500 / 539
第498話 変わりゆく明日へ at 1996/3/4
しおりを挟む
また新しい週がはじまった。
「――ってカンジだね! でもっ! あんまり無茶しちゃダメですからね? いっつも――」
「あ、あははは。えっと……ホント、すみません。やあ、シブチン、おはよう!」
先日、僕と純美子の仲はとっくにクラス公認――というか、否応なしに認めざるを得ないイチャコラぶり――らしいので、素直にふたりで待ち合わせしてから登校することに決めたのだ。
そして。
「ダッチに、ムロも。おはよう!」
「お……おう」
「やぁ、おはよう!」
最近の小山田は、予鈴ギリギリに滑り込むようなこともなく、朝早くから登校してサッカー部の朝練をはじめたらしい。イキナリの方針転換についていけない部員たちもいるようだったが、横山さんがマネージャーになってからというもの、徐々に部のフンイキも変化したという。
『見た目はあんなほんわかしてるんだがよ……怒らせると怖ぇんだ、美織』
それは冗談というより結構本気で小山田は言っていたようだけれど、決してそれだけではなくて、なごみというか癒しの効果も高く、元からあった殺伐としたフンイキは消え去り、上下の亀裂も薄れたようだ。今は真面目に全国大会出場、そして優勝を目指しているという。
「お、おい! ち、ちょっといいかよ、モリケン!」
僕は小山田の潜めた声に一瞬驚いた顔をするところだったが、平静を保って駆け寄った。
「べ、別に構やしねぇんだが……河東に、そのう……言ってねえだろうな? あのことをよ?」
「え……? ああ、もしかして……先週のハナシ?」
「そうそう! 決まってるだろ!」
「大丈夫だって。肝心なところは伏せてるから。特に『あのハナシ』はしてないよ、誰にもね」
「なら、いいんだけどよ……おっと、やべぇ!」
慌てて教室の前の方の席へ戻っていく小山田に首をかしげていると、ちょうど横山さんが教室に戻ってきたらしかった。来るなり、ずかずかと小山田の席へと直行する。横山さんは僕の方を、ちらり、見ながら腕組みして何か言っている。どうやら心配してくれているらしい。
「そ――! そんなことしてねえって! もうキンプリとはダチなんだからよ!」
「その呼び方。もうちょっとなんとかしなさいよ、小山田君?」
そうだそうだ。
もっと言ってやって!
でも、小山田が発した『ダチ』というセリフが妙に嬉しくて、ま、いいかな、とも思う。先週の金曜日のことは、ずっと僕らのココロに残るはずだ。ふと、室生とも目が合い、苦笑する。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
『よし! はは、よく言った! ほれ、落とすなよ? それ持って、ガキはまっすぐ帰んな!』
――ぽすっ。
ゆるやかな軌道を描いて飛んできた小箱を反射的に受け止めた小山田は、それを開けてみた。
『お、おい! これって――!?』
『そいつは俺からの餞別だ。……ま、バレたらドヤされるだろうけどな。遠慮なくとっとけよ』
『いいのかよ!? だって……だって、これってよぉ……』
中に入っていたのは。
小山田が買ったモノとよく似たアクセサリーだった。ただし、色は金でなく銀だ。それでも、ペンダントヘッドには、サイズは小さくともキラキラと光る小粒のダイヤモンドがあった。
『ついでにな……名刺もあるよな? そりゃあ俺のだ』
小山田は箱の中にあった厚みのある紙を裏返す――二代目●●会金丸組若頭補佐・白木忍。
『必要ねぇに越したこたぁねえが、もしも――もしもおめぇが誰かに助けて欲しい時、それもおめぇの大事な誰かの人生が台無しになりそうな時――そんときはかけてこい。手貸してやる』
「――ってカンジだね! でもっ! あんまり無茶しちゃダメですからね? いっつも――」
「あ、あははは。えっと……ホント、すみません。やあ、シブチン、おはよう!」
先日、僕と純美子の仲はとっくにクラス公認――というか、否応なしに認めざるを得ないイチャコラぶり――らしいので、素直にふたりで待ち合わせしてから登校することに決めたのだ。
そして。
「ダッチに、ムロも。おはよう!」
「お……おう」
「やぁ、おはよう!」
最近の小山田は、予鈴ギリギリに滑り込むようなこともなく、朝早くから登校してサッカー部の朝練をはじめたらしい。イキナリの方針転換についていけない部員たちもいるようだったが、横山さんがマネージャーになってからというもの、徐々に部のフンイキも変化したという。
『見た目はあんなほんわかしてるんだがよ……怒らせると怖ぇんだ、美織』
それは冗談というより結構本気で小山田は言っていたようだけれど、決してそれだけではなくて、なごみというか癒しの効果も高く、元からあった殺伐としたフンイキは消え去り、上下の亀裂も薄れたようだ。今は真面目に全国大会出場、そして優勝を目指しているという。
「お、おい! ち、ちょっといいかよ、モリケン!」
僕は小山田の潜めた声に一瞬驚いた顔をするところだったが、平静を保って駆け寄った。
「べ、別に構やしねぇんだが……河東に、そのう……言ってねえだろうな? あのことをよ?」
「え……? ああ、もしかして……先週のハナシ?」
「そうそう! 決まってるだろ!」
「大丈夫だって。肝心なところは伏せてるから。特に『あのハナシ』はしてないよ、誰にもね」
「なら、いいんだけどよ……おっと、やべぇ!」
慌てて教室の前の方の席へ戻っていく小山田に首をかしげていると、ちょうど横山さんが教室に戻ってきたらしかった。来るなり、ずかずかと小山田の席へと直行する。横山さんは僕の方を、ちらり、見ながら腕組みして何か言っている。どうやら心配してくれているらしい。
「そ――! そんなことしてねえって! もうキンプリとはダチなんだからよ!」
「その呼び方。もうちょっとなんとかしなさいよ、小山田君?」
そうだそうだ。
もっと言ってやって!
