上 下
16 / 66
第二話 変人の烙印は絶対阻止!

全方位に迷惑かけやがって

しおりを挟む
   ◇ ◇ ◇

「――なるほど、そういう経緯でしたか」

 夕方、百谷家のリビングで俺の話を聞いた百谷芦太郎先生――ケイロの兄ではなく部下のアシュナムさんが、深いため息を吐き出す。そしてソファーの端へ座る俺から大きく離れた隣に座るケイロを、険しい顔で睨みつけた。

「殿下……いくらなんでもあんまりです……太智君の人生が滅茶苦茶じゃないですか!」

 やっぱり酷い内容なんだなあ……お付きの人が良心的で、ちょっと心が救われる。

 半分死んだ目になりながら事の成り行きを見守っていると、ケイロは脚と腕を組みながら不敵に笑う。

「ちょうど良かったではないか。前々からこっちの世界の人間で協力者を作りたいと考えていたところだし、お前たちは俺にそろそろ結婚しろと迫っていたし……問題が一気に解決したな」

「もっと慎重に事を運んで下さい! あと、どちらも誰でも良い訳じゃありません! 特に妃選びは本国に候補の者が多数控えているというのに……」

「勘違いとはいえ、太智は既に俺たちの異質さに気づいて観察していたんだ。家も隣。協力者として巻き込むには悪くないと思うが? あと俺に反発する気概のない奴らを娶る気は一切ないぞ。つまらん」

「協力者の件はまだ分かるとして、結婚をつまらないかどうかで判断しないで下さい! 殿下のお立場を考えれば、異世界の同性を選ぶなどあってはならぬこと。陛下や重臣たちも一報を聞き、憤っております」

「勝手に怒らせていろ。もう色々と済ませてしまったからなあ、太智?」

 ケイロが流し目を俺に送ってきて、思わず体がぞくりとする。
 人のこと無視して、あれこれ好き勝手しやがって……横で話聞いてたら、俺だけじゃなくて全方位に迷惑かけまくってるじゃねーか。

 思わず睨みつけて溜まった鬱憤をケイロにぶつける。

「俺は認めてないからな?! お前以外、誰も納得してねぇし……こんな傍若無人のワガママ人間が王子だなんて、お前の国のみなさんに本気で同情するわ。このアホ王子が……っ」

「その阿呆に散々啼かされて悦んでいたのは誰だろうな?」

 おもむろに俺へ体を向けて、ケイロが身を乗り出してくる。少し距離が近づいただけで俺の体がビクッと跳ねて腰の奥が疼き出す。

「ち、近づくなぁ……っ! ぅぅ……こんなおかしな体にしやがって……責任取って元に戻せよぉぉ……」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

そこにワナがあればハマるのが礼儀でしょ!~ビッチ勇者とガチムチ戦士のエロ冒険譚~

天岸 あおい
BL
ビッチ勇者がワザと魔物に捕まってエッチされたがるので、頑張って戦士が庇って大変な目にあうエロコメディ。 ※ビッチ勇者×ガチムチ戦士。同じ村に住んでいた幼馴染コンビ。 ※魔物×戦士の描写も多め。戦士がエロい災難に遭いまくるお話。 ※エッチな描写ありの話は話タイトルの前に印が入ります。勇者×戦士『○』。魔物×戦士『▼』。また勇者視点の時は『※』が入ります。

身体検査

RIKUTO
BL
次世代優生保護法。この世界の日本は、最適な遺伝子を残し、日本民族の優秀さを維持するとの目的で、 選ばれた青少年たちの体を徹底的に検査する。厳正な検査だというが、異常なほどに性器と排泄器の検査をするのである。それに選ばれたとある少年の全記録。

【完結】A市男性誘拐監禁事件

若目
BL
1月某日19時頃、18歳の男性が行方不明になった。 男性は自宅から1.5㎞離れた場所に住む40歳の会社員の男に誘拐、監禁されていたのだ。 しかし、おかしな点が多々あった。 男性は逃げる機会はあったのに、まるで逃げなかったばかりか、犯人と買い物に行ったり犯人の食事を作るなどして徹底的に尽くし、逮捕時には減刑を求めた。 男性は犯人と共に過ごすうち、犯人に同情、共感するようになっていたのだ。 しかし、それは男性に限ったことでなかった… 誘拐犯×被害者のラブストーリーです。 性描写、性的な描写には※つけてます 作品内の描写には犯罪行為を推奨、賛美する意図はございません。

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

永遠の快楽

桜小路勇人/舘石奈々
BL
万引きをしたのが見つかってしまい脅された「僕」がされた事は・・・・・ ※タイトル変更しました※ 全11話毎日22時に続話更新予定です

孤独な戦い(6)

Phlogiston
BL
おしっこを我慢する遊びに耽る少年のお話。

一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!

当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。 しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。 彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。 このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。 しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。 好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。 ※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*) ※他のサイトにも重複投稿しています。

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です! 小説家になろうでも10位獲得しました! そして、カクヨムでもランクイン中です! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。 いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。 欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●● 小説家になろうで執筆中の作品です。 アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。 現在見直し作業中です。 変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

処理中です...