私の邪悪な魔法使いの友人

ロキ

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シーズン1 魔法使いの塔

第八章 1)契約完了

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 遂に来るべき時が来た。この塔を魔界から支配しているという魔族と、プラーヌスは契約を済ませたようなのだ。

 彼は深夜に私の部屋に現れた。
 そして私を叩き起こして言ってきた。

 「シャグラン、遂に僕たちの苦労は報われたぞ。契約が完了したんだ!」

 私は眠たい目をこすりながら、彼を呆然と見つめる。

 「寝ている場合じゃない。君にも見せてやる。正式な契約を結ぶ儀式だ。顔を洗い、頭をすっきりさせ、僕の部屋に来るんだ!」

 私はプラーヌスの言う通り顔を洗い、上着を羽織って、彼の部屋に向かう。
 突然、叩き起こされ、まだちゃんと目覚めていなかったから、プラーヌスが本当に深夜に私の部屋にやってきたのか、それとも夢の中の出来事だったのか確信が持てなかった。
 しかしプラーヌスの残り香が部屋に漂っていた。
 彼が私の背中を叩いた感触も残っている。
 それに彼が蹴っ飛ばした私の靴が、片方ひっくり返っている。
 間違いなく、プラーヌスは部屋に現れたのだろう。

 面白いものを見せてやるから、僕の部屋に来いと言われ、のこのこと部屋に行くのは癪である。
 しかも私はぐっすりと眠っていたのだ。
 プラーヌスにとっては真昼のような時間帯かもしれないが、普通の人間にとっては深夜。彼の行為は常識がないとしか言いようがないだろう。いくら友人相手でも許されることではない。

 しかし私の好奇心がそれに打ち勝った。
 魔族との儀式なんて、なかなか興味深いではないか。
 それに、これまで一度も彼の部屋に足を踏み入れたことがなかった。
 この塔の隅々まで歩きまわっている私であるが、プラーヌスの部屋がある西の塔だけは立ち入り禁止だったのだ。
 一度でいいから、彼の部屋に行ってみたかったのである。
 そういうわけで、私は眠たい目をこすりながら彼の部屋に向かった。

 東の回廊を通り、中央の塔を抜け、プラーヌスの私室のある西の塔の前に到着した。
 いつもは固く閉じられているその扉が開いている。
 やはりプラーヌスは私の部屋に現れて、自分の部屋に招待してくれたのだ。

 私はその鋼鉄製の扉を通り、回廊を進んだ。
 真夜中なので当然、回廊は真っ暗であるが、私の住んでいる東の塔の回廊よりも、更に闇が根深い気がする。
 回廊に高窓があるが、そこから月も星も見えない。
 私の足元を照らすランタンの光も弱々しくて、心なしか元気がないようである。
 さすがにプラーヌスの私室がある西の塔の暗黒は、他の塔と比べようもないくらい深く暗いようだ。

 「さっさと来い、シャグラン。魔族は気が短いんだぞ!」

 そのとき闇の中からプラーヌスの声が聞こえた。「こんなに身支度に時間が掛かる男だとは思わなかったぞ」

 「このまままっすぐ行けばいいのかい?」

 私の声も回廊にこだまする。

 「ああ、そうだよ」

 すぐ傍でプラーヌスの声がした。
 私はビクリとして声のほうを向く。

 「こっちだ」

 闇の中、間近で光るプラーヌスの薄青い瞳が確認出来た。「僕の部屋に入るのは初めてだったね?」

 「あ、ああ」

 「まだちゃんと片付いていないけど。床に置いてあるものを蹴っ飛ばしたりしないでくれよ。全部大切なものなんだ」

 「うん」

 「戸棚が欲しいな。たくさんの引き出しのついたのがいい。本棚も。大きなテーブルも欲しい。それに合った椅子も。早くルーティアの街に買い物に行こう、シャグラン」

 「そうだね」

 「そのために、この契約を成功させる。ここだ」

 プラーヌスは扉を開けた。
 扉が開いた瞬間、蒼白い光が私の目を射た。
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