でも、小山田が発した『ダチ』というセリフが妙に嬉しくて、ま、いいかな、とも思う。先週の金曜日のことは、ずっと僕らのココロに残るはずだ。ふと、室生とも目が合い、苦笑する。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
『よし! はは、よく言った! ほれ、落とすなよ? それ持って、ガキはまっすぐ帰んな!』
――ぽすっ。
ゆるやかな軌道を描いて飛んできた小箱を反射的に受け止めた小山田は、それを開けてみた。
『お、おい! これって――!?』
『そいつは俺からの餞別だ。……ま、バレたらドヤされるだろうけどな。遠慮なくとっとけよ』
『いいのかよ!? だって……だって、これってよぉ……』
中に入っていたのは。
小山田が買ったモノとよく似たアクセサリーだった。ただし、色は金でなく銀だ。それでも、ペンダントヘッドには、サイズは小さくともキラキラと光る小粒のダイヤモンドがあった。
『ついでにな……名刺もあるよな? そりゃあ俺のだ』
小山田は箱の中にあった厚みのある紙を裏返す――二代目●●会金丸組若頭補佐・白木忍。
『必要ねぇに越したこたぁねえが、もしも――もしもおめぇが誰かに助けて欲しい時、それもおめぇの大事な誰かの人生が台無しになりそうな時――そんときはかけてこい。手貸してやる』
0
お気に入りに追加
16
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
彼女に振られた俺の転生先が高校生だった。それはいいけどなんで元カノ達まで居るんだろう。
遊。
青春
主人公、三澄悠太35才。
彼女にフラれ、現実にうんざりしていた彼は、事故にあって転生。
……した先はまるで俺がこうだったら良かったと思っていた世界を絵に書いたような学生時代。
でも何故か俺をフッた筈の元カノ達も居て!?
もう恋愛したくないリベンジ主人公❌そんな主人公がどこか気になる元カノ、他多数のドタバタラブコメディー!
ちょっとずつちょっとずつの更新になります!(主に土日。)
略称はフラれろう(色とりどりのラブコメに精一杯の呪いを添えて、、笑)
幼なじみとセックスごっこを始めて、10年がたった。
スタジオ.T
青春
幼なじみの鞠川春姫(まりかわはるひめ)は、学校内でも屈指の美少女だ。
そんな春姫と俺は、毎週水曜日にセックスごっこをする約束をしている。
ゆるいイチャラブ、そしてエッチなラブストーリー。
[完結済み]男女比1対99の貞操観念が逆転した世界での日常が狂いまくっている件
森 拓也
キャラ文芸
俺、緒方 悟(おがた さとる)は意識を取り戻したら男女比1対99の貞操観念が逆転した世界にいた。そこでは男が稀少であり、何よりも尊重されていて、俺も例外ではなかった。
学校の中も、男子生徒が数人しかいないからまるで雰囲気が違う。廊下を歩いてても、女子たちの声だけが聞こえてくる。まるで別の世界みたいに。
そんな中でも俺の周りには優しいな女子たちがたくさんいる。特に、幼馴染の美羽はずっと俺のことを気にかけてくれているみたいで……
【R15】【第一作目完結】最強の妹・樹里の愛が僕に凄すぎる件
木村 サイダー
青春
中学時代のいじめをきっかけに非モテ・ボッチを決め込むようになった高校2年生・御堂雅樹。素人ながら地域や雑誌などを賑わすほどの美しさとスタイルを持ち、成績も優秀で運動神経も発達し、中でもケンカは負け知らずでめっぽう強く学内で男女問わずのモテモテの高校1年生の妹、御堂樹里。親元から離れ二人で学園の近くで同居・・・・というか樹里が雅樹をナチュラル召使的に扱っていたのだが、雅樹に好きな人が現れてから、樹里の心境に変化が起きて行く。雅樹の恋模様は?樹里とは本当に兄妹なのか?美しく解き放たれて、自由になれるというのは本当に良いことだけなのだろうか?
■場所 関西のとある地方都市
■登場人物
●御堂雅樹
本作の主人公。身長約百七十六センチと高めの細マッチョ。ボサボサ頭の目隠れ男子。趣味は釣りとエロゲー。スポーツは特にしないが妹と筋トレには励んでいる。
●御堂樹里
本作のヒロイン。身長百七十センチにIカップのバストを持ち、腹筋はエイトパックに分かれる絶世の美少女。芸能界からのスカウト多数。天性の格闘センスと身体能力でケンカ最強。強烈な人間不信&兄妹コンプレックス。素直ではなく、兄の前で自分はモテまくりアピールをしまくったり、わざと夜に出かけてヤキモチを焼かせている。今回新たな癖に目覚める。
●田中真理
雅樹の同級生で同じ特進科のクラス。肌質や髪の毛の性質のせいで不細工扱い。『オッペケペーズ』と呼ばれてスクールカースト最下層の女子三人組の一人。持っている素質は美人であると雅樹が見抜く。あまり思慮深くなく、先の先を読まないで行動してしまうところがある。
13歳女子は男友達のためヌードモデルになる
矢木羽研
青春
写真が趣味の男の子への「プレゼント」として、自らを被写体にする女の子の決意。「脱ぐ」までの過程の描写に力を入れました。裸体描写を含むのでR15にしましたが、性的な接触はありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる