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一章 細マッチョエルフの受難~転生しても腐れ縁?ありえねぇ……~
オレのせいで弟分エルフも細マッチョ
しおりを挟む森の中、オレは草むらに身を隠して弓矢を引く。
狙うは色とりどりの羽を宿した極楽鳥――焼くとめっちゃ美味い。
三匹ほどが上空を飛び回っているのを、オレは目をこらし、動きを見定めて矢を放つ。
ピュッ、と短い風切り音。
それからすぐに、グエッと首を絞められたような濁った鳴き声を漏らし、一羽が勢いよく落ちてきた。
「よっしゃ! 今日のごちそうゲットだ!」
オレが嬉しくなって飛び出ると、すぐ後ろから弾んだ声がした。
「さすがルカ兄だ! 一発で仕留めるなんて……っ」
ぐったりした極楽鳥を持ち上げてから振り向けば、目鼻立ちがくっきりした凛々しい顔の短い金髪青年が、青い目を輝かせてオレを見つめていた。
白い肌に長い手足、オレより五センチほど高い背丈。汗をかいて上着を脱いだその体は細身ながら腹筋が割れている。
そしてコイツも長く尖ったエルフ耳。名はアグード。オレの弟分だ。
赤ちゃんの頃からオレに懐いて、常に後ろへくっついて歩いて、オレのやることなすこと「すごい!」「俺も真似したい!」「ルカ兄みたいになりたい!」と褒めまくってきた男だ。
そのせいで華奢なエルフの中で、コイツもオレと同じく見事な体を仕上げてしまった。
身長が高いせいで、オレよりも体格が一回り大きい。筋肉量が多い。チクショウ、羨ましい!
正直、オレはアグードに嫉妬している。でも心の底から慕ってくれているし、なんでも認めてくれるコイツの存在は心地いい。前世は散々空雅に否定されてばっかりだったから、アグードの全力肯定は心に沁みる。
「お前も食べるだろ、アグード。里に帰ったら羽根をむしってくれよ」
笑いながらオレが名を呼べば、アグードはニコッと嬉しそうに笑って「はいっ」と応えてくれる。
長くコイツの顔を見ていると、心なしかピンと立った犬耳とブンブン尻尾が見えてくる気がする。このTHE・わんこっぷりが可愛くて、思わずオレはアグードの頭を撫でた。
「もう一匹獲ってやろうか? お前、体が大きいからこれだけじゃあ足りないだろ?」
「いや、その……ルカ兄と一緒に分け合って食べたい」
……なぜ照れる、アグード?
いつも快活なアグードがたまにモジモジとなるのが謎だ。あとオレを見てくる目がやけに熱っぽくなるのも解せない。
憧れを通り越して崇拝しちゃってそうだよな、オレのこと。
いつかルカ教なんてもんを作っちゃって、堂々と崇めないでくれよ……と思いながら、オレは母親に頼まれた薬草を摘み、里へと戻った。
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