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第三話 特訓!バスケは格闘技に含まれないが、例外あり

上達し過ぎたケイロ

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   ◇ ◇ ◇

 ケイロにバスケ漫画を見せたのは、ある意味正解だった。

 バスケがどんな球技で、どんなことをすればいいのか、大体理解してくれた。高校三年の全教科書を暗記して、テストで良い成績を出せるほどだ。憎らしいほど頭が良い。

 昼休みや放課後に一対一でバスケをしたら、そりゃあもう華麗なドリブルで俺をあっさりとかわし、ド派手にダンクシュートをかましてくれた。

 スゲーよ、漫画読んだだけで……球技大会レベルじゃないからな、それ。
 これで本番も大丈夫と俺は太鼓判を押したんだが、ケイロは納得しなかった。

「もう少し付き合え。やっと楽しくなってきたところだ……太智、あの鼻息荒くフンフン言いながら全方位防御する技をやれ。俺が抜いてやる」

「漫画のアレか! 現実じゃできないヤツだから。無理だからっ!」

「なんだと?! 左手は添えればいいと呟けば、ゴールできるというまじないは有効的なのに、物理の防御は非現実的とは……」

「あれは魔法の呪文じゃねぇよ! ゴール狙う時のコツを忘れないように呟いてるんだよ!」

 大体のルールも技術も身に着けたけれど、漫画の内容が全部本当にできることと捉えてしまった点だけは失敗だったな、と思う。俺のツッコミが追い付かない。 

 そんな漫才染みたやり取りを繰り広げていたせいで、いつの間にかクラスメートからケイロの相棒認定されるようになってしまった。同じ野球部にいるヤツからは「よっ、百谷の女房役」なんて言われたりもした。

 ……本当に女房やってるなんて知ったら、どんな目で見られるんだろうなあ。

 心の中で遠い目をしながら、俺は好き勝手言うヤツらの話を半笑いで聞くことしかできなかった。



 球技大会を前日に控えた日の放課後。
 俺とケイロはバスケの最後の仕上げをするため、部活で使うヤツらが本格的に使う前に体育館を利用しようと向かった。

 その途中、図書室の前を通りかかった際、そこから出てきた悠と鉢合わせした。

「あ、太智、百谷君。今から練習しに行くの?」

「そうだ。明日が本番だからな。優勝できるよう特訓してくる」

 親指を立てながら俺が答えると、悠は小さく笑う。

「実は百谷君、バスケ部より上手いらしいね! 噂で聞いちゃったよ。優勝、楽しみにしてるから」

 言いながら悠は俺たちに手を振り、ここから去っていく。

 悠の背を見送ってから歩き始めようとした時、ケイロが図書館を凝視するばかりで歩き出そうとはしなかった。

「どうした百谷?」

「……ここが気になる。少し立ち寄らせてくれ」

 そう言うなりケイロは足先を図書室へ向け、中へ入ってしまう。
 こうなったケイロを止めることはできない。時間が気になるところだったが、仕方ないと割り切って俺もケイロの後に続いた。
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