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シーズン2 私の邪悪な魔法使いの友人の弟子
第一章 21)一か月の経費
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「いつもと違う種類の仕事に精を出したせいか、とてつもなくお腹が空いたよ」
既にプラーヌスは応接の間にいた。羊皮紙に何か書き込みながら、私を待っていたようだ。「今日、請け負った仕事を全てこなせば、すぐに手に入る収入はこれだけだ。月々入ってくる、収入の見込みがこれだけ」
どうだ、シャグラン、なかなかの金額だろ?
プラーヌスが自慢げに私に見せてくる。
「ほ、本当かい!」
どこかの街の、一月の予算だと言われても納得するくらいの金額である。
人口が五千から一万くらいの街。そんなレベルの街が集める税金がこれくらいではないだろうか。
「うむ、僕も想像以上で驚いている。もちろんこれを一カ月で稼ぎ出すのは不可能だ。そんなに働くつもりはないからね。しかしその気になれば手に入ることは確か。しかもまだまだ明日以降も、客は到着するはずだ。この程度で終わらないとも言える」
プラーヌスは金銭に執着するタイプでもないだろう。何と言っても魔法使いなのだから、貯蓄などに興味はないはずである。
しかし使うことは大好きのようだし、お金を稼ぐことに嫌悪感をまるで抱いていない様子。お金の計算をしているプラーヌスは本当に楽しそうに見える。
「シャグラン、この塔を維持するのに必要な一ヶ月の経費を教えておこう。これから君に全面的に任せなければいけないのだから」
プラーヌスが言ってきた。「この塔に到着してすぐに、食料調達している者に示された数字だ」
プラーヌスはそう言って、さっきの数字の下に新しい数字を書き込んだ。
「ほとんどが食費のようだね。それと蝋燭や油、衣料品など、消耗品の諸経費だ」
召使いたちには、一切の給料を払っていないはずだ。しかしその代わりに三食の食事と、塔で生活する権利を提供している。
ここの召使いとして生まれただけで、仕事をどれだけ熱心にしようが、適当にサボっていようが、雨露を凌ぐことも出来るし、食べる物にも困らないのである。
「ふーん、これが多いのか少ないのかよくわからないな」
プラーヌスの書いた数字を見て、私はそんな感想を抱いた。
先程、プラーヌスが自慢げに見せてきた数字に比べると小さな金額ではある。とはいえ常識からすると、かなりの高額だ。なにせ、千人を超す召使いを養うために必要な経費なのだから、
「うん、僕もよくわからない。いずれにしろ、これ以上のお金を稼がなければ、今の塔の人員を維持するのは不可能ってわけだよ。今の塔には無駄な召使いが多いから、近いうちに大勢の余剰人員を追い出すつもりだけど、蛮族の襲来に備えて、更に多くの兵を雇う必要もある。金はいくらあっても困るものではない。稼ぐ機会があれば、しっかりと稼いでおくべきさ」
「わかった」
私は何度も深く頷いた。
彼がお金を稼いでいかなければいけない必要があることは十分に理解出来た。そしてこの塔に不要な召使いを削らなければいけない必要性も。
しかしそれ以上に、これだけの莫大な金額の責任者にならなければいけないことが、心に重くのしかかってきた。これはかなり大変な仕事である。それを私が全て、担わなくてはいけないとは。
「ところで、食事はまだかな?」
もうお金のことはどうでもいい。そんなことを言わんばかりに、プラーヌスはテーブルの上の羊皮紙を端に押しやった。「僕の空腹感は限界に近いよ」
「ああ、そのことで実は話しがあるんだけど・・・」
既にプラーヌスは応接の間にいた。羊皮紙に何か書き込みながら、私を待っていたようだ。「今日、請け負った仕事を全てこなせば、すぐに手に入る収入はこれだけだ。月々入ってくる、収入の見込みがこれだけ」
どうだ、シャグラン、なかなかの金額だろ?
プラーヌスが自慢げに私に見せてくる。
「ほ、本当かい!」
どこかの街の、一月の予算だと言われても納得するくらいの金額である。
人口が五千から一万くらいの街。そんなレベルの街が集める税金がこれくらいではないだろうか。
「うむ、僕も想像以上で驚いている。もちろんこれを一カ月で稼ぎ出すのは不可能だ。そんなに働くつもりはないからね。しかしその気になれば手に入ることは確か。しかもまだまだ明日以降も、客は到着するはずだ。この程度で終わらないとも言える」
プラーヌスは金銭に執着するタイプでもないだろう。何と言っても魔法使いなのだから、貯蓄などに興味はないはずである。
しかし使うことは大好きのようだし、お金を稼ぐことに嫌悪感をまるで抱いていない様子。お金の計算をしているプラーヌスは本当に楽しそうに見える。
「シャグラン、この塔を維持するのに必要な一ヶ月の経費を教えておこう。これから君に全面的に任せなければいけないのだから」
プラーヌスが言ってきた。「この塔に到着してすぐに、食料調達している者に示された数字だ」
プラーヌスはそう言って、さっきの数字の下に新しい数字を書き込んだ。
「ほとんどが食費のようだね。それと蝋燭や油、衣料品など、消耗品の諸経費だ」
召使いたちには、一切の給料を払っていないはずだ。しかしその代わりに三食の食事と、塔で生活する権利を提供している。
ここの召使いとして生まれただけで、仕事をどれだけ熱心にしようが、適当にサボっていようが、雨露を凌ぐことも出来るし、食べる物にも困らないのである。
「ふーん、これが多いのか少ないのかよくわからないな」
プラーヌスの書いた数字を見て、私はそんな感想を抱いた。
先程、プラーヌスが自慢げに見せてきた数字に比べると小さな金額ではある。とはいえ常識からすると、かなりの高額だ。なにせ、千人を超す召使いを養うために必要な経費なのだから、
「うん、僕もよくわからない。いずれにしろ、これ以上のお金を稼がなければ、今の塔の人員を維持するのは不可能ってわけだよ。今の塔には無駄な召使いが多いから、近いうちに大勢の余剰人員を追い出すつもりだけど、蛮族の襲来に備えて、更に多くの兵を雇う必要もある。金はいくらあっても困るものではない。稼ぐ機会があれば、しっかりと稼いでおくべきさ」
「わかった」
私は何度も深く頷いた。
彼がお金を稼いでいかなければいけない必要があることは十分に理解出来た。そしてこの塔に不要な召使いを削らなければいけない必要性も。
しかしそれ以上に、これだけの莫大な金額の責任者にならなければいけないことが、心に重くのしかかってきた。これはかなり大変な仕事である。それを私が全て、担わなくてはいけないとは。
「ところで、食事はまだかな?」
もうお金のことはどうでもいい。そんなことを言わんばかりに、プラーヌスはテーブルの上の羊皮紙を端に押しやった。「僕の空腹感は限界に近いよ」
「ああ、そのことで実は話しがあるんだけど・・・」
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