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3 二つの影
#2β2
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夏の霊園。照りつける強い日差しと、肌にまとわりつくじっとりした風。
一人の少女と少年が佇んでいた。
「ノワさん、どんな顔してた?」少年が尋ねる
「うん……。眠ってるみたいだった」
「……そっか」
伏せ目がちの少女の手には線香、墓石の前に立つ。
墓碑には『能良本家之墓』と刻まれていた。
「……」
静かに目を閉じて黙祷を捧げた後、持ってきた生花を添え二人は合掌した。
***
突然ごめんなさい。皆さんに大切な人はいますか?わたしの大切な人はお姉ちゃんでした。大好きなお姉ちゃんがいました。
でも、その大好きな人はもうこの世にはいません。
お姉ちゃんがいなくなったあの日から、わたしの世界は終わりました。
そして、その終わりは今もまだ続いています。
わたしはお姉ちゃんの好きだったボトルシップを作りながら、仇を探しています。
唯一の手がかりは異形を連れた黒い人という、おぼろげな記憶だけ。
でも必ず見つけ出して殺す。
お姉ちゃんの分まで長生きする。なんてありきたりで陳腐な言葉は使いたくない。
ただわたしがしたいからそうするんだ。それだけ。
***
「駆除課の芋女の部下が助っ人とはな……」
スケットのリーダーが動揺を押し隠しながらスーツの下で毒づく。
「ご不満ですか?金ピカさん?」
にこりともせずに答えるクロエにリーダーはかぶりを振って答える。
「いやいや、感謝しているさ。こんな早く救援が来るとは思わなかったものだら。やはり地元の人は……」
そう言ってリーダーは左手首の端末に何事が入力しようと右手を伸ばしかけた瞬間。
ガツン!! クロエの拳が彼の顔面に突き刺さった。と同時にもう片方の腕、鋭いネイルがリーダーの腕輪端末をグシャリと握り潰す。
「みねばああ!?」
悲鳴を上げるリーダー。
「あっ、ゴメンなさい。お怪我の具合を確認して……」
しれっと嘘を吐くクロエ。
「えぇい……当たり所が悪いとこういうものか……」
リーダーがスーツの下で顔をしかめると、彼女はグイッと息のかかりそうな距離まで顔を近づけた。
「!?」
困惑するリーダーにクロエは言う。
「アタシの出身地はT市じゃねー、こんなクソッタレな街大嫌いだ。次にアタシをイラつかせたら身ぐるみ這いで街に置いてくぞッ!……ゴメン、やり直し。置いていきますよ」
クロエは笑顔で言った。
「冗談ではない……!」
スーツ越しにリーダーが顔を引き吊る。
「ーーー!」
その時、ラブラクラの触手が二人を目掛けて襲いかかってきた。
「はぁっ!」
クロエは咄嵯にリーダーを突き飛ばす。
クロエは危なげ無くその触手を切り飛ばすと触手は霧状になって消えた。
「大丈夫?」
「助けてくれたのか……」
リーダーが呆然としながら答えた。
「……アイツの駆除は一人じゃ荷が重そう、手伝ってくれる?」
クロエが差し出した手を掴み、立ち上がったりリーダーは苦笑しつつ「構わんよ」と半ばヤケクソ気味に応じた。
その時ラブラクラにも変化が生じていた。
黒と銀の仏像のようだった姿は醜く歪み、アクリと混ざり合い巨大なフードいやハンバーガーを被ったようま黒い人型へと変貌した。顔があった部分にはぽっかりと黒い穴だけが空いている。
***
「これは……一体……?」
大型モニターを眺め、画面に釘付けのワカにドクは説明する。
「あの子は……そう【混人:マジン】。異形とヒトがいい具合に馴染んだんです、そう いい具合に。アクリはラブラクラの意識の一部で、取り込んだ生物やら異形を材料にして自分の肉体を造り変えているんです」
「え?……こわー」
「まあ、大雑把に言うなら、アクリとあの人ははもうすぐ完全に溶け合ってヒトとしての死を迎えます。そうなればラブラクラも消える」
「つまり、あれを倒せば……」
「まぁ……お察しの通りですね」
「そんな……」
「気に病む必要ありません。それに、あなたにも使命があるのでしょう?あなたにしか出来ない、あなたのやるべきこと(どや)」
まるで自分自身に言い聞かせるように言葉を重ねるドク。
「やるべきこと……」
ワカは思い悩むように俯いた。モニターの中では金と銀と黒が攻守を入れ替えて激しい攻防を繰り広げている。
***
『四つ葉のクローバー』夏至の夜に摘むと薬効や魔除けの効果があると言われている。幸運のシンボル。復活の象徴。
だが、それは西洋文明圏での話である。別の国のとある地方では四葉は幸運の象徴どころか逆に終わりの前兆とされているらしい。
幸運には人を惑わす魔力があると信じられているからだろうか?
