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第449話 迫るタイムリミット at 1996/2/5
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また新しい週がはじまる。
「おはよ! ケンタ君!」
「おはよう、スミちゃん」
いや、はじまってしまった、という焦りが僕の中にはあった。
土曜日恒例だったはずの『リトライ者会議』は、またしてもコトセからの連絡はないまま終わった。そして、ロコの提案した『町田の各所に点在するめぼしい神社に電話をかける』に関しても、あまりいい成果は収められなかったからだった。
タウンページやタウン情報誌を調べまくって候補に挙がったのが、ざっと五〇社ほど。中には、本殿と社務所といったカタチで重複して記載されているものもあったのだが、最終的に電話でコミュニケーションが可能そうなところとして半分の二十五社に絞られた。
そうして実際に手分けして電話をかけてみたのだけれど――。
『ダメだな……。そういうカタチでの奉納は、そもそも受け付けてないそうだ』
『こっちは夜しかつながらないみたいだね。すぐ留守電に切り替わっちゃった』
世間様がお休みの日だからこそ稼ぎ時(失礼)と、社務所に巫女姿のアルバイトをずらり並べてバリバリ営業中かと思いきや、そこまで規模の大きい神社なんてやっぱり『町田三天神』くらいしかないわけで。
ちんまりしたフツーの神社は、ご高齢の宮司ひとりで守っているケースが一般的らしい。ということは、境内のお掃除で毎日日中はご不在で、お歳を召していらっしゃる方だから規則正しく早寝早起き。となると必然、僕らがこうして電話しても、いつも留守電、というわけだ。
『これは困ったな……。やっぱりひとつひとつ、直接行ってみて確かめるしかないのかな……』
『あんたねぇ――』
さすがのロコもあきれて冗談も浮かばないらしい。
『行くっていっても、東は、ほぼ川崎市の鶴川の端っこから、西は城山湖の少し手前の相原までなのよ? 無理だって無理無理! ましてやあたしたち車なんて運転できないんだしさ――』
『車……ちょっと待てよ……?』
そこで僕の頭にひらめきが走った。
『――水無月笙氏は、車の運転はできたんだっけ? いつも決まって移動はバスだ。他の乗り物は、タクシーどころか自転車に乗っているところすら見たことがない。ということは、だ』
僕は社会の授業でもらった町田市の地図を広げた。そこに、この前、駅前まで出かけた時にもらっておいたバスの路線図を重ね合わせる。スマホで調べられないのが難点だが仕方ない。
『町田市を走るバスは、神奈川中央交通のバスだけだろ? その路線の範囲内のどこかに違いない。だろ? だって、車も持ってないんだし、自転車も乗らないんだから。第一、あれだけのサイズの絵を運ぶのは、自転車じゃ無理だよ。タクシーのトランクにも入らないと思うし』
それで、二十五社が十五社まで絞られたのだが――状況はあまり変わらず、というわけだ。
(残り二ヶ月……それまでに、コトセと連絡を取れるようになるんだろうか? それとも――)
いや、それは考えないようにしよう。
まずはコトセのメッセージにあった『三つのお題』をなんとかしなければ。
そして、僕とロコの未来改変を阻止しようとする『代行者』の存在を。
「ねえ、ケンタ君? なにか考えごとでもあるの?」
「え……? あ、あははは……まあ、そんなところ」
純美子が心配そうに僕の横顔を見つめているのがわかる。
けれど、これだけは純美子に伝えるわけにはいかない。巻き込むわけにはいかない。「リトライ者』である僕が干渉したことで、純美子の未来まで台無しにするわけにはいかないのだ。
(僕は、僕の大切な人たちを守って、僕とロコの未来も守らなきゃいけないんだからな……!)
「おはよ! ケンタ君!」
「おはよう、スミちゃん」
いや、はじまってしまった、という焦りが僕の中にはあった。
土曜日恒例だったはずの『リトライ者会議』は、またしてもコトセからの連絡はないまま終わった。そして、ロコの提案した『町田の各所に点在するめぼしい神社に電話をかける』に関しても、あまりいい成果は収められなかったからだった。
タウンページやタウン情報誌を調べまくって候補に挙がったのが、ざっと五〇社ほど。中には、本殿と社務所といったカタチで重複して記載されているものもあったのだが、最終的に電話でコミュニケーションが可能そうなところとして半分の二十五社に絞られた。
そうして実際に手分けして電話をかけてみたのだけれど――。
『ダメだな……。そういうカタチでの奉納は、そもそも受け付けてないそうだ』
『こっちは夜しかつながらないみたいだね。すぐ留守電に切り替わっちゃった』
世間様がお休みの日だからこそ稼ぎ時(失礼)と、社務所に巫女姿のアルバイトをずらり並べてバリバリ営業中かと思いきや、そこまで規模の大きい神社なんてやっぱり『町田三天神』くらいしかないわけで。
ちんまりしたフツーの神社は、ご高齢の宮司ひとりで守っているケースが一般的らしい。ということは、境内のお掃除で毎日日中はご不在で、お歳を召していらっしゃる方だから規則正しく早寝早起き。となると必然、僕らがこうして電話しても、いつも留守電、というわけだ。
『これは困ったな……。やっぱりひとつひとつ、直接行ってみて確かめるしかないのかな……』
『あんたねぇ――』
さすがのロコもあきれて冗談も浮かばないらしい。
『行くっていっても、東は、ほぼ川崎市の鶴川の端っこから、西は城山湖の少し手前の相原までなのよ? 無理だって無理無理! ましてやあたしたち車なんて運転できないんだしさ――』
『車……ちょっと待てよ……?』
そこで僕の頭にひらめきが走った。
『――水無月笙氏は、車の運転はできたんだっけ? いつも決まって移動はバスだ。他の乗り物は、タクシーどころか自転車に乗っているところすら見たことがない。ということは、だ』
僕は社会の授業でもらった町田市の地図を広げた。そこに、この前、駅前まで出かけた時にもらっておいたバスの路線図を重ね合わせる。スマホで調べられないのが難点だが仕方ない。
『町田市を走るバスは、神奈川中央交通のバスだけだろ? その路線の範囲内のどこかに違いない。だろ? だって、車も持ってないんだし、自転車も乗らないんだから。第一、あれだけのサイズの絵を運ぶのは、自転車じゃ無理だよ。タクシーのトランクにも入らないと思うし』
それで、二十五社が十五社まで絞られたのだが――状況はあまり変わらず、というわけだ。
(残り二ヶ月……それまでに、コトセと連絡を取れるようになるんだろうか? それとも――)
いや、それは考えないようにしよう。
まずはコトセのメッセージにあった『三つのお題』をなんとかしなければ。
そして、僕とロコの未来改変を阻止しようとする『代行者』の存在を。
「ねえ、ケンタ君? なにか考えごとでもあるの?」
「え……? あ、あははは……まあ、そんなところ」
純美子が心配そうに僕の横顔を見つめているのがわかる。
けれど、これだけは純美子に伝えるわけにはいかない。巻き込むわけにはいかない。「リトライ者』である僕が干渉したことで、純美子の未来まで台無しにするわけにはいかないのだ。
(僕は、僕の大切な人たちを守って、僕とロコの未来も守らなきゃいけないんだからな……!)
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