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九話 新たな繋がり
澗宇との対面3
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才明の話が終わらぬ内に侍女たちは俺の椅子を用意したり、空いた皿を片付けたりと手際よく動いてくれる。
華候焔はもう一度ため息をついてから、侶普に目配せして「出るぞ」と声をかける。武人らしい強面を変えず、侶普は短く頷いて立ち上がり、澗宇に深々と頭を下げてから部屋を出ていく。
そして俺と澗宇以外の人間が部屋を出て行く中、華候焔が突然キョロキョロを辺りを見渡し、部屋の隅へと向かって白い何か――布切れのフリをしていた白澤を掴んで肩にかけていた。
「コラ長毛玉、野暮なことするな」
「あっ、ひどいじゃないですかー! いざという時に助けられるよう、隠れてたのにー!」
「対等じゃないだろうが。澗宇が完全に無防備になって腹割って話そうとしてるっていうのに、盗み聞きするなんざやめろ」
「そんなつもりはないですー! ってか離して下さいー! アナタに担がれるぐらいなら自分で動きますー」
「話が終わるまで、俺がしっかりと抑えておいてやる。ありがたく思え」
相変わらずのやり取りをしながら去っていく華候焔と白澤を見送っていると、プッ、と澗宇から吹き出す声がした。
「お二人はいつもあのような感じなのですか?」
「あ、ああ。わざわざ足を運んでくれたというのに、見苦しいところを見せて申し訳ない」
「それだけ彼らが活き活きとしているということの証ですから……華候焔が自由に過ごせているようで嬉しいです」
どこか嬉しげながらも澗宇から切なさが漏れる。
パタン、と扉が閉まったことを確かめてから俺は澗宇に顔を向け、隣の椅子へ腰かけた。
「こうして話し合いができる領主と会えて、嬉しく思う。やはり領主である以上、君の姿も現実と同じなのか?」
俺の問いに澗宇が小さく首を横に振る。
「僕は少し事情が特殊で、現実とは容姿が異なっています。一応、年齢や基本的なものは同じなのですが……」
「それはいったい?」
「詳しいことは僕の口から言えません。でも、あっちで『至高英雄』のことを調べていけば、遠くない内に分かると思います」
あっち、というのは現実のことだろう。
ゲームのことを調べていけば彼に繋がるということは、澗宇はゲームを作った所と繋がりがあるのかもしれない。
最弱なのにゲーム内第三位の規模を持つ領主。
ただ者ではないことは間違いないだろうと思っていると、澗宇は俺の目を真っ直ぐに見つめながら告げてきた。
「誠人さんがこの世界へ来た時から、その活躍に注目していました。そして本気でこのゲームを終わらせようとしていることにも気づいています」
――ガッ。唐突に澗宇は俺の右手を両手で掴み、ギュッと握り込んだ。
「僕はずっと、このゲームを終わらせてくれる人を待っていました……誠人さんがこの世界の頂点に立ち、負けたプレイヤーを解放してくれる日を迎えるためなら、僕はどんな協力も惜しみません」
華候焔はもう一度ため息をついてから、侶普に目配せして「出るぞ」と声をかける。武人らしい強面を変えず、侶普は短く頷いて立ち上がり、澗宇に深々と頭を下げてから部屋を出ていく。
そして俺と澗宇以外の人間が部屋を出て行く中、華候焔が突然キョロキョロを辺りを見渡し、部屋の隅へと向かって白い何か――布切れのフリをしていた白澤を掴んで肩にかけていた。
「コラ長毛玉、野暮なことするな」
「あっ、ひどいじゃないですかー! いざという時に助けられるよう、隠れてたのにー!」
「対等じゃないだろうが。澗宇が完全に無防備になって腹割って話そうとしてるっていうのに、盗み聞きするなんざやめろ」
「そんなつもりはないですー! ってか離して下さいー! アナタに担がれるぐらいなら自分で動きますー」
「話が終わるまで、俺がしっかりと抑えておいてやる。ありがたく思え」
相変わらずのやり取りをしながら去っていく華候焔と白澤を見送っていると、プッ、と澗宇から吹き出す声がした。
「お二人はいつもあのような感じなのですか?」
「あ、ああ。わざわざ足を運んでくれたというのに、見苦しいところを見せて申し訳ない」
「それだけ彼らが活き活きとしているということの証ですから……華候焔が自由に過ごせているようで嬉しいです」
どこか嬉しげながらも澗宇から切なさが漏れる。
パタン、と扉が閉まったことを確かめてから俺は澗宇に顔を向け、隣の椅子へ腰かけた。
「こうして話し合いができる領主と会えて、嬉しく思う。やはり領主である以上、君の姿も現実と同じなのか?」
俺の問いに澗宇が小さく首を横に振る。
「僕は少し事情が特殊で、現実とは容姿が異なっています。一応、年齢や基本的なものは同じなのですが……」
「それはいったい?」
「詳しいことは僕の口から言えません。でも、あっちで『至高英雄』のことを調べていけば、遠くない内に分かると思います」
あっち、というのは現実のことだろう。
ゲームのことを調べていけば彼に繋がるということは、澗宇はゲームを作った所と繋がりがあるのかもしれない。
最弱なのにゲーム内第三位の規模を持つ領主。
ただ者ではないことは間違いないだろうと思っていると、澗宇は俺の目を真っ直ぐに見つめながら告げてきた。
「誠人さんがこの世界へ来た時から、その活躍に注目していました。そして本気でこのゲームを終わらせようとしていることにも気づいています」
――ガッ。唐突に澗宇は俺の右手を両手で掴み、ギュッと握り込んだ。
「僕はずっと、このゲームを終わらせてくれる人を待っていました……誠人さんがこの世界の頂点に立ち、負けたプレイヤーを解放してくれる日を迎えるためなら、僕はどんな協力も惜しみません」
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