***
T駅正面のタクシー乗り場。そこには大量の廃車のタクシーが並んでいる。
「なんでこんなに車壊れてんの?」
「事故でもあったんかね?」
もし数十年前の一般人がその光景を見たら、そういう感想を持ったかもしれない。しかし今は違う。
この辺りは駅舎ビルから2時の方角にあり、当時四つ葉のクローバーを社章にしていたタクシー会社があった。
まだ異形の正体が不明で都市がかろうじで機能していた頃、そのタクシー会社の経営者の妻が奇病=異形が外から入り込む「災い」だと信じ込んで、駅に魔除けのために大量の自社の四つ葉マーク入りのタクシーを置かせたのだ。
恐怖を前にした人間は迷信すら信じ込んでしまう。
「なるほど……そんなことが……」
エミはリョウスケに事情を説明した。
「ああ、それ私のお婆ちゃんデス」
バーシアはあっさりと言った。
「え?」
「嘘デス」「……は?」
「冗談デス」
「……バーシアちゃん、あんまり嘘ばっか吐いてると悪い女に……あっ」
クロエが突然一行を置いて飛び出してから30分、駅前のタクシーの残骸の山の中に到着した彼女達はそこに潜みながら動向を見守っていた。
「こっち来た……」
***
黒い怪物と化したラブラクラとクロエが対峙する。
(あんまりこういうのって得意じゃ無いんだけどなぁ)
クロエはそう思うが、今更引き下がるわけにもいかない。
「さぁて、どうするか……」
クロエは思案するが、その時だった。
「うぐっ!?」
突如、クロエが胸のあたりを押さえ苦みだした。
「ああああ……あ……あぐっ……ああ……うあ……あ」
クロエの口からは声にならない音が漏れる。
その声に比例するようにクロエの体がボロボロと崩れ始める。左腕が崩れ、右足が崩れ始め、やがて残った頭部と胴体が崩れ始めるのも時間の問題になった。
(こ……こんな事が……まずいッ!……まずいよ)
その時、ふと、視界の隅を小さな影が横切った。影は場違いな中世の鎧兜を身に付けており、両手には反り返った長いつららのような武器を握っている。それは透き通るように美しい異形の角だった。
「……こんばんわ、クロエサン。引導ヲ渡すニは丁度イイ月夜でスネ…あ?…大丈夫ですカ?」
鎧が少女の声で語りかけてくる。
「大丈夫なワケない……でしょ……これ……気を失いそうなんだ……けど……」
それは港から付いてきた幼女の亡霊バーシアであった。
モウスグ死にますカ?お母サンみたいに?」
「……は?……何言って……」
バーシアがクロエの問いかけを無視して続ける。
「……クロエサンとドクシャの皆サンにフタツ言っておきたい事がアリマス」
「え?……えっと……」
困惑するクロエ
「1つ目は……今のワタシは挿し絵ミタイナビミョウなファッションではないゾ、というテン」
「いや……今はそこじゃないと思うんだけど……」
「2つ目……コレは兄上ノ角デス!3年前にワタシが兄上のツノを斬り落としテ自分デ加工シマシタ!!」
頬を紅潮させ自慢げに語るバーシア。よほど誰かに自慢したかったらしい。
「……え?……うん、それは夕方に聞いたけど……」
体が崩れる恐怖に堪え律儀に応じるクロエ。
「では参りマス……」
ジャリ……細かい瓦礫を踏みしめバーシアがゆっくりと歩き出す。
「コノ武器の使い方を教えてあげまショウ」
「え?ちょ、ちょっと待って」
「待ちませんヨ?コレを使う時は敵が目の前にいる時だけですカラネ?」
バーシアが無造作に『角』を振りかぶる。
「ちょっ……まっ……」
バキィィン! クロエの制止など聞かず、バーシアは無慈悲にもラブラクラに二振りの『角』を叩きつけた。
その時、クロエには彼女の振り下ろす『角』が白く光ったように見えた。
「……」
一瞬、静寂が訪れる。
ラブラクラは『角』を両手で掴むとバーシアを放り投げようと両腕に力を込めるがびくともしない。
数秒の膠着状態のあとバーシアが軽く『角』を捻ると、まるで合気道の達人に投げられたかのようにラブラクラは地面に叩きつけられる。
「……!?」
ラブラクラは起き上がると同時にバーシアに飛びかかろうとするが、それより早くバーシアの左手の『角』が伸びてラブラクラの喉笛に突き刺さる。
「Ga……」伸びた角はラブラクラごと廃車の四つ葉タクシーを貫通し、そのままスルスルと元の長さに戻る。
「……!!」
「動脈をハズシタか」バーシアは残念そうに言う。
「……ッ」
