約束した場所は、学校の近くにある神社。
敷地を木々に囲まれたこの場所なら、誰かに目撃されにくいと思って指定した。
深夜二時の待ち合わせ――もし行けなかったらゴメンと先に謝っておいたが、言い出しておいて約束を破るハメにならなくて本当に良かったと俺は胸を撫で下ろす。
神社の入り口前で一旦立ち止まって呼吸を整えると、古しくてか弱い明かりの電灯が二、三個だけぼんやり照らす神社の中へ向かう。
勾配がキツい階段を、滑らないよう手すりに掴まって上っていくと、
「あっ、太智! 良かった、無事に抜け出せて」
鳥居の横に立っていた悠が、俺を見つけて安堵の表情を浮かべる。
「悠も来てたのか」
「僕が居たほうが、太智も安心するんじゃないかって、あの人が……」
チラリと悠が薄暗い社を見やる。俺もつられて目を向ければ、俺たちよりもひとつ頭ほど背が高い大人の男らしき人影が見えた。
あれがケイロたちが探しているマイラットと同化した人。
緊張しながら悠と一緒に近づいていけば、多彩な光球が一帯に現れて俺たちを照らし出す。
目の前に立っていたその人の顔を見て、俺は目を丸くした。
「司書の、舞野先生……貴方がマイラット……」
どこか申し訳なさそうに舞野先生は小さく頷くと、ぼやっとしていた冴えない顔を引き締める。それだけで顔つきが別人のように凛々しくなった。
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