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シーズン2 私の邪悪な魔法使いの友人の弟子
第三章 9)香水の香りを漂わせている男
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サンチーヌはまだ塔を見て廻りたいと言うので、途中で別れ、私ひとりだけ執務室に帰った。
執務室。何とも甘美な響きである。私は軽い足取りでその部屋に向かう。
しかしその部屋があるはずの階層に戻ってきたのだけど、どの扉が自分の執務室の扉なのか、わからなくなった。
中央のホールには似たような部屋がいくつもあり、外からではまるで見分けがつかないのだ。
「シャグランの執務室」とでも書かれた表札が必要かもしれない。いや、すぐに設置しよう。
私は何度か開ける扉を間違えて、ようやく執務室の扉を見つけた。
しかし部屋に入った瞬間、またもや間違えてしまったのかと思った。
部屋の中には先程、倉庫から運び入れたばかりの机や椅子、戸棚が置かれている。それには確かに見覚えがある。
しかし部屋に誰かいるのだ。私のデスクの上に足を投げ出し、腕を組んで座っている男が。
エドガルかドニかと思った。しかし彼らが、そのような態度を取るわけがない。
知らない男だ。召使いでもない。服装や、その余りに横柄な態度など、我が塔で働く召使いたちとはまるで色合いが違う。
長い髪が肩まで垂れている。艶やかな黒髪だった。
少し日焼けしているが肌は白いほうだろう。口元に薄い髭を蓄えている。
光沢のある革のチェニック。刺繍の入った白いシャツの襟は高い。
かなり上等な衣服に見える。肩から斜めにベルトをしているから、腰に剣でも下げているのだろうか。指には指輪が見えた。甘い香水の匂いも漂ってくる。
伊達男。そんな印象の男だ。
男は昼寝でもしているのか、私が部屋に入ってきても気づかず、目を閉じたままだった。
何だかその寝顔には妙な色気があった。楽しい夢を見ているのだろうか、口元がニッコリとほころんでいる。
しかし、はっきり言って苦手なタイプだ。自分の身なりを飾り立てることに最大の努力を傾ける男というのは、どうも苦手である。
まあ、世の中の多くの男性が、このような同性を好きなはずがない気もするが。
「えーと?」
私はその男に声を掛けた。「多分、この机は僕のもので。今朝、運び入れたとはいえ、見知らぬ人の昼寝のために使われるのは心外で」
私の声が聞こえたようだ。男は眩しそうに目を開けた。
そして私を見てきた。
「よっ」
男は意表を突くくらいに気さくな態度で私に声を掛けてきた。「随分、待ったぞ。シャグランだろ、あんた?」
なかなか愉快な夢を見たぜ。そんなことを言いながら男は伸びをする。
「え? まあ・・・」
「プラーヌスを除くと、ここで一番偉いのがシャグランだって聞いたんだけどね」
男は依然として机の上に足を投げ出したまま、ニヤリと笑みを浮かべてきた。「なあ、そうだろ?」
確かに私はこの塔のナンバー2である。どこで得たのか知らないが、彼の情報は間違ってはいない。
「だったらカルファルが来たと、プラーヌスに伝えてきてくれないか。それと長旅で疲れた。食事と飲み物が欲しい。しばらくこの塔で厄介になるつもりなので、部屋も用意してくれ」
男はとてつもなく横柄な態度で私に命じてくる。
執務室。何とも甘美な響きである。私は軽い足取りでその部屋に向かう。
しかしその部屋があるはずの階層に戻ってきたのだけど、どの扉が自分の執務室の扉なのか、わからなくなった。
中央のホールには似たような部屋がいくつもあり、外からではまるで見分けがつかないのだ。
「シャグランの執務室」とでも書かれた表札が必要かもしれない。いや、すぐに設置しよう。
私は何度か開ける扉を間違えて、ようやく執務室の扉を見つけた。
しかし部屋に入った瞬間、またもや間違えてしまったのかと思った。
部屋の中には先程、倉庫から運び入れたばかりの机や椅子、戸棚が置かれている。それには確かに見覚えがある。
しかし部屋に誰かいるのだ。私のデスクの上に足を投げ出し、腕を組んで座っている男が。
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知らない男だ。召使いでもない。服装や、その余りに横柄な態度など、我が塔で働く召使いたちとはまるで色合いが違う。
長い髪が肩まで垂れている。艶やかな黒髪だった。
少し日焼けしているが肌は白いほうだろう。口元に薄い髭を蓄えている。
光沢のある革のチェニック。刺繍の入った白いシャツの襟は高い。
かなり上等な衣服に見える。肩から斜めにベルトをしているから、腰に剣でも下げているのだろうか。指には指輪が見えた。甘い香水の匂いも漂ってくる。
伊達男。そんな印象の男だ。
男は昼寝でもしているのか、私が部屋に入ってきても気づかず、目を閉じたままだった。
何だかその寝顔には妙な色気があった。楽しい夢を見ているのだろうか、口元がニッコリとほころんでいる。
しかし、はっきり言って苦手なタイプだ。自分の身なりを飾り立てることに最大の努力を傾ける男というのは、どうも苦手である。
まあ、世の中の多くの男性が、このような同性を好きなはずがない気もするが。
「えーと?」
私はその男に声を掛けた。「多分、この机は僕のもので。今朝、運び入れたとはいえ、見知らぬ人の昼寝のために使われるのは心外で」
私の声が聞こえたようだ。男は眩しそうに目を開けた。
そして私を見てきた。
「よっ」
男は意表を突くくらいに気さくな態度で私に声を掛けてきた。「随分、待ったぞ。シャグランだろ、あんた?」
なかなか愉快な夢を見たぜ。そんなことを言いながら男は伸びをする。
「え? まあ・・・」
「プラーヌスを除くと、ここで一番偉いのがシャグランだって聞いたんだけどね」
男は依然として机の上に足を投げ出したまま、ニヤリと笑みを浮かべてきた。「なあ、そうだろ?」
確かに私はこの塔のナンバー2である。どこで得たのか知らないが、彼の情報は間違ってはいない。
「だったらカルファルが来たと、プラーヌスに伝えてきてくれないか。それと長旅で疲れた。食事と飲み物が欲しい。しばらくこの塔で厄介になるつもりなので、部屋も用意してくれ」
男はとてつもなく横柄な態度で私に命じてくる。
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