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獣人爆誕

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 高価な宝石の様なネックレスを渡された美亜。何の意味があるのかは分からないが、大人しくアルジェラ様の指示に従い首につける。

「それで、ツカサは……」

 要求をのんだからには、すかさず交渉することを忘れないしたたかな美亜。

「あの聖獣が気になるか」

 そう言うや否や、わたしのすぐ側に魔法陣が現れた。そこにツカサがいつものタキシード姿で正座した状態で現れた。

「あ。ミア」

 出現するなり、とぼけた感じで呟いたツカサ。

「興味深いな。聖獣が人間の姿になれるというのは」

 そう言いながら、アルジェラ様が少し身を乗り出すようなポーズでツカサを見ている。

 ハインケラさんは、幻影魔法ってことで理解してたみたいだけど。やっぱり違ったんだろうか。どちらかというと、違うと思うけど……。

「アルジェラ様ぁぁぁぁぁあああああ!! なんでぇぇぇ!!」

 遠くの方から甲高い声がした。振り向くと、こちらに目がけて一直線に飛んでくるエメラルド色の髪の少女、クリラの姿があった。

 クリラは祭壇に到着するや否や、ツカサに背中から抱きついた。

 あれれ?? 空中を一瞬で飛んできた……。ここに来るまで二十年かかるとか言ってた件はどうなった?? 階段を登るとそうなるの? 人間だとそうなるの? それとも嘘つかれた??

 思わず疑問に思ってしまった。その隣でツカサに抱きついたクリラが、アルジェラ様に食ってかかる。

「この子はクリラのモノなの! 酷いじゃないですかアルジェラ様。なんでクリラから取り上げるのですかぁ!?」

「この世界にお前だけに属するモノなど存在しない」
 
「やだ、やだ。この子はあたいのモノなの。この子はあたいが発見した新種よ。聖獣だけど人の姿になれるの。あたいはこの種をここに『獣人』と名付けるわ!!」

 獣人。

 美亜が魔法で生み出し、クリラが発見したと主張するその奇異な存在。これまでこの世界には、獣人という種族は存在していなかったのである。始祖の魔人であるクリラが今この瞬間それを唱えたことで、この世界に獣人と呼ばれる種族が爆誕したのであった。

「聖獣よ。お前はどうしたい」

 アルジェラ様が、ツカサに尋ねる。

「僕は、ミアと一緒にいたいな」

 素直に発言するツカサ。ほとんど何も考えていない。一方でツカサのその発言にちょっとキュンときた美亜であった。

「にゃにぃぃぃ!! このクリラ様の臣族になることを拒んで、この小娘と共に外界にくだるというの!?」

 烈火の如く叫び出したクリラ。その言葉に対して、何のこだわりもなく、ツカサはこくりと頷く。

「うううう……、うえっぇぇぇ……、お前はクリラのことが嫌いなの……。クリラより、この女を選ぶの……。……ひっく……。ぐしっ……」

 クリラはそう言いながら、顔をくしゃくしゃにして泣き出した。

 うわわ、めんどくせぇ……。

 思わず心の中で漏らす美亜であった。
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