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十一話 大きな前進
決断
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志馬威。それが柳生田さんのゲーム上の姿。
現実の姿を思い出し、俺の胸がざわつく。
そして潤宇は華侯焔の弟で、ゲームの真実を知り、憂いている数少ない領主。頼もしい同志だ。
東郷さんからは、潤宇に会ったら真実を教えて欲しいと頼んでくれと言われている。協力してこの『至高英雄』の世界を作っている者を捕らえろ、とも。
今のタイミングで潤宇に会う口実ができるというのは、俺にとって非常にありたい。
しかし実行しようと口にするのは勇気が要る。
動き出せば、もう途中で止まることはできない。目的を果たすまで突き進むか、俺が志半ばで討たれてしまうか。
覚悟しなければ。
もう一位に挑む日は近いのだということを。
押し黙る俺の隣に、才明がそっと並び立って囁く。
「誠人様、いかがなされますか? 私は貴方の望みに応えるだけ……覚悟はできています」
才明も、この選択が何を意味するのかを理解している。俺の陣営で、軍師が現実とゲームの状況を把握しているというのは、心から頼もしく思う。
本当に信用できる人物なのか、確信を持てないところもある。だが、分かった上で信用したい。
俺は才明に顔を向けると、大きく頷いた。
「羽勳たちの要望を呑もう。尊朔の攻略は彼らに任せて、俺たちは先を見越して準備を進める」
「……その言葉、お待ちしておりました」
才明が柔らかに微笑む。言葉に嘘偽りがないことが滲み、才明の覚悟が伝わってくる。
俺たちがこれからの道を決めた直後、白鐸が身体を揺らしながら声を弾ませた。
「本格的に覇者への道に挑まれるのですねー! いやー、怖いですけどワクワクしますねー」
「これから白鐸にも頑張ってもらうとになるから、頼りにしている」
「んふふー、華侯焔なんかより役に立ってみせるんですからー! あの常時色欲魔人なんかに負けませんよー!」
奮起した白鐸がその場を飛び跳ねていると、バンッ、と扉が開かれた。
現れたのは、顔を引きつらせた華侯焔と、身体と表情を強張らせた英正だった。
「こら、デカ毛玉! 俺がいない所で好き勝手言うな! 俺はただ自分の欲に正直なだけだからな!」
大股歩きで華侯焔は白鐸に詰め寄って文句をぶつける。他の者なら萎縮するような怖さがあるが、白鐸はまったくめげずに反論する。
「本当のことを言って何が悪いんですかー? ぱわーあっぷしたワタシに負けると思って、焦ってるんですかー?」
「俺がお前に負ける訳がないだろ。どれだけ強くなっても、所詮は毛玉。文武と技を極め、誠人様の寵愛を受けている俺には敵うまい!」
「誠人サマはみんな平等に寵愛してますよー。そこで勝負しようとするなんて、底が見えてますよー」
「なんだとデカ毛玉!」
「やりますか、華侯焔! これでも神獣、受けて立ちますよー!」
いつもの言い合い――もうこれは彼らの挨拶であり、仲のいい証だと考えることにした――を尻目に、俺は才明に尋ねる。
「才明が二人を呼んだのか?」
「はい。これからのこと伝えたかったので」
現実の姿を思い出し、俺の胸がざわつく。
そして潤宇は華侯焔の弟で、ゲームの真実を知り、憂いている数少ない領主。頼もしい同志だ。
東郷さんからは、潤宇に会ったら真実を教えて欲しいと頼んでくれと言われている。協力してこの『至高英雄』の世界を作っている者を捕らえろ、とも。
今のタイミングで潤宇に会う口実ができるというのは、俺にとって非常にありたい。
しかし実行しようと口にするのは勇気が要る。
動き出せば、もう途中で止まることはできない。目的を果たすまで突き進むか、俺が志半ばで討たれてしまうか。
覚悟しなければ。
もう一位に挑む日は近いのだということを。
押し黙る俺の隣に、才明がそっと並び立って囁く。
「誠人様、いかがなされますか? 私は貴方の望みに応えるだけ……覚悟はできています」
才明も、この選択が何を意味するのかを理解している。俺の陣営で、軍師が現実とゲームの状況を把握しているというのは、心から頼もしく思う。
本当に信用できる人物なのか、確信を持てないところもある。だが、分かった上で信用したい。
俺は才明に顔を向けると、大きく頷いた。
「羽勳たちの要望を呑もう。尊朔の攻略は彼らに任せて、俺たちは先を見越して準備を進める」
「……その言葉、お待ちしておりました」
才明が柔らかに微笑む。言葉に嘘偽りがないことが滲み、才明の覚悟が伝わってくる。
俺たちがこれからの道を決めた直後、白鐸が身体を揺らしながら声を弾ませた。
「本格的に覇者への道に挑まれるのですねー! いやー、怖いですけどワクワクしますねー」
「これから白鐸にも頑張ってもらうとになるから、頼りにしている」
「んふふー、華侯焔なんかより役に立ってみせるんですからー! あの常時色欲魔人なんかに負けませんよー!」
奮起した白鐸がその場を飛び跳ねていると、バンッ、と扉が開かれた。
現れたのは、顔を引きつらせた華侯焔と、身体と表情を強張らせた英正だった。
「こら、デカ毛玉! 俺がいない所で好き勝手言うな! 俺はただ自分の欲に正直なだけだからな!」
大股歩きで華侯焔は白鐸に詰め寄って文句をぶつける。他の者なら萎縮するような怖さがあるが、白鐸はまったくめげずに反論する。
「本当のことを言って何が悪いんですかー? ぱわーあっぷしたワタシに負けると思って、焦ってるんですかー?」
「俺がお前に負ける訳がないだろ。どれだけ強くなっても、所詮は毛玉。文武と技を極め、誠人様の寵愛を受けている俺には敵うまい!」
「誠人サマはみんな平等に寵愛してますよー。そこで勝負しようとするなんて、底が見えてますよー」
「なんだとデカ毛玉!」
「やりますか、華侯焔! これでも神獣、受けて立ちますよー!」
いつもの言い合い――もうこれは彼らの挨拶であり、仲のいい証だと考えることにした――を尻目に、俺は才明に尋ねる。
「才明が二人を呼んだのか?」
「はい。これからのこと伝えたかったので」
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