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第四章 アリス――鏡の中の
アリス――鏡の中の(1)
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白の女王は未来から過去へと向かって生きているのです。
ですから、未来のことを覚えています。過去のことはこれっぽっちも覚えていないのです。
そう、もしそうだったら、そうかもしれない。
仮にそうだったとしたら、そうなるでしょう。
ところがそうではないのだから、そうじゃなかったのです。
◆ ◆ ◆
直後のことはあまりはっきりとは覚えていません。
バラバラにされてしまったパズルのピースのように断片的で、途切れ途切れで曖昧で――。
平日午後のショッピングモールの衆人環視の中、果物ナイフを手にした『円城寺さん』の凶行を阻止せんと一歩踏み出すよりわずかに早く、あたしこと嬉野祥子は背後から優しく、けれども有無を言わさぬ力強さでしっかりと抱き留められてしまったのでした。
「間に。合った! ちょこ。駄目。いかせない!」
「はなして――はなしてください! 蛭谷さんが――蛭谷さんが――っ!!」
「駄目! ちょこ。怪我。したら。どうするの!」
息継ぎをするような途切れ途切れの台詞。
ふわりと甘く、くすぐったくなるような香りに包まれながらも、あたしは狂ったように身を何度も捩ります。
「はなして――はなしてくださいってば、美弥さんっ! あの人が――蛭谷さんが――!!」
「あの人の。命令! 絶対に。怪我なんて。させない」
「うあああ……! うああああああああああ……っ!」
何もできないなんて――ただ見ているだけだなんて!
身動き一つできず、止めることも助けることもできないもどかしさと歯痒さから、あたしは訳の分からない悲鳴に似た叫びを喉も裂けよとばかりに吐き出すことしかできません。
と――。
「てめぇ!?」「うるあっ!」
抱き合うように寄り添う『円城寺さん』と蛭谷さんを、複数の男性たちが取り囲んで――これはあとで知ったことでしたが、蛭谷さんの部下であるホテル従業員の方々だったそうです――文字どおり一斉に飛びかかったのです。そして無理矢理二人を引き剥がすと、なおも激しく暴れ狂う『円城寺さん』からてらてらと血に濡れたナイフを奪って冷たい床に組み伏せ、傷つき意識朦朧とする蛭谷さんを抱き支えて鼓舞するように声をかけている――そんなまるで映画のワンシーンのような非日常の光景を、涙で歪んだフィルター越しに眺めていたのです。
蛭谷さんをその腕に抱いているのは円城寺さん――まぎれもなく本物の――です。
円城寺さんの切れ長の垂れ下がった瞳は枯れることのない涙で濡れそぼっていました。
「どうして……どうして庇ったりしたんですか、蛭谷っ!」
「へ、へへへ。どうしてって、そりゃあ――」
蛭谷さんは円城寺さんを見つめ、照れ臭そうに笑うのです。
「お嬢――代行が俺たちにとって一等大事なお人だからですよ。でも、慣れねえこたぁするもんじゃありませんな。肝心なところで……ドジっちまいました。情けねえ……」
「でも……っ! だからってあなたがっ!」
「なぁに。おっ死ぬハメにはならんのじゃないですかね」
喘ぐようにそう言うと、蛭谷さんはシャツの下の血に染まったカットソーを震える手でめくり上げます。すると、幾重にも頑丈に巻かれた包帯、朱に染まったサラシが見えました。
「念入れて、久々にこいつを巻いてきましたから。代行にはまた叱られちまいそうですがね」
「蛭谷……すぐに救急車が到着します。諦めたら……駄目ですからね? あたし、怒ります」
円城寺さんの精一杯虚勢を張った命令を耳にした蛭谷さんは、苦笑を浮かべつつ彼女の瞳から絶え間なく溢れる涙を愛しいものに触れるような仕草で優しく指で拭います。しかしもう声も出す気力も湧かないようで、天井一点をじっと見つめたまま浅い息を繰り返すだけでした。
と――。
大のオトナ四人がかりで硬く冷たい床に張り付けられた『円城寺さん』は、まだ抵抗する力を緩めることなくもがき続け、もう決して届くことのない言葉を喚き続けていました。
「どうして分かってくれないの!? あたしたちは一つなのよ! 一つであるべきなのよ!」
その時です。
あたしの耳にそっと差し込まれた超高性能小型通信機から声が聴こえたのでした。
(――無理ね)
