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第三話 特訓!バスケは格闘技に含まれないが、例外あり

いざ、球技大会!

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   ◇ ◇ ◇

 こうして無事に迎えた球技大会は、一回戦から盛り上がりを見せた。

 ただの校内イベントと誰もが考えていたが、ケイロだけは違った。

「いいか、俺にボールを回してくれたなら必ず得点する。このチームの負けは許さないからな」

 バスケのチームは五人。控え三人。ケイロの事情や正体を知らないクラスメートは、あからさまに動揺を見せた。
 そりゃあ今まで人を寄せ付けないクールで謎が多い転校生だと思ってたのに、そんなことを言い出すとは想像しなかっただろう。戸惑うみんなに「百谷、実はバスケ上手いんだよ」と俺がフォローして、どうにかチームを機能させることができた。

 開始直前、俺がセンターより右側の元場へつこうとする際、ケイロがポツリと呟く声を聞いた。

「開始はアレしかないな……」

 この一言で何をしでかすか分かってしまう自分に頭痛を覚えつつ、俺は軽く腰を落として準備する。

 ピピィ――ッ!
 笛が鳴ると同時に審判がボールを投げ、ケイロと相手チームの選手がジャンプする。

 ケイロの高身長に長い手足が真っすぐに伸ばされ、鮮やかにボールをものにする。そして顔を向けず、素早く俺へパスした。

 ドリブルして敵陣へ切り込めば、一斉に敵チームが集まってくる。うん、全員か。ダンゴ虫になる前にさっさとパスするに限る。
 さっ、と辺りを見れば、群がり出した敵チームの後ろへケイロが回り込もうとしている姿に気づく。

 右へ重心を傾け、軽くフェイントをかけてから、俺はケイロへパスを出す。
 ――バシッ。受け取った瞬間、ケイロの口端が引き上がった。

 そのままドリブルでゴール下へ向かい、ジャンプのモーションに入る。咄嗟に反応した敵チームのひとりが大きく両腕を上げ、ケイロのゴールを阻もうとする。

 ……ああ、それじゃあ止められない。だって――。

 ガシィィッ! ゴールリングが派手に鳴る。そして、ダァンッ、ダム、ダム……とボールの弾んで転がる音が聞こえるほど周囲が静まり返り――体育館中にどよめきと歓声が上がった。

 試合開始一分未満でいきなりダンクシュート決めたら、そりゃあ盛り上がるわ。しかも寡黙でミステリアスな転校生で通っているイケメン。騒がれて当然だよなあ。

 変人として目立ってるワケじゃないし、ケイロが嬉しそうにしているから良かった。敵チームには、ケイロの王子なプライドに巻き込まれて悪いな、と思うけれど。

 こんな調子で始まった一回戦は俺たちの圧勝だった。
 ケイロにボールを渡せば必ず点を取ってくれるし、ケイロを妨害しようとすれば、他のチームメイトや俺が余裕でゴールできたし、面白いほどに点数が取れた。

 この初戦の活躍ぶりでチームメイトはケイロを一気に信頼して、それ以降の試合は徹底してケイロの指示に従ってくれた。ひとり強いヤツがいるだけでも、球技大会レベルなら勝ち上がりやすい。そこへチームのまとまりも生まれれば、怖いもの知らずのチームへと進化できた。
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