42 / 128
見ていたのはお前か!?
しおりを挟む
空中で言い合いをする二人の人間。白髪紳士とエメラルド色の髪の少女。エメラルド色の髪の方は、もしかしたら少女のようなお婆ちゃんかもしれない。
空中を見上げて思わず棒立ちになっていた。得体の知れない存在を前に、ここは逃げるべきなんじゃないかという考えが脳裏をよぎる。しかし逃げるにしても、空中を浮遊する相手に対して、草原を走り回ってもしょうがない。とりあえず目と鼻の先にあるマンションの中に退避するのが、最も安全策じゃないだろうか。
傍に立つツカサのタキシードの袖を掴んで、ちょいちょいと引っ張る。視線でマンションの方へツカサを誘導しようとしたけれど、ツカサはそんなわたしを見てキョトンとしている。
だめだこりゃ……。
最悪の場合、魔法でこの場にシェルターでも出して中に閉じこもるか? それとも今のうちに強化ガラスのドームとか出しておいた方が良いだろうか? いやしかし、一瞬で身体機能を麻痺させる光線銃とか、気がついたら別の場所に連れ去られる物体転送装置とか、そんなモノを使われた場合、果たして防ぎ切れるであろうか……。
そんな風に美亜がほとんど宇宙人とか未来人とかとの遭遇レベルで考え、危機感を募り始めた時、上空から声が飛んできた。
「魔眼でアルジェラ様を見ていたのは、お前か」
声をかけてきたのは、白髪の紳士の方だ。
『お前か』は、わたしのことを指しているのだろうか。ちょっと悩んだ。しかし、その質問を構成する単語が意味不明だ。意味不明ながらも『見ていた』と言われて、身に覚えがなくはない。もしかすると望遠鏡で覗いていたアレのことなんじゃないだろうかと思いかけた。そう、昨日発見した高い山の頂に浮いていた目玉のようなアレのことだ。アレは見てはいけないものだったんだろうか。まさか相手は、ガンをつけたとか、つけないとか、そのレベルで物申しているのだろうか。だとすれば、とんでもない言いがかりだ。しかし、このまま無言でいることが、肯定と取られるのか、否定と取られるのか。そして、その答え如何で一体どうなってしまうのか。
「まあ良かろう。アルジェラ様がお呼びだ。我らについて来るがよい」
白髪紳士がそう言いながら、マントを翻す。そして、一瞬のうちにその場所から遥か彼方に飛び去って行った。次いで、エメラルド色の髪の少女だかお婆ちゃんだかも白髪紳士と同じ方向へ、これまた一瞬のうちに飛び去って行ってしまった。
空中を見上げて思わず棒立ちになっていた。得体の知れない存在を前に、ここは逃げるべきなんじゃないかという考えが脳裏をよぎる。しかし逃げるにしても、空中を浮遊する相手に対して、草原を走り回ってもしょうがない。とりあえず目と鼻の先にあるマンションの中に退避するのが、最も安全策じゃないだろうか。
傍に立つツカサのタキシードの袖を掴んで、ちょいちょいと引っ張る。視線でマンションの方へツカサを誘導しようとしたけれど、ツカサはそんなわたしを見てキョトンとしている。
だめだこりゃ……。
最悪の場合、魔法でこの場にシェルターでも出して中に閉じこもるか? それとも今のうちに強化ガラスのドームとか出しておいた方が良いだろうか? いやしかし、一瞬で身体機能を麻痺させる光線銃とか、気がついたら別の場所に連れ去られる物体転送装置とか、そんなモノを使われた場合、果たして防ぎ切れるであろうか……。
そんな風に美亜がほとんど宇宙人とか未来人とかとの遭遇レベルで考え、危機感を募り始めた時、上空から声が飛んできた。
「魔眼でアルジェラ様を見ていたのは、お前か」
声をかけてきたのは、白髪の紳士の方だ。
『お前か』は、わたしのことを指しているのだろうか。ちょっと悩んだ。しかし、その質問を構成する単語が意味不明だ。意味不明ながらも『見ていた』と言われて、身に覚えがなくはない。もしかすると望遠鏡で覗いていたアレのことなんじゃないだろうかと思いかけた。そう、昨日発見した高い山の頂に浮いていた目玉のようなアレのことだ。アレは見てはいけないものだったんだろうか。まさか相手は、ガンをつけたとか、つけないとか、そのレベルで物申しているのだろうか。だとすれば、とんでもない言いがかりだ。しかし、このまま無言でいることが、肯定と取られるのか、否定と取られるのか。そして、その答え如何で一体どうなってしまうのか。
「まあ良かろう。アルジェラ様がお呼びだ。我らについて来るがよい」
白髪紳士がそう言いながら、マントを翻す。そして、一瞬のうちにその場所から遥か彼方に飛び去って行った。次いで、エメラルド色の髪の少女だかお婆ちゃんだかも白髪紳士と同じ方向へ、これまた一瞬のうちに飛び去って行ってしまった。
10
お気に入りに追加
66
あなたにおすすめの小説
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
