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シーズン2 私の邪悪な魔法使いの友人の弟子
第五章 36)呪いというフレーズ
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私は群衆たちを掻き分け、そこから何歩か進み出て、宙に浮いているシュショテに向かって呼び掛ける。
「なあ、シュショテ! どうしたというのだ?」
私の声にシュショテも反応したが、野次馬たちや、一緒に来た傭兵たちもいっせいに私を見た。
「おいおい、俺たちの街の大聖堂を壊したこのガキの知り合いか、お前は!」彼らの視線の意味はこんな感じ。
私はその突き刺さる視線を受け止めながら、更に続けた。
「と、とにかく下に降りてくるんだ、シュショテ」
「こ、来ないで下さい!」
私の存在に気づいたからといって、彼の切迫した表情を少しも緩みはしなかった。それどころか彼はまた、悲鳴を上げながら魔法を放ったりしている。
その魔法の轟音を伴った衝撃波の揺らめきと、砕け散った宝石の輝きが、下にいる私たちの上で鮮やかにきらめいた。
その魔法を見て、野次馬たちがざわめく。
この魔法の威力で、歴史的建造物である大聖堂の尖塔を破壊したわけだ。この現場に来たばかりのスザンナたち傭兵も、今、それを見て確信したことであろう。
それにしても、これは何という大騒動であろうか。
本当にたくさんの群衆たちが、憎しみと好奇心の眼差しで、シュショテのことを見ている。あのシャイで大人しいシュショテを。
そしてらシュショテと知り合いだということが判明した私に向かっても、同じような眼差しが送られてくる。
とはいえ、私たちは、彼らの日常と大聖堂を破壊したのだ。それは本当にとんでもない大事件。後世にも語り継がれるような大騒動。どれだけ視線を集めて少なくはないであろう。
「シャグラン!」
私を呼ぶ声がする。声のほうを見るとアリューシアがいた。ちょうど輪の形になっている野次馬の群れの向こう側に、小さなアリューシアの姿が見えた。
「アリューシア! 君は無事か?」
いや、無事には見えない。さすがに彼女も取り乱しているようだ。つややかな髪の毛が乱れ、瓦礫の破片で怪我でもしたのか、頬から血が流れている。
しかし大勢の群衆に紛れながらも、まるでそこにだけ光が当たっているかのように、アリューシアの小さな姿だけが一際目立つ。
「わ、私は大丈夫。でもあいつが!」
土煙に咳き込みながら、彼女は言った。
「何が起きたんだ?」
「彼は呪われているんだって! わ、私のせいよ! 彼の秘密を問い質したら、こんなことになったの!」
「ああ、なるほど、わかった、そういうことか」
いや、アリューシアの言っている言葉の意味が少しも理解出来ない。突然、出てきた「呪い」というフレーズに、私は呆然とするしかない。
しかしそれについて問い質すよりも、とにかくシュショテを救うことが喫緊の課題だ。
シュショテは何かに怯えているようだ。しかしそれが何なのかまるでわからない。
彼は宙に浮いた状態で、まるで虫でも払うかのように手を振ったり、身体をよじったりしているのだけど、何に対してそのような動作を起こしているのかが見当もつかない。
私からは何も見えないのだ。おそらく私だけじゃなくて、他の誰からも。彼にしか見えない何か。シュショテはその何かと戦っている様子。アリューシアはそれを「呪い」と呼んでいるのであろうか?