ラブラクラはバーシアの方に向き直ると再び襲い掛かろうとしたが、その瞬間、バーシアの右手の『角』が伸長して次の獲物とばかりにラブラクラの右足の甲を貫いた。「……!?」
「これで動け……ませんよネ?」
バーシアはラブラクラの傷口をグリグリと抉りながら上目遣いで微笑んだ。
「……!!……!!!」
ラブラクラが悲鳴をあげるが、バーシアは容赦なく足に食い込ませた『角』を引き抜く。
「アァ……もう壊れましタカ」
そう言いつつ今度は左足の甲に『角』を突き立てる。
「……!?」
痛みから解放されたと思った矢先に再び激痛を与えられ、ラブラクラは身体をよじりながら必死に逃れようとするが徒労に終わる。
「……暴れても無駄ですヨ?アナタの動作は兄上の『角』が全部押さえ込んでますカラネ?」
バーシアが子犬か子猫に囁くような優しい声音でラブラクラに語りかける。
「……!……!」
***
「思ってたヤツと全然違う!こんなの予定に無かったんですけどぉ~!!」
席から立ち上がったドクは大画面モニターを指差しながら抗議する。酔いも醒めて先ほどの男が用意したお菓子も彼女が半分以上平らげてしまった。
「いや、これは想定外です。まさかあのラブラクラがこんな簡単に負けちゃうとは思いませんでした」
男が煮卵のような額の汗を拭きながら答える。
「これじゃ私の自信作『クロエちゃん人形』が噛ませ犬みたいでホントに……ホントに……」
「あの得物……ワキイシ……いや混人の肉体に干渉して特性を不全状態にしてるみたいだぞ、あんなの初めてだ……あっ……泣かないでください主任」
透き通るようなスミレ色の瞳を潤ませ、涙ぐみ始めたドクを男は困り果てた様子で見つめる。
「そもそも本当はどうなる予定だったんですか?」
ワカが場を取り繕うように横合いから口を挟んだ。
「……えっと……確か……『あの子のデータを取りつつラブラクラをT市の南の自衛隊駐屯地に誘導して……』えっと……それから……」
ついに泣きべそをかきはじめたドクを見て、男が説明を引き継ぐ
「T市からの災害派遣要請の名目で戦闘ヘリによる爆撃からの制圧、だったと思います」
(このドクって人、見かけより子供っぽいな……もしかして私の見た目年齢の少し上くらいか?)
ワカはチラリとそんな事を考えながら男に率直な疑問をぶつける。
「こっわ……でもあの人、元は人間ですよね?害獣みたいに処分して大丈夫なんですか?法律とか……それに……何よりクロエさん達が……」
「そこは心配ない。彼は『元』人間であって今は『人間』ではない。戸籍も遡って死亡扱いだ。つまり……」
「……法律的に全く問題はありません」
男の言葉を引き継いでドクが言った。
「…落ち着きましたか主任。どうぞ、ふわふわクマさんティッシュです。使ってください」「ありがとう……」
鼻をかみ、涙を拭いたドクは人心地ついたようだ。
「まぁ……私としてはラブラクラの回収が出来ればそれで良いのですが……最悪、胴(ボディ)が残ってれば今回はヨシとしましょう」
「では『兄弟』に連絡します……」
男が壁際の内線電話から手短に誰かに指示を飛ばす。
ドクはお茶ひと啜り、ワカハは二人を怪訝な表情で見やる
「おう、出番だ、準備しろ」
***
ラブラクラはバーシアの『角』によって四肢を地面に縫い付けられ、身動き一つ出来ない状態になっている。
「………」
表情は顔にぽっかり空いた虚のせいで伺い知れない。
バーシアはそれを少し残念に思った。
「さて、どうしますカ?」小首を傾げラブラクラを見下ろすバーシア。
「!?」
「……ナニ?」ふと嫌な気配を感じ顔を上げるバーシア。
現在位置とは駅舎を挟んで丁度反対、エミサン達の仲間の細長い乗り物から嫌な気配を感じる。
『家』に盗みに入っって来たヤツらと同じ、蛇のように纏わりつく嫌な感じ、バーシアは『角』を伸ばして警戒の構えををとる。
「……!?」
突然、ラブラクラがバーシアの方に向き直り、拘束されているにも関わらずバーシアに飛びかかろうとしてきた。
バーシアの全身に寒気が走る。
咄嵯に『角』を引っ込め防御しようとするが、それより早くラブラクラの手がバーシアの幼い顔に伸び……
「……!!」
その時、乾いた銃声が鳴り響いた。ラブラクラの体が痙攣し、そのまま動かなくなった。
「……!?」
バーシアが驚きのあまり目を見開く。
ラブラクラの後ろには拳銃を構えたまま立ち尽くすエミの姿があった。
***
(……あれ?)
エミは自分の手の中にある物を見ながら違和感を覚えた。
(私まだ撃ってないよね……)
そう、エミはまだ引き金を引いていない。だが目の前のラブラクラ撃とうとした瞬間、何者かがラブラクラを先に撃ち抜いたのだ。
ドクン……ドクン……ドクン……、ラブラクラの頭が沸騰したお湯のようにボコボコ波打ってゆっくりと膨張、破裂した。
「……!!」
赤黒い液体がひび割れたアスファルトに染みを作り、肉の塊がドロリと周囲に広がった。
***
「ふぃー」BGM代わりのカーラジオを入れて、若い男がため息を吐く。
「この仕事はホントォ~に胸糞悪いなぁ!、まぁ普段の警備の仕事より手当てがいいからやってるんだけどさぁ~!」
「…………」
もう一人の若い男、ケースにライフルを仕舞い込んでいる最中の男は答えない。
「……おい……ちょっと……」
「…………」
「なんか喋ってくれよ……」
「…………」
「あーもう……ホントつまんね……」
「………」
二人は普段、T大の入場ゲートの警備部署に配属されている。月給は手取りで18万程度。二人は血の繋がらない兄弟だった。そして弟はクロエにガチ恋していた。
「……」
弟の気持ちを知った兄はある日、それをサポートする決意をした。その日を境に二人の絆が深まった。
「……」
兄は弟の為に、クロエの好きな物をリサーチする事にした。
だがそれは本筋ではない……。
ジリリリン!突如けたたましいアラートが救急車に乗った二人の耳に届く。
『現在T駅に異形の群れが多数接近中、現場周辺の人員は大至急シェルターに避難、もしくは退避してください……』
「……まじかよ……」「……」
「俺達はどうする?」「……」
「避難しよう」「……」
「クロエちゃん達を助けてからな」「……」
「なんでニーチャンは喋らないんだ」「……」
***
数十分後、ひとけの無くなったT駅周辺に異形の群れが殺到した。
様々な種類の異形が押し合いへしあいしながら駅構内に侵入してくる。だが不思議とラブラクラの死骸には鯨骨生物群集のように小型の異形がたかり始め、あっという間に死体を覆い隠してしまった。
***
***
有害異種形而鳥獣(ゆうがいいしゅけいめんちょうじゅう)
の捕獲作業について
有害異種形而鳥獣(※以下、異形)による、生活環境や生態系への被害の防止を目的として、許可された期間に狩猟免許を持つ資格者が捕獲(駆除)を行う。
一年の狩猟期間は毎年3月から10月まで、この期間を『猟期』と呼ぶ。
『猟期』の終了から半年経ち、次の『猟期』が始まるまでの間は、『異種形而鳥獣保護法』により、一般人が、私有地、又は、公共の土地以外で、異種形而鳥獣を捕獲することは禁止されている。つかまるよマジで。
これは、人為的な外来種の持ち込みを防ぐ目的がある。
また、この期間中に、不法に捕獲、或いは駆除した異形を廃棄する場合は、所定の手続きが必要である。
※ なお、上記法律に違反した場合、懲役20年以下の刑に処せられる。
※ なお、上記の場合、取締機関のエージェントが出動し、違法行為を取り締まることがある。
補則事項
『スーツ』について
特段の事情をのぞき、狩猟の際はスーツの着用が義務付けられている。ただし、狩猟免許の無い者、または『狩猟』以外の目的での 使用、悪用は固く禁じられている。特に公共の場での脱衣行為など、もっての他である。………………
T大出版部発行「狩猟免許マニュアル」より抜粋。
***
「ただいまぁ」
あの子が帰ってきた、
時計の針はとうに午前0時をまわっている。
「……お帰りなさい」
わたしは小走りで玄関先へ向かう、そして努めて明るい態度でお出迎えする 。
「へへへ」
あの子は目を細めて笑った。
ーつづくー
■2046年5月13日、物語は新たな局面を迎える。
一人の少女と少年が佇んでいた。
「ノワさん、どんな顔してた?」少年が尋ねる
「うん……。眠ってるみたいだった」
「……そっか」
伏せ目がちの少女の手には線香、墓石の前に立つ。
墓碑には『能良本家之墓』と刻まれていた。
「……」
静かに目を閉じて黙祷を捧げた後、持ってきた生花を添え二人は合掌した。
***
突然ごめんなさい。皆さんに大切な人はいますか?わたしの大切な人はお姉ちゃんでした。大好きなお姉ちゃんがいました。
でも、その大好きな人はもうこの世にはいません。
お姉ちゃんがいなくなったあの日から、わたしの世界は終わりました。
そして、その終わりは今もまだ続いています。
わたしはお姉ちゃんの好きだったボトルシップを作りながら、仇を探しています。
唯一の手がかりは異形を連れた黒い人という、おぼろげな記憶だけ。
でも必ず見つけ出して殺す。
お姉ちゃんの分まで長生きする。なんてありきたりで陳腐な言葉は使いたくない。
ただわたしがしたいからそうするんだ。それだけ。
***
「駆除課の芋女の部下が助っ人とはな……」
スケットのリーダーが動揺を押し隠しながらスーツの下で毒づく。
「ご不満ですか?金ピカさん?」
にこりともせずに答えるクロエにリーダーはかぶりを振って答える。
「いやいや、感謝しているさ。こんな早く救援が来るとは思わなかったものだら。やはり地元の人は……」
そう言ってリーダーは左手首の端末に何事が入力しようと右手を伸ばしかけた瞬間。
ガツン!! クロエの拳が彼の顔面に突き刺さった。と同時にもう片方の腕、鋭いネイルがリーダーの腕輪端末をグシャリと握り潰す。
「みねばああ!?」
悲鳴を上げるリーダー。
「あっ、ゴメンなさい。お怪我の具合を確認して……」
しれっと嘘を吐くクロエ。
「えぇい……当たり所が悪いとこういうものか……」
リーダーがスーツの下で顔をしかめると、彼女はグイッと息のかかりそうな距離まで顔を近づけた。
「!?」
困惑するリーダーにクロエは言う。
「アタシの出身地はT市じゃねー、こんなクソッタレな街大嫌いだ。次にアタシをイラつかせたら身ぐるみ這いで街に置いてくぞッ!……ゴメン、やり直し。置いていきますよ」
クロエは笑顔で言った。
「冗談ではない……!」
スーツ越しにリーダーが顔を引き吊る。
「ーーー!」
その時、ラブラクラの触手が二人を目掛けて襲いかかってきた。
「はぁっ!」
クロエは咄嵯にリーダーを突き飛ばす。
クロエは危なげ無くその触手を切り飛ばすと触手は霧状になって消えた。
「大丈夫?」
「助けてくれたのか……」
リーダーが呆然としながら答えた。
「……アイツの駆除は一人じゃ荷が重そう、手伝ってくれる?」
クロエが差し出した手を掴み、立ち上がったりリーダーは苦笑しつつ「構わんよ」と半ばヤケクソ気味に応じた。
その時ラブラクラにも変化が生じていた。
黒と銀の仏像のようだった姿は醜く歪み、アクリと混ざり合い巨大なフードいやハンバーガーを被ったようま黒い人型へと変貌した。顔があった部分にはぽっかりと黒い穴だけが空いている。
***
「これは……一体……?」
大型モニターを眺め、画面に釘付けのワカにドクは説明する。
「あの子は……そう【混人:マジン】。異形とヒトがいい具合に馴染んだんです、そう いい具合に。アクリはラブラクラの意識の一部で、取り込んだ生物やら異形を材料にして自分の肉体を造り変えているんです」
「え?……こわー」
「まあ、大雑把に言うなら、アクリとあの人ははもうすぐ完全に溶け合ってヒトとしての死を迎えます。そうなればラブラクラも消える」
「つまり、あれを倒せば……」
「まぁ……お察しの通りですね」
「そんな……」
「気に病む必要ありません。それに、あなたにも使命があるのでしょう?あなたにしか出来ない、あなたのやるべきこと(どや)」
まるで自分自身に言い聞かせるように言葉を重ねるドク。
「やるべきこと……」
ワカは思い悩むように俯いた。モニターの中では金と銀と黒が攻守を入れ替えて激しい攻防を繰り広げている。
***
『四つ葉のクローバー』夏至の夜に摘むと薬効や魔除けの効果があると言われている。幸運のシンボル。復活の象徴。
だが、それは西洋文明圏での話である。別の国のとある地方では四葉は幸運の象徴どころか逆に終わりの前兆とされているらしい。
幸運には人を惑わす魔力があると信じられているからだろうか?