「あ――安里寿さん! 安里寿さんなんですね!? どうして――なんで――!?」
(――その話はあとで必ずしてあげるわ、祥子ちゃん。それよりも――)
昏く、冷え切ったようなその声。
安里寿さんはこう続けます。
(――正体がやっと分かったの。その子の本当の名前は、田ノ中幸江。一年前から行方不明で、家族から捜索願が出ていたわ。でも……間に合わなかった。本当に……ごめんなさい……)
安里寿さんが謝ることじゃ――その言葉は、何故か舌でもつれて出て来ませんでした。
やり場のない怒りを胸の内に燻らせたまま、あたしは止める美弥さんの手を強引に振りほどくと、意味不明の嘆きと叫びを上げ続ける田ノ中さんに近付いて、尖った眼で見下ろします。
「あなたの本当の名前は、田ノ中幸江さん……ですね?」
「違うわ! あたしはあたしよ! 円城寺杏子なのよ!」
噛みつくように言い返そうとしますが、しっかりと押さえつけられてはどうすることもできません。
「そんな子はもう何処にもいないわ! 気が弱くて、小心者で臆病で、他人の顔色ばかり窺って! 何処へ行ってもいじめられて蔑まれて! もうそんなくだらない人生なんてまっぴら! あたしはあたしなのよ!」
あたしとの会話を聞きつけた円城寺さんは眼を丸く見開き、たちまち蒼褪めました。
「え……? 幸江? あの幸江ちゃんなの? 小学校のテニス部で一緒だった、幸ちゃん?」
「違うわ、違うのよ、杏子! あたしはあなたなのよ! どうして分かってくれないのよ!」
田ノ中さんは涙を浮かべて必死に訴えかけます。
「……親の仕事の都合だなんて嘘まみれの理由で、あたしたちは引き離されてしまった。悲しかったわ、とっても。本当はね? 小心者で臆病な両親が、この街で生きていくことを諦めただけ、そんな心底くだらない理由だったの。あたしとあたしを取り巻く環境と感情に正面から向き合うこともせずに逃げただけ。いつだってそう。本音を隠して建前ばかり並べて……!」
激情にひたすら耐えるように唇を噛み、やがて田ノ中さんの切れた唇から血が床へと伝い落ちます。ですが、今にも爆発しそうだった怒りは唐突に消え失せ、笑みすら浮かんだのです。
「でも、仕方ないわよね。だってあれは、元々あたしの人生じゃなかったのだもの。あなたと、杏子と出会った時に、あたしはそれを確信したわ。どうしてって? 簡単な話でしょう?」
鬼相――そう呼んでも差し支えないほどの目を背けたくなる狂気の微笑。
「あたしが欲しかったもの、あたしが望むこと、あたしが夢見て憧れていた日々……そのすべてを持っていたのが、あなた――円城寺杏子だったんだもの。思わず目を疑った……奇跡だと思った。そしてこれこそが神が与えてくれた素晴らしい贈り物なのだと確信したわ! ようやくやっとあたしはあたしに出会えたのだから。きっとそうなるはずだった本来のあたしに!」
あとになって――美弥さんは教えてくれました。
次の瞬間、あたしが田ノ中さんの頬を、あらん限りの力で引っ叩いたのだということを。
ですから、未来のことを覚えています。過去のことはこれっぽっちも覚えていないのです。
そう、もしそうだったら、そうかもしれない。
仮にそうだったとしたら、そうなるでしょう。
ところがそうではないのだから、そうじゃなかったのです。
◆ ◆ ◆
直後のことはあまりはっきりとは覚えていません。
バラバラにされてしまったパズルのピースのように断片的で、途切れ途切れで曖昧で――。
平日午後のショッピングモールの衆人環視の中、果物ナイフを手にした『円城寺さん』の凶行を阻止せんと一歩踏み出すよりわずかに早く、あたしこと嬉野祥子は背後から優しく、けれども有無を言わさぬ力強さでしっかりと抱き留められてしまったのでした。
「間に。合った! ちょこ。駄目。いかせない!」
「はなして――はなしてください! 蛭谷さんが――蛭谷さんが――っ!!」
「駄目! ちょこ。怪我。したら。どうするの!」
息継ぎをするような途切れ途切れの台詞。
ふわりと甘く、くすぐったくなるような香りに包まれながらも、あたしは狂ったように身を何度も捩ります。
「はなして――はなしてくださいってば、美弥さんっ! あの人が――蛭谷さんが――!!」
「あの人の。命令! 絶対に。怪我なんて。させない」
「うあああ……! うああああああああああ……っ!」
何もできないなんて――ただ見ているだけだなんて!
