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シーズン2 私の邪悪な魔法使いの友人の弟子
第五章 5)魔族との交渉の秘訣
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「なるほど、プラーヌスらしい。昨日の口振りでは、この五日間は付きっ切りで指導するのかと思ったけど」
違ったのかとカルファルは冷たく笑う。しかもあと四日とはな。
「じゃあ、私はどうすればいいのよ?」とアリューシア。
「彼が言うには、このくらいの魔族ならば独力で何とかなるとか。課題を甘くしてやったのだから、独りで切り抜けろと・・・」
「そんなあ」
私のその言葉を聞いて、アリューシアは泣き言を言いかける。
しかし彼女はすぐに顔を上げた。
「わ、わかった。これで覚悟は決まった。昨日までは、もしかしたら充分かもしれないって思ってたもん。この五日間、プラーヌス様に指導してもらえるなら、弟子入りが叶わなくても別にいいって。・・・でも、課題をクリアーしなければ、指導を受けられないわけね」
だったら、何が何でもやってみせるわ!
アリューシアは小さな声であったが、断固とした口調でそう宣言した。
「言葉の軽い女だな。お前の覚悟とは何だよ? 腕を切るのか? 足を切るのか? 片目を潰すのか? 何か苦しみか痛みを背負って、魔族の気を惹くつもりか? たとえ万が一、それで魔族が振り向いたとしても、奴らは契約の際、更に要求してくるだろう。失うものはそれだけでは済まないってことだ。それでもやるのか?」
「うるさいわね! 実力で勝ち取るわ。魔法言語をもっと勉強して、それの扱いが上手くなれば魔族は、私に興味を持ってくれるんでしょ? 今日から締め切りの日まで、眠らないでずっと勉強するから」
「その程度がお前の覚悟か。やはり口だけのようだな」
カルファルはアリューシアの言葉を鼻で笑った。「そんなことでは、絶対にこの魔族と契約することは不可能だ」
「うるさいわね、部外者はここから出ていってよ!」
「部外者だって? 俺にそんな口を聞いていいのか? こうなればお前は俺に頼るしかないはずだけど? 俺が魔法言語を教えてやるよ」
「誰があんたなんかに頼るもんですか!」
「す、すいません」
このときノックの音がして扉が開いた。扉の隙間から顔を覗かせたのはシュショテだった。
私は思わず彼の顔を見て、傍目にもいぶかしがられるくらい動揺してしまう。しかし幸いなことに、アリューシアもカルファルも、私を注視していなかった。
「えーと、シャグラン様から大事な話があるとアビュさんが言われ、ここを尋ねるようにと・・・」
「何だって?」
ああ、私がシュショテの問題に後ろ向きなのを見て取って、アビュがこのように仕向けたんだろう。
シュショテも何だか困りきったような表情をしていた。この部屋に嫌々来たという表情なのだ。
しかしそれには別の原因があるようだ。
アリューシアである。昨日、シュショテはこの部屋で彼女に散々な扱いを受けていた。
彼はきっとアリューシアが苦手。実際、シュショテはアリューシアのことを見ない振りをしている。
「ちょうどいいところに来たわね!」
しかしシュショテを見つけたアリューシアは彼に近づいてゆく。「教えなさいよ、魔族との交渉の秘訣。あんたは凄い魔族と契約したんでしょ?」
「え?」
「あなたがやったズルを教えなさいって言ってるの」
シュショテは困惑している。一方、私は胸を撫で下ろした。シュショテがアリューシアに捉まったから、しばらくは彼と向き合わずに済むだろう。
「だ、だから、ズルなんてしていません」
「じゃあ、どうしてあんたみたいなガキが、あんなにレベルの高い魔族と契約を結べたのよ」
「それは・・・、た、多分、運が良かったんです」
「運?」
「・・・は、はい」
「運でどうにかなるほど、魔法が甘いものじゃないことくらいわかってるわ、どうやって契約したのか正直に教えなさい!」
違ったのかとカルファルは冷たく笑う。しかもあと四日とはな。
「じゃあ、私はどうすればいいのよ?」とアリューシア。
「彼が言うには、このくらいの魔族ならば独力で何とかなるとか。課題を甘くしてやったのだから、独りで切り抜けろと・・・」
「そんなあ」
私のその言葉を聞いて、アリューシアは泣き言を言いかける。
しかし彼女はすぐに顔を上げた。
「わ、わかった。これで覚悟は決まった。昨日までは、もしかしたら充分かもしれないって思ってたもん。この五日間、プラーヌス様に指導してもらえるなら、弟子入りが叶わなくても別にいいって。・・・でも、課題をクリアーしなければ、指導を受けられないわけね」
だったら、何が何でもやってみせるわ!
アリューシアは小さな声であったが、断固とした口調でそう宣言した。
「言葉の軽い女だな。お前の覚悟とは何だよ? 腕を切るのか? 足を切るのか? 片目を潰すのか? 何か苦しみか痛みを背負って、魔族の気を惹くつもりか? たとえ万が一、それで魔族が振り向いたとしても、奴らは契約の際、更に要求してくるだろう。失うものはそれだけでは済まないってことだ。それでもやるのか?」
「うるさいわね! 実力で勝ち取るわ。魔法言語をもっと勉強して、それの扱いが上手くなれば魔族は、私に興味を持ってくれるんでしょ? 今日から締め切りの日まで、眠らないでずっと勉強するから」
「その程度がお前の覚悟か。やはり口だけのようだな」
カルファルはアリューシアの言葉を鼻で笑った。「そんなことでは、絶対にこの魔族と契約することは不可能だ」
「うるさいわね、部外者はここから出ていってよ!」
「部外者だって? 俺にそんな口を聞いていいのか? こうなればお前は俺に頼るしかないはずだけど? 俺が魔法言語を教えてやるよ」
「誰があんたなんかに頼るもんですか!」
「す、すいません」
このときノックの音がして扉が開いた。扉の隙間から顔を覗かせたのはシュショテだった。
私は思わず彼の顔を見て、傍目にもいぶかしがられるくらい動揺してしまう。しかし幸いなことに、アリューシアもカルファルも、私を注視していなかった。
「えーと、シャグラン様から大事な話があるとアビュさんが言われ、ここを尋ねるようにと・・・」
「何だって?」
ああ、私がシュショテの問題に後ろ向きなのを見て取って、アビュがこのように仕向けたんだろう。
シュショテも何だか困りきったような表情をしていた。この部屋に嫌々来たという表情なのだ。
しかしそれには別の原因があるようだ。
アリューシアである。昨日、シュショテはこの部屋で彼女に散々な扱いを受けていた。
彼はきっとアリューシアが苦手。実際、シュショテはアリューシアのことを見ない振りをしている。
「ちょうどいいところに来たわね!」
しかしシュショテを見つけたアリューシアは彼に近づいてゆく。「教えなさいよ、魔族との交渉の秘訣。あんたは凄い魔族と契約したんでしょ?」
「え?」
「あなたがやったズルを教えなさいって言ってるの」
シュショテは困惑している。一方、私は胸を撫で下ろした。シュショテがアリューシアに捉まったから、しばらくは彼と向き合わずに済むだろう。
「だ、だから、ズルなんてしていません」
「じゃあ、どうしてあんたみたいなガキが、あんなにレベルの高い魔族と契約を結べたのよ」
「それは・・・、た、多分、運が良かったんです」
「運?」
「・・・は、はい」
「運でどうにかなるほど、魔法が甘いものじゃないことくらいわかってるわ、どうやって契約したのか正直に教えなさい!」
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