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4 デイオフ

#4α

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「水力発電ですわ」
年季の入った門扉の前でオソレは言った。
なんでもここは地下水が豊富で、水資源を活用した発電には不自由しないとのこと。
自家発電で屋敷の電力は賄っているようだ。さらに言えば水道やシャワーなども自前で供給できるそうだ、なるほど。

「元々この山全体が国有地で現在はオソレガミ家が管理をしています」
オソレは言う。つまりここは彼女のホームグラウンドということになる。
「この土地の研究施設が災害で破棄された折に、監視の目的で宗家の屋敷を移築しました。私達の先祖はこの辺りの出身ですので……ところで」
「はい~?」
鋳鉄の優雅で重厚な柵の脇、来客用のインターホンを連打しつつオソレが毒づく。
「先ほどから一向に返事もありませんし門も開きませんわ!」
苛立ち紛れに彼女は柵を蹴った、するとタイミングよく軽い電子音と鋼の擦れる音、どうやら解錠されたらしい、そして……
「ごほっ、ごほっ、も……申し訳ございませんオソレ様~、只今お昼のお掃除の最中で手が離せません~、誠に恐縮ですがそのまま中へお進み下さいませ~。あとできれば~呼び鈴をこれ以上鳴らさないでで頂けるとありがたいのですけれど~……ぽぽ……ぽ」

声の主は若い女性のようだ。しかし門柱のスピーカーから漏れる声は間延びしている上に酷くボソボソしているので聞き取りづらい事この上ない。
仕方ないですね……、渋々、といった様子のオソレに促され、二人は敷地内へ足を踏み入れた。屋敷自体はさほど大きくはないようで、せいぜい二階建てだろうか?ただ敷地の奥に見える庭園はそれなりの広さで噴水を中心に整備されたその光景はまさしくお屋敷の庭そのもの、色とりどりの花壇には四季折々の花が咲き乱れている、それにしても凄いお庭だなぁ……。

ふふん、素敵でしょう、と誇らしく胸を張るオソレ。
まあ確かにこんな光景、平民にとっては絶景かもしれないけど……。
「それではワカさん、どうぞ此方へ」
言われるままに屋敷の玄関、優雅な彫刻の入ったドアノブにオソレは手を掛ける。
「さあ参りますよ。準備はよろしいですか?」
コクり、ワカは首肯する。いよいよだ。一体どんなお宅なのか?少し緊張しながらワカは玄関の敷居を跨いだ―……キィ……。
ゆっくりとドアが開く。果たしてそこに広がっていた光景は―……
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