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わたしは、魔法使い!

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 不満げな態度を露わにしながら悪態をつくアレックス。それをなんとか宥めるガストールとナターシャ。

 傍からその様子を引き気味に見ていた。この三人の関係性がよく分からないけれど、手に負えないわがまま息子と、その父母といった感じにも見えてくる。ひたすらつんけんとした態度のアレックスだけど、ガストールには一目置いているようで、なんだかんだで激しい言い争いにはならない様子だ。

 なんとなく自分の発言が揉め事の発端のような気もする。だけど決断するのは各自の責任だ。そもそもわたしにとっては他人事。ジロジロ見ているのも気が引けるし、仲裁に入るのも場違いだ。体の向きを変えて川の流れをジッと眺める。ツカサは既に川の方を見て、飛び跳ねる魚を目で追っていた。

 川原で男の子が石を投げてぴょんぴょんと水面をはねていく映像が、ふと頭に浮かんだ。

 なんだっけあれ? ああ、水切りだ。

 そんなことを考えていると。

 パン!!

 ガストールが景気良く手を叩いた。

「よし。決まりだ。出発するぞ」

 どうやら街に向かうことで合意した様子。

 ということで、ドラゴンと戦った川原を出発することになった三人とわたしたち。ガストールたちが腰を上げて荷物をまとめ出したので、ツカサと共に立ち上がる。

「それにしても何なんだ、ありゃぁ……」

 ガストールがそう言いながら見上げた先にあるのは、わたしが魔法で出した高さ30メートルほどの鉄の柱だ。作りかけの神殿のように、20本近くある柱が円形に立ち並んだままになっている。

「凄いわね……。魔法でこんなことができるものなの? 土属性? 地面を固めてせり上げたとか?」

 首を上下させながら、ナターシャが尋ねる。

「幻影魔法です」

 ハインケラが確かそんなことを言っていた。わたしのこの魔法は幻影魔法と言うのだと。

「え? 幻影魔法って何? 初めて聞いたわ」

 ……。

 幻影魔法もメジャーじゃなかった……。ハインケラの言葉すら信用できなくなってきた。アルジェラ様の一味はとことん怪しい気がしてきた。そんなことを思いながら、鉄の柱に向かって意味ありげに手をかざす。

「鉄の柱、消えろ!」

 パパパパパパパパパパ~ンッツ!!

 乾いた音と紙吹雪のように煌めく光が飛び散って、柱が一斉に消えた。

「うわ~。綺麗ね」

 感嘆の声をあげたのはナターシャ。ガストールはポカンとしてその光景を見ている。アレックスもその表情は分からないけど、動きを止めてそれを見ていた。

「ほら、幻なのです」

 そんな三人に対し、適当な解説をした。自分でもなんとなく、それらしい気がしてくるから不思議だ。

「随分変わったことができるのね。あなた。何者なの?」

 ナターシャに言われて、ふと思う。これは変わったことなのだろうか? わたしがこれまでに得た少ない知識の中でも、この世界で魔法は一般的に普及している筈だ。だから魔法で出来る事に対して変わっているとか、そういう言い方は、おかしくないか。それに、そもそも魔法ってのはそういうものだろう。だから魔法というのだ。そして、わたしは魔法が使える。

 そう。わたしは、魔法使い!

 そんな言葉を思い浮かべ、満面の笑みを讃えて大きく頷いた。

「わたしは、魔法使いです!」
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