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十一話 大きな前進
心地よい同調
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次の瞬間、俺の身体から重みが消える。
確かに立っているはずなのに、空に浮かんでいるような無の感覚。
ゆっくりと目を開けてみれば、俺は青白い微光をまとっていた。
「これは……」
向かい側の英正に目を向けると、俺と同じように光を帯びている。髪の毛は逆立ち、周りで火花が散り、強さに溢れた姿。
英正の雷獣化だ。しかしこの状態になると理性が消え失せ、狂戦士化すると聞いているが、今の英正から目の光は消えていない。自我を保ったままだ。
もしかして英正との合わせ技は、二人とも雷獣化する効果があるのだろうか?
試しに動いてみようと俺が棒を構えると、同じように英正も構える。
わずかに英正が戸惑いの気配を見せた。
「ま、誠人様、身体が勝手に動いてしまいます」
「なんだって? まさか……」
俺はその場で棒を振り回し、攻撃の型を繰り出してみる。
すると英正も同じ動きをする。俺とまったく同じタイミングと速さで――まるで合わせ鏡だ。
「俺と同調して動くようだな。英正の意思で身体を動かすことはできるのか?」
動きを邪魔しないよう俺が待機すると、英正は棒を振ったり跳んだりして自在に動く。どうやら俺が動かなければ自分の意思で動けるらしい。
この技は一定時間の間、二人で雷獣化の力を宿しながら俺の動きに合わせて猛攻を仕掛けられる技のようだ。つまり――。
「英正、俺の隣に並んでくれるか?」
「はい、ただちに!」
俺の指示に英正が素早く動き、肩がぶつからない程度の隣に並ぶ。
横目でその様を確かめると、俺は棒を構えて駆け出した。
敵に囲まれた状況をイメージしながら、襲い来る者たちを蹴散らし、前進する動きを取る。
英正はきれいに俺と同じ動きを取り、棒の風切り音がひとつに重なる。
寸分違わない動き――美しくて、まったくズレない感覚が心地良い。
間違いなく隣にいると分かっているのに、俺と英正が完全に溶け合い、ひとつの個として動いているような気分になる。
まるで英正と踊っているかのような感覚だ。楽しい。どこまでも胸が弾んで、動き続けたくてたまらない。
ふと隣を見やれば英正も俺を見る。意思を持って動けば、俺と動きを同調している最中でも、目などの細かな部分は違う動きができるらしい。
視線が合い、互いに笑い合う。
元々分かりやすい英正の心が、すべて伝わってくる気がする。恐らく英正も俺の心を見てしまっているのだろう。
英正なら知られてもいい。
俺だけのために生きて、すべてを捧げているこの男なら――。
少しずつ身体に重みが戻っていく感覚で、技が途切れる気配を察する。
最後に確かめておきたいことがあり、俺は英正とともに高く跳躍する。棒を高く構えて先端に力を集めていけば、どちらの棒にも炎の渦が生まれた。
大きく振り下ろした瞬間、俺たちは同時に叫んでいた。
「「雷獣炎舞撃!!」」
一帯に大きな炎の渦が現れ、激しい熱風が吹き荒れる。
隅で様子をうかがっていた兵たちにも届いているらしく、腕で顔を覆い、中には驚いて腰を抜かしている者もいた。
確かに立っているはずなのに、空に浮かんでいるような無の感覚。
ゆっくりと目を開けてみれば、俺は青白い微光をまとっていた。
「これは……」
向かい側の英正に目を向けると、俺と同じように光を帯びている。髪の毛は逆立ち、周りで火花が散り、強さに溢れた姿。
英正の雷獣化だ。しかしこの状態になると理性が消え失せ、狂戦士化すると聞いているが、今の英正から目の光は消えていない。自我を保ったままだ。
もしかして英正との合わせ技は、二人とも雷獣化する効果があるのだろうか?
試しに動いてみようと俺が棒を構えると、同じように英正も構える。
わずかに英正が戸惑いの気配を見せた。
「ま、誠人様、身体が勝手に動いてしまいます」
「なんだって? まさか……」
俺はその場で棒を振り回し、攻撃の型を繰り出してみる。
すると英正も同じ動きをする。俺とまったく同じタイミングと速さで――まるで合わせ鏡だ。
「俺と同調して動くようだな。英正の意思で身体を動かすことはできるのか?」
動きを邪魔しないよう俺が待機すると、英正は棒を振ったり跳んだりして自在に動く。どうやら俺が動かなければ自分の意思で動けるらしい。
この技は一定時間の間、二人で雷獣化の力を宿しながら俺の動きに合わせて猛攻を仕掛けられる技のようだ。つまり――。
「英正、俺の隣に並んでくれるか?」
「はい、ただちに!」
俺の指示に英正が素早く動き、肩がぶつからない程度の隣に並ぶ。
横目でその様を確かめると、俺は棒を構えて駆け出した。
敵に囲まれた状況をイメージしながら、襲い来る者たちを蹴散らし、前進する動きを取る。
英正はきれいに俺と同じ動きを取り、棒の風切り音がひとつに重なる。
寸分違わない動き――美しくて、まったくズレない感覚が心地良い。
間違いなく隣にいると分かっているのに、俺と英正が完全に溶け合い、ひとつの個として動いているような気分になる。
まるで英正と踊っているかのような感覚だ。楽しい。どこまでも胸が弾んで、動き続けたくてたまらない。
ふと隣を見やれば英正も俺を見る。意思を持って動けば、俺と動きを同調している最中でも、目などの細かな部分は違う動きができるらしい。
視線が合い、互いに笑い合う。
元々分かりやすい英正の心が、すべて伝わってくる気がする。恐らく英正も俺の心を見てしまっているのだろう。
英正なら知られてもいい。
俺だけのために生きて、すべてを捧げているこの男なら――。
少しずつ身体に重みが戻っていく感覚で、技が途切れる気配を察する。
最後に確かめておきたいことがあり、俺は英正とともに高く跳躍する。棒を高く構えて先端に力を集めていけば、どちらの棒にも炎の渦が生まれた。
大きく振り下ろした瞬間、俺たちは同時に叫んでいた。
「「雷獣炎舞撃!!」」
一帯に大きな炎の渦が現れ、激しい熱風が吹き荒れる。
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