***
T駅正面のタクシー乗り場。そこには大量の廃車のタクシーが並んでいる。
「なんでこんなに車壊れてんの?」
「事故でもあったんかね?」
もし数十年前の一般人がその光景を見たら、そういう感想を持ったかもしれない。しかし今は違う。
この辺りは駅舎ビルから2時の方角にあり、当時四つ葉のクローバーを社章にしていたタクシー会社があった。
まだ異形の正体が不明で都市がかろうじで機能していた頃、そのタクシー会社の経営者の妻が奇病=異形が外から入り込む「災い」だと信じ込んで、駅に魔除けのために大量の自社の四つ葉マーク入りのタクシーを置かせたのだ。
恐怖を前にした人間は迷信すら信じ込んでしまう。
「なるほど……そんなことが……」
エミはリョウスケに事情を説明した。
「ああ、それ私のお婆ちゃんデス」
バーシアはあっさりと言った。
「え?」
「嘘デス」「……は?」
「冗談デス」
「……バーシアちゃん、あんまり嘘ばっか吐いてると悪い女に……あっ」
クロエが突然一行を置いて飛び出してから30分、駅前のタクシーの残骸の山の中に到着した彼女達はそこに潜みながら動向を見守っていた。
「こっち来た……」
***
黒い怪物と化したラブラクラとクロエが対峙する。
(あんまりこういうのって得意じゃ無いんだけどなぁ)
クロエはそう思うが、今更引き下がるわけにもいかない。
「さぁて、どうするか……」
クロエは思案するが、その時だった。
「うぐっ!?」
突如、クロエが胸のあたりを押さえ苦みだした。
「ああああ……あ……あぐっ……ああ……うあ……あ」
クロエの口からは声にならない音が漏れる。
その声に比例するようにクロエの体がボロボロと崩れ始める。左腕が崩れ、右足が崩れ始め、やがて残った頭部と胴体が崩れ始めるのも時間の問題になった。
(こ……こんな事が……まずいッ!……まずいよ)
その時、ふと、視界の隅を小さな影が横切った。影は場違いな中世の鎧兜を身に付けており、両手には反り返った長いつららのような武器を握っている。それは透き通るように美しい異形の角だった。
「……こんばんわ、クロエサン。引導ヲ渡すニは丁度イイ月夜でスネ…あ?…大丈夫ですカ?」
鎧が少女の声で語りかけてくる。
「大丈夫なワケない……でしょ……これ……気を失いそうなんだ……けど……」
それは港から付いてきた幼女の亡霊バーシアであった。
モウスグ死にますカ?お母サンみたいに?」
「……は?……何言って……」
バーシアがクロエの問いかけを無視して続ける。
「……クロエサンとドクシャの皆サンにフタツ言っておきたい事がアリマス」
「え?……えっと……」
困惑するクロエ
「1つ目は……今のワタシは挿し絵ミタイナビミョウなファッションではないゾ、というテン」
「いや……今はそこじゃないと思うんだけど……」
「2つ目……コレは兄上ノ角デス!3年前にワタシが兄上のツノを斬り落としテ自分デ加工シマシタ!!」
頬を紅潮させ自慢げに語るバーシア。よほど誰かに自慢したかったらしい。
「……え?……うん、それは夕方に聞いたけど……」
体が崩れる恐怖に堪え律儀に応じるクロエ。
「では参りマス……」
ジャリ……細かい瓦礫を踏みしめバーシアがゆっくりと歩き出す。
「コノ武器の使い方を教えてあげまショウ」
「え?ちょ、ちょっと待って」
「待ちませんヨ?コレを使う時は敵が目の前にいる時だけですカラネ?」
バーシアが無造作に『角』を振りかぶる。
「ちょっ……まっ……」
バキィィン! クロエの制止など聞かず、バーシアは無慈悲にもラブラクラに二振りの『角』を叩きつけた。
その時、クロエには彼女の振り下ろす『角』が白く光ったように見えた。
「……」
一瞬、静寂が訪れる。
ラブラクラは『角』を両手で掴むとバーシアを放り投げようと両腕に力を込めるがびくともしない。
数秒の膠着状態のあとバーシアが軽く『角』を捻ると、まるで合気道の達人に投げられたかのようにラブラクラは地面に叩きつけられる。
「……!?」
ラブラクラは起き上がると同時にバーシアに飛びかかろうとするが、それより早くバーシアの左手の『角』が伸びてラブラクラの喉笛に突き刺さる。
「Ga……」伸びた角はラブラクラごと廃車の四つ葉タクシーを貫通し、そのままスルスルと元の長さに戻る。
「……!!」
「動脈をハズシタか」バーシアは残念そうに言う。
「……ッ」