「シュショテ! とにかく降りてこい、こっちに来るんだ!」
私は再び大声で呼び掛ける。
「だ、駄目です。駄目なんです! あなたたちも巻き添えになる!」
泣きそうな声でシュショテが返してくる。
「巻き添えだって? 何の? 君は何に怯えているんだよ?」
「うわあ!」というシュショテの悲鳴で、私の質問も立ち消えになった。彼は身体を激しくよじりながら魔法を放つ。彼はまたもや、その何かと戦い始めたようだ。
「お、おい、あんた! これはどういうことなんだよ?」
あの酒場の主人が私に言ってきた。彼もこの現場に来ていたようだ。彼の後ろにはスザンナもいる。他の傭兵や野次馬たちも、私を難詰めするような表情で見てくる。
「あんたはあのガキの知り合いのようだな、 おい、え? そうだろ?」
「なあ、シュショテ! どうしたというのだ?」
私の声にシュショテも反応したが、野次馬たちや、一緒に来た傭兵たちもいっせいに私を見た。
「おいおい、俺たちの街の大聖堂を壊したこのガキの知り合いか、お前は!」彼らの視線の意味はこんな感じ。
私はその突き刺さる視線を受け止めながら、更に続けた。
「と、とにかく下に降りてくるんだ、シュショテ」
「こ、来ないで下さい!」
私の存在に気づいたからといって、彼の切迫した表情を少しも緩みはしなかった。それどころか彼はまた、悲鳴を上げながら魔法を放ったりしている。
その魔法の轟音を伴った衝撃波の揺らめきと、砕け散った宝石の輝きが、下にいる私たちの上で鮮やかにきらめいた。
その魔法を見て、野次馬たちがざわめく。
この魔法の威力で、歴史的建造物である大聖堂の尖塔を破壊したわけだ。この現場に来たばかりのスザンナたち傭兵も、今、それを見て確信したことであろう。
それにしても、これは何という大騒動であろうか。
本当にたくさんの群衆たちが、憎しみと好奇心の眼差しで、シュショテのことを見ている。あのシャイで大人しいシュショテを。
そしてらシュショテと知り合いだということが判明した私に向かっても、同じような眼差しが送られてくる。
とはいえ、私たちは、彼らの日常と大聖堂を破壊したのだ。それは本当にとんでもない大事件。後世にも語り継がれるような大騒動。どれだけ視線を集めて少なくはないであろう。
「シャグラン!」
私を呼ぶ声がする。声のほうを見るとアリューシアがいた。ちょうど輪の形になっている野次馬の群れの向こう側に、小さなアリューシアの姿が見えた。
「アリューシア! 君は無事か?」
いや、無事には見えない。さすがに彼女も取り乱しているようだ。つややかな髪の毛が乱れ、瓦礫の破片で怪我でもしたのか、頬から血が流れている。
しかし大勢の群衆に紛れながらも、まるでそこにだけ光が当たっているかのように、アリューシアの小さな姿だけが一際目立つ。
「わ、私は大丈夫。でもあいつが!」
土煙に咳き込みながら、彼女は言った。
「何が起きたんだ?」
「彼は呪われているんだって! わ、私のせいよ! 彼の秘密を問い質したら、こんなことになったの!」
「ああ、なるほど、わかった、そういうことか」
いや、アリューシアの言っている言葉の意味が少しも理解出来ない。突然、出てきた「呪い」というフレーズに、私は呆然とするしかない。
しかしそれについて問い質すよりも、とにかくシュショテを救うことが喫緊の課題だ。
シュショテは何かに怯えているようだ。しかしそれが何なのかまるでわからない。
彼は宙に浮いた状態で、まるで虫でも払うかのように手を振ったり、身体をよじったりしているのだけど、何に対してそのような動作を起こしているのかが見当もつかない。
私からは何も見えないのだ。おそらく私だけじゃなくて、他の誰からも。彼にしか見えない何か。シュショテはその何かと戦っている様子。アリューシアはそれを「呪い」と呼んでいるのであろうか?
「シュショテ! とにかく降りてこい、こっちに来るんだ!」
私は再び大声で呼び掛ける。
「だ、駄目です。駄目なんです! あなたたちも巻き添えになる!」
泣きそうな声でシュショテが返してくる。
「巻き添えだって? 何の? 君は何に怯えているんだよ?」
「うわあ!」というシュショテの悲鳴で、私の質問も立ち消えになった。彼は身体を激しくよじりながら魔法を放つ。彼はまたもや、その何かと戦い始めたようだ。
「お、おい、あんた! これはどういうことなんだよ?」
あの酒場の主人が私に言ってきた。彼もこの現場に来ていたようだ。彼の後ろにはスザンナもいる。他の傭兵や野次馬たちも、私を難詰めするような表情で見てくる。
「あんたはあのガキの知り合いのようだな、 おい、え? そうだろ?」
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