私の邪悪な魔法使いの友人2

ロキ

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シーズン2 私の邪悪な魔法使いの友人の弟子

第五章 16)その現場を取り仕切る者

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 「いえ、悪くない作戦かもしれません。確かにこれくらい強引なほうが、塔の改革は迅速に進んでいく。この塔の主がそれでも構わないと言うなら、いいのではないでしょうか」

 プラーヌスが召使いたちにあの指令を下してすぐ、私はサンチーヌを執務室に呼んで相談に乗ってもらった。
 本当にこんなことで大丈夫なのだろうか。いや、きっと大丈夫ではないに決まっているから助けて欲しい、私はそうサンチーヌに訴えたのだ。

 とても意外なことであったが、サンチーヌはプラーヌスのやり方に賛同した。
 サンチーヌにはサンチーヌなりの計画があったはずなのに、それをプラーヌスに邪魔されたわけだから、怒りはしないまでもそのやり方に呆れるだろうと思いきや、サンチーヌはさらりと言ってのけた。

 「では明日から掃除夫たちは全員出払うわけですね? 男性も女性も関係なく」

 「はい、そういうことになります。まあ、彼らが大人しくプラーヌスの命令に服すればですが」

 「ならば、しばらく様子を見て、汚れが目立ってきたところから、必要最低限の召使いを塔に帰して掃除させていきましょう。そうやって少しずつ増やしていけば、掃除夫がどれだけ必要か計算出来るかもしれません」

 「はあ、なるほど」

 「しかしその仕事をすぐに開始するにしても、心配しなければいけない問題が他にあります」

 サンチーヌは言ってきた。「塔の主は、その仕事を我々に任せるわけですよね? 塔の主自らその現場を取り仕切ってくれるわけではない」

 「はい」

 プラーヌスにも仕事がある。彼が忙しいことは事実だ。
 このような仕事を誰かに任せるために、私をこの塔の管理人として指名してきたのだ。その仕事の責任は、私が引き受けなければいけない。

 「森を開拓するのは簡単ではありません。さあ、森を伐採しろ、土地を開墾しろと命令しても、今までそのような仕事をしたことがない召使いたちに可能なはずがない。誰かがその仕事を指導し、その現場を取り仕切らなければいけない」

 「言われてみればそうですね、僕にも当然、そんな経験はありませんよ」

 「そうでしょうね、私だってありません。他の執事たちも、当然、そのような経験などない」

 サンチーヌは腕を組んで、思案に耽る仕草を見せる。
 いつでも淡々としている彼が少し困った様子を見せている。それはすなわち、本当に困っているということなのかもしれない。

 「料理人のミリューは農家の出で、ボーアホーブ家の屋敷の庭でも、珍しい農作物を自分で栽培したりしていました。いざ畑を耕したり、種を蒔く段階になれば、彼の知識は役に立つでしょう。どのような作物を植えるべきか、そういうことに関しては彼に任せれば大丈夫です。しかしそんなミリューだって森を開拓した経験はない。それはもう一人の料理人アバンドンも同じ」

 どのような農作物を植えるべきか、それはこの塔の料理長たち、いつまでその仕事を務めてくれるのかわからないが、ミリューとアバンドンに任せたい。
 この塔の食に関することは、彼らの担当だ。それは私もサンチーヌと同じ意見。

 しかし農作物を植える前の段階、我々はまず森を切り拓かなければいけないわけだ。
 斧を握ったこともない。木を伐った後、その木はどうするのだ? 根っこは掘り出す必要があるのだろう、その方法は? 疑問だらけだ。

 「そのような経験のある有能な人物、この塔に居そうにありません」

 「こうなれば専門的な木こりを村から呼んで指導に当たらせるのがベストでしょう。しかしただ単に木を切ることが出来れば良いわけでもない。召使いたちを引っ張る力も必要。出来れば現場の監督者としても働いてもらわなければいけないのです」

 「ますます難しい。やる気のない召使いたちを叱咤激励して、厳しく辛い労働に向かわせられることが出来る人間なんて・・・」

 いるわけない。
 そんな人物、この塔に居るわけがない。

 新しいことを始めるのは大変で、何事もスムーズに進むものではないことはわかっているが、本当に気が重くなってくる。
 やはり、私がこの責務を引き受けなければいけないわけか。
 ただでさえ仕事が多い中、更に私の上に負担が圧し掛かって来ようとしている。

 しかし私の頭の中に、流れ星のように振り落ちてきた名前があった。
 バルザという名前だ。

 バルザ殿、伝説の騎士にして、天才的司令官。
 なぜなのか、そのような御方がこの塔に居る。
 そういえば、バルザ殿はこの塔の周りに砦を築きたいと言っておられた。そのための木材が必要だとも。
 私はそれを安請負しながら、いまだにその仕事を進めていない。
 まあ、この前の蛮族との厳しい戦いで、バルザ殿の部隊もそれどころではなかったことは事実であるが、しかしまたいつか蛮族たちは襲来するかもしれないのだから砦は必要。
 砦建設の現場指揮は自ら行うと仰られていた。
 ということはすなわち、バルザ殿はそのような土木事業に関する知識をお持ちだということ。
 砦を建設することが可能なのであれば、木々を伐採することなどにも通じているはず。いや、むしろそれはずっと容易なこと。

 「サンチーヌ殿、この問題は解決しそうです。僕はすっかり忘れていた。この塔にはバルザ殿がおられる!」

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