ラブラクラはバーシアの方に向き直ると再び襲い掛かろうとしたが、その瞬間、バーシアの右手の『角』が伸長して次の獲物とばかりにラブラクラの右足の甲を貫いた。「……!?」
「これで動け……ませんよネ?」
バーシアはラブラクラの傷口をグリグリと抉りながら上目遣いで微笑んだ。
「……!!……!!!」
ラブラクラが悲鳴をあげるが、バーシアは容赦なく足に食い込ませた『角』を引き抜く。
「アァ……もう壊れましタカ」
そう言いつつ今度は左足の甲に『角』を突き立てる。
「……!?」
痛みから解放されたと思った矢先に再び激痛を与えられ、ラブラクラは身体をよじりながら必死に逃れようとするが徒労に終わる。
「……暴れても無駄ですヨ?アナタの動作は兄上の『角』が全部押さえ込んでますカラネ?」
バーシアが子犬か子猫に囁くような優しい声音でラブラクラに語りかける。
「……!……!」
***
「思ってたヤツと全然違う!こんなの予定に無かったんですけどぉ~!!」
席から立ち上がったドクは大画面モニターを指差しながら抗議する。酔いも醒めて先ほどの男が用意したお菓子も彼女が半分以上平らげてしまった。
「いや、これは想定外です。まさかあのラブラクラがこんな簡単に負けちゃうとは思いませんでした」
男が煮卵のような額の汗を拭きながら答える。
「これじゃ私の自信作『クロエちゃん人形』が噛ませ犬みたいでホントに……ホントに……」
「あの得物……ワキイシ……いや混人の肉体に干渉して特性を不全状態にしてるみたいだぞ、あんなの初めてだ……あっ……泣かないでください主任」
透き通るようなスミレ色の瞳を潤ませ、涙ぐみ始めたドクを男は困り果てた様子で見つめる。
「そもそも本当はどうなる予定だったんですか?」
ワカが場を取り繕うように横合いから口を挟んだ。
「……えっと……確か……『あの子のデータを取りつつラブラクラをT市の南の自衛隊駐屯地に誘導して……』えっと……それから……」
ついに泣きべそをかきはじめたドクを見て、男が説明を引き継ぐ
「T市からの災害派遣要請の名目で戦闘ヘリによる爆撃からの制圧、だったと思います」
(このドクって人、見かけより子供っぽいな……もしかして私の見た目年齢の少し上くらいか?)
ワカはチラリとそんな事を考えながら男に率直な疑問をぶつける。
「こっわ……でもあの人、元は人間ですよね?害獣みたいに処分して大丈夫なんですか?法律とか……それに……何よりクロエさん達が……」
「そこは心配ない。彼は『元』人間であって今は『人間』ではない。戸籍も遡って死亡扱いだ。つまり……」
「……法律的に全く問題はありません」
男の言葉を引き継いでドクが言った。
「…落ち着きましたか主任。どうぞ、ふわふわクマさんティッシュです。使ってください」「ありがとう……」
鼻をかみ、涙を拭いたドクは人心地ついたようだ。
「まぁ……私としてはラブラクラの回収が出来ればそれで良いのですが……最悪、胴(ボディ)が残ってれば今回はヨシとしましょう」
「では『兄弟』に連絡します……」
男が壁際の内線電話から手短に誰かに指示を飛ばす。
ドクはお茶ひと啜り、ワカハは二人を怪訝な表情で見やる
「おう、出番だ、準備しろ」
***
ラブラクラはバーシアの『角』によって四肢を地面に縫い付けられ、身動き一つ出来ない状態になっている。
「………」
表情は顔にぽっかり空いた虚のせいで伺い知れない。
バーシアはそれを少し残念に思った。
「さて、どうしますカ?」小首を傾げラブラクラを見下ろすバーシア。
「!?」
「……ナニ?」ふと嫌な気配を感じ顔を上げるバーシア。
現在位置とは駅舎を挟んで丁度反対、エミサン達の仲間の細長い乗り物から嫌な気配を感じる。
『家』に盗みに入っって来たヤツらと同じ、蛇のように纏わりつく嫌な感じ、バーシアは『角』を伸ばして警戒の構えををとる。
「……!?」
突然、ラブラクラがバーシアの方に向き直り、拘束されているにも関わらずバーシアに飛びかかろうとしてきた。
バーシアの全身に寒気が走る。
咄嵯に『角』を引っ込め防御しようとするが、それより早くラブラクラの手がバーシアの幼い顔に伸び……
「……!!」
その時、乾いた銃声が鳴り響いた。ラブラクラの体が痙攣し、そのまま動かなくなった。
「……!?」
バーシアが驚きのあまり目を見開く。
ラブラクラの後ろには拳銃を構えたまま立ち尽くすエミの姿があった。
***
(……あれ?)
エミは自分の手の中にある物を見ながら違和感を覚えた。
(私まだ撃ってないよね……)
そう、エミはまだ引き金を引いていない。だが目の前のラブラクラ撃とうとした瞬間、何者かがラブラクラを先に撃ち抜いたのだ。
ドクン……ドクン……ドクン……、ラブラクラの頭が沸騰したお湯のようにボコボコ波打ってゆっくりと膨張、破裂した。
「……!!」
赤黒い液体がひび割れたアスファルトに染みを作り、肉の塊がドロリと周囲に広がった。
***
「ふぃー」BGM代わりのカーラジオを入れて、若い男がため息を吐く。
「この仕事はホントォ~に胸糞悪いなぁ!、まぁ普段の警備の仕事より手当てがいいからやってるんだけどさぁ~!」
「…………」
もう一人の若い男、ケースにライフルを仕舞い込んでいる最中の男は答えない。
「……おい……ちょっと……」
「…………」
「なんか喋ってくれよ……」
「…………」
「あーもう……ホントつまんね……」
「………」
二人は普段、T大の入場ゲートの警備部署に配属されている。月給は手取りで18万程度。二人は血の繋がらない兄弟だった。そして弟はクロエにガチ恋していた。
「……」
弟の気持ちを知った兄はある日、それをサポートする決意をした。その日を境に二人の絆が深まった。
「……」
兄は弟の為に、クロエの好きな物をリサーチする事にした。
だがそれは本筋ではない……。
ジリリリン!突如けたたましいアラートが救急車に乗った二人の耳に届く。
『現在T駅に異形の群れが多数接近中、現場周辺の人員は大至急シェルターに避難、もしくは退避してください……』
「……まじかよ……」「……」
「俺達はどうする?」「……」
「避難しよう」「……」
「クロエちゃん達を助けてからな」「……」
「なんでニーチャンは喋らないんだ」「……」
***
数十分後、ひとけの無くなったT駅周辺に異形の群れが殺到した。
様々な種類の異形が押し合いへしあいしながら駅構内に侵入してくる。だが不思議とラブラクラの死骸には鯨骨生物群集のように小型の異形がたかり始め、あっという間に死体を覆い隠してしまった。
***
***
有害異種形而鳥獣(ゆうがいいしゅけいめんちょうじゅう)
の捕獲作業について
有害異種形而鳥獣(※以下、異形)による、生活環境や生態系への被害の防止を目的として、許可された期間に狩猟免許を持つ資格者が捕獲(駆除)を行う。
一年の狩猟期間は毎年3月から10月まで、この期間を『猟期』と呼ぶ。
『猟期』の終了から半年経ち、次の『猟期』が始まるまでの間は、『異種形而鳥獣保護法』により、一般人が、私有地、又は、公共の土地以外で、異種形而鳥獣を捕獲することは禁止されている。つかまるよマジで。
これは、人為的な外来種の持ち込みを防ぐ目的がある。
また、この期間中に、不法に捕獲、或いは駆除した異形を廃棄する場合は、所定の手続きが必要である。
※ なお、上記法律に違反した場合、懲役20年以下の刑に処せられる。
※ なお、上記の場合、取締機関のエージェントが出動し、違法行為を取り締まることがある。
補則事項
『スーツ』について
特段の事情をのぞき、狩猟の際はスーツの着用が義務付けられている。ただし、狩猟免許の無い者、または『狩猟』以外の目的での 使用、悪用は固く禁じられている。特に公共の場での脱衣行為など、もっての他である。………………
T大出版部発行「狩猟免許マニュアル」より抜粋。
***
「ただいまぁ」
あの子が帰ってきた、
時計の針はとうに午前0時をまわっている。
「……お帰りなさい」
わたしは小走りで玄関先へ向かう、そして努めて明るい態度でお出迎えする 。
「へへへ」
あの子は目を細めて笑った。
ーつづくー
■2046年5月13日、物語は新たな局面を迎える。
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