身動き一つできず、止めることも助けることもできないもどかしさと歯痒さから、あたしは訳の分からない悲鳴に似た叫びを喉も裂けよとばかりに吐き出すことしかできません。
と――。
「てめぇ!?」「うるあっ!」
抱き合うように寄り添う『円城寺さん』と蛭谷さんを、複数の男性たちが取り囲んで――これはあとで知ったことでしたが、蛭谷さんの部下であるホテル従業員の方々だったそうです――文字どおり一斉に飛びかかったのです。そして無理矢理二人を引き剥がすと、なおも激しく暴れ狂う『円城寺さん』からてらてらと血に濡れたナイフを奪って冷たい床に組み伏せ、傷つき意識朦朧とする蛭谷さんを抱き支えて鼓舞するように声をかけている――そんなまるで映画のワンシーンのような非日常の光景を、涙で歪んだフィルター越しに眺めていたのです。
蛭谷さんをその腕に抱いているのは円城寺さん――まぎれもなく本物の――です。
円城寺さんの切れ長の垂れ下がった瞳は枯れることのない涙で濡れそぼっていました。
「どうして……どうして庇ったりしたんですか、蛭谷っ!」
「へ、へへへ。どうしてって、そりゃあ――」
蛭谷さんは円城寺さんを見つめ、照れ臭そうに笑うのです。
「お嬢――代行が俺たちにとって一等大事なお人だからですよ。でも、慣れねえこたぁするもんじゃありませんな。肝心なところで……ドジっちまいました。情けねえ……」
「でも……っ! だからってあなたがっ!」
「なぁに。おっ死ぬハメにはならんのじゃないですかね」
喘ぐようにそう言うと、蛭谷さんはシャツの下の血に染まったカットソーを震える手でめくり上げます。すると、幾重にも頑丈に巻かれた包帯、朱に染まったサラシが見えました。
「念入れて、久々にこいつを巻いてきましたから。代行にはまた叱られちまいそうですがね」
「蛭谷……すぐに救急車が到着します。諦めたら……駄目ですからね? あたし、怒ります」
円城寺さんの精一杯虚勢を張った命令を耳にした蛭谷さんは、苦笑を浮かべつつ彼女の瞳から絶え間なく溢れる涙を愛しいものに触れるような仕草で優しく指で拭います。しかしもう声も出す気力も湧かないようで、天井一点をじっと見つめたまま浅い息を繰り返すだけでした。
と――。
大のオトナ四人がかりで硬く冷たい床に張り付けられた『円城寺さん』は、まだ抵抗する力を緩めることなくもがき続け、もう決して届くことのない言葉を喚き続けていました。
「どうして分かってくれないの!? あたしたちは一つなのよ! 一つであるべきなのよ!」
その時です。
あたしの耳にそっと差し込まれた超高性能小型通信機から声が聴こえたのでした。
(――無理ね)
「あ――安里寿さん! 安里寿さんなんですね!? どうして――なんで――!?」
(――その話はあとで必ずしてあげるわ、祥子ちゃん。それよりも――)
昏く、冷え切ったようなその声。
安里寿さんはこう続けます。
(――正体がやっと分かったの。その子の本当の名前は、田ノ中幸江。一年前から行方不明で、家族から捜索願が出ていたわ。でも……間に合わなかった。本当に……ごめんなさい……)
安里寿さんが謝ることじゃ――その言葉は、何故か舌でもつれて出て来ませんでした。
やり場のない怒りを胸の内に燻らせたまま、あたしは止める美弥さんの手を強引に振りほどくと、意味不明の嘆きと叫びを上げ続ける田ノ中さんに近付いて、尖った眼で見下ろします。
「あなたの本当の名前は、田ノ中幸江さん……ですね?」
「違うわ! あたしはあたしよ! 円城寺杏子なのよ!」
噛みつくように言い返そうとしますが、しっかりと押さえつけられてはどうすることもできません。
「そんな子はもう何処にもいないわ! 気が弱くて、小心者で臆病で、他人の顔色ばかり窺って! 何処へ行ってもいじめられて蔑まれて! もうそんなくだらない人生なんてまっぴら! あたしはあたしなのよ!」
あたしとの会話を聞きつけた円城寺さんは眼を丸く見開き、たちまち蒼褪めました。
「え……? 幸江? あの幸江ちゃんなの? 小学校のテニス部で一緒だった、幸ちゃん?」
「違うわ、違うのよ、杏子! あたしはあなたなのよ! どうして分かってくれないのよ!」
田ノ中さんは涙を浮かべて必死に訴えかけます。
「……親の仕事の都合だなんて嘘まみれの理由で、あたしたちは引き離されてしまった。悲しかったわ、とっても。本当はね? 小心者で臆病な両親が、この街で生きていくことを諦めただけ、そんな心底くだらない理由だったの。あたしとあたしを取り巻く環境と感情に正面から向き合うこともせずに逃げただけ。いつだってそう。本音を隠して建前ばかり並べて……!」
激情にひたすら耐えるように唇を噛み、やがて田ノ中さんの切れた唇から血が床へと伝い落ちます。ですが、今にも爆発しそうだった怒りは唐突に消え失せ、笑みすら浮かんだのです。
「でも、仕方ないわよね。だってあれは、元々あたしの人生じゃなかったのだもの。あなたと、杏子と出会った時に、あたしはそれを確信したわ。どうしてって? 簡単な話でしょう?」
鬼相――そう呼んでも差し支えないほどの目を背けたくなる狂気の微笑。
「あたしが欲しかったもの、あたしが望むこと、あたしが夢見て憧れていた日々……そのすべてを持っていたのが、あなた――円城寺杏子だったんだもの。思わず目を疑った……奇跡だと思った。そしてこれこそが神が与えてくれた素晴らしい贈り物なのだと確信したわ! ようやくやっとあたしはあたしに出会えたのだから。きっとそうなるはずだった本来のあたしに!」
あとになって――美弥さんは教えてくれました。
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