【本編完結】さようなら、そしてどうかお幸せに ~彼女の選んだ決断
Hinaki
ファンタジー
16歳の侯爵令嬢エルネスティーネには結婚目前に控えた婚約者がいる。
23歳の公爵家当主ジークヴァルト。
年上の婚約者には気付けば幼いエルネスティーネよりも年齢も近く、彼女よりも女性らしい色香を纏った女友達が常にジークヴァルトの傍にいた。
ただの女友達だと彼は言う。
だが偶然エルネスティーネは知ってしまった。
彼らが友人ではなく想い合う関係である事を……。
また政略目的で結ばれたエルネスティーネを疎ましく思っていると、ジークヴァルトは恋人へ告げていた。
エルネスティーネとジークヴァルトの婚姻は王命。
覆す事は出来ない。
溝が深まりつつも結婚二日前に侯爵邸へ呼び出されたエルネスティーネ。
そこで彼女は彼の私室……寝室より聞こえてくるのは悍ましい獣にも似た二人の声。
二人がいた場所は二日後には夫婦となるであろうエルネスティーネとジークヴァルトの為の寝室。
これ見よがしに少し開け放たれた扉より垣間見える寝台で絡み合う二人の姿と勝ち誇る彼女の艶笑。
エルネスティーネは限界だった。
一晩悩んだ結果彼女の選んだ道は翌日愛するジークヴァルトへ晴れやかな笑顔で挨拶すると共にバルコニーより身を投げる事。
初めて愛した男を憎らしく思う以上に彼を心から愛していた。
だから愛する男の前で死を選ぶ。
永遠に私を忘れないで、でも愛する貴方には幸せになって欲しい。
矛盾した想いを抱え彼女は今――――。
長い間スランプ状態でしたが自分の中の性と生、人間と神、ずっと前からもやもやしていたものが一応の答えを導き出し、この物語を始める事にしました。
センシティブな所へ触れるかもしれません。
これはあくまで私の考え、思想なのでそこの所はどうかご容赦して下さいませ。
政略結婚の約束すら守ってもらえませんでした。
克全
恋愛
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。
「すまない、やっぱり君の事は抱けない」初夜のベットの中で、恋焦がれた初恋の人にそう言われてしまいました。私の心は砕け散ってしまいました。初恋の人が妹を愛していると知った時、妹が死んでしまって、政略結婚でいいから結婚して欲しいと言われた時、そして今。三度もの痛手に私の心は耐えられませんでした。
【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
【完結】彼女以外、みんな思い出す。
❄️冬は つとめて
ファンタジー
R15をつける事にしました。
幼い頃からの婚約者、この国の第二王子に婚約破棄を告げられ。あらぬ冤罪を突きつけられたリフィル。この場所に誰も助けてくれるものはいない。
【完結】婚約破棄されたので、引き継ぎをいたしましょうか?
碧桜 汐香
恋愛
第一王子に婚約破棄された公爵令嬢は、事前に引き継ぎの準備を進めていた。
まっすぐ領地に帰るために、その場で引き継ぎを始めることに。
様々な調査結果を暴露され、婚約破棄に関わった人たちは阿鼻叫喚へ。
第二王子?いりませんわ。
第一王子?もっといりませんわ。
第一王子を慕っていたのに婚約破棄された少女を演じる、彼女の本音は?
彼女の存在意義とは?
別サイト様にも掲載しております
異世界の片隅で引き篭りたい少女。
月芝
ファンタジー
玄関開けたら一分で異世界!
見知らぬオッサンに雑に扱われただけでも腹立たしいのに
初っ端から詰んでいる状況下に放り出されて、
さすがにこれは無理じゃないかな? という出オチ感漂う能力で過ごす新生活。
生態系の最下層から成り上がらずに、こっそりと世界の片隅で心穏やかに過ごしたい。
世界が私を見捨てるのならば、私も世界を見捨ててやろうと森の奥に引き篭った少女。
なのに世界が私を放っておいてくれない。
自分にかまうな、近寄るな、勝手に幻想を押しつけるな。
それから私を聖女と呼ぶんじゃねぇ!
己の平穏のために、ふざけた能力でわりと真面目に頑張る少女の物語。
※本作主人公は極端に他者との関わりを避けます。あとトキメキLOVEもハーレムもありません。
ですので濃厚なヒューマンドラマとか、心の葛藤とか、胸の成長なんかは期待しないで下さい。
【完結】聖女にはなりません。平凡に生きます!
暮田呉子
ファンタジー
この世界で、ただ平凡に、自由に、人生を謳歌したい!
政略結婚から三年──。夫に見向きもされず、屋敷の中で虐げられてきたマリアーナは夫の子を身籠ったという女性に水を掛けられて前世を思い出す。そうだ、前世は慎ましくも充実した人生を送った。それなら現世も平凡で幸せな人生を送ろう、と強く決意するのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる