異世界で『魔法使い』になった私は一人自由気ままに生きていきたい

わたしたちは迷子です

　清らかな川の流れを背景に、川辺の岩に腰をかけている五人。美亜とツカサ。そしてこの世界で美亜が初めて出会った人間、ガストール、ナターシャ、アレックス。

　自己紹介を終え多少のやりとりをしつつ、話すこともなくなった。何となく場の雰囲気に呑まれて腰を落ち着けてしまったが、長々とご歓談するつもりはない。「旅は道連れ……」とか言い出される前に、知りたいことだけ聞いて、さっさとこの場を立ち去りたい。話の流れとか気にするのも面倒だ。唐突でも目的を果たすべく質問を切り出してしまおう。

「この川を下って行けば、人里とかがあるのでしょうか？」

「ああ？　あるにはあるが、かなりの距離があるぞ。ところで、お前さんたちは、迷子なのか？」

　半裸のマッチョオヤジ、ガストールが質問に答えると同時に尋ねてきた。

　わたしは迷わず頷く。事実、思いっきり迷子だし。

「一体どうして……。何の荷物も持たずにこんな所に。しかも魔境の谷の更に奥の方から出てこなかったか？」

　ガストールに言われたものの、地理的なことは当然わからない。しかし、とにかく辺境の地にいるらしいことは薄々感じていた。

「そうなんですか。あちらは魔境の谷と言うんですか……。……その……。変な話かもしれませんが、実はよく状況が分からないんです。転移させられて、ここに連れてこられたので……」

「……て、転移だと……」

　初めて金髪の貴公子、アレックスが口を開いた。それまではダンマリを決め込んだような態度であったのに、今度は髪をかきあげて苛立つような態度。いちいちリアクションがうざい……。

「貴様たちが王宮の関係者とは思えない……。だとすれば……、まさか、魔族の手のものか！？」

　更にそう付け加えて、鋭い視線で睨みつけてきた。しかも、同時に傍に置いてあった大剣に手を添えたのは、なぜ！？