上 下
380 / 539

第378話 強制リセット at 1995/12/15

しおりを挟む
『………………0。これより強制リセットを実行します。しばらくお待ちください……0%』



 ――がくり。

 突然、なんの前触れもなく桃月のカラダからチカラが抜け去り、その場に、ぺたり、と女の子座りのつまさきを外に向けた格好で崩れ落ちた。寸前まで耳をおおっていた両手はだらりと下がり、手のひらを上に向けたまま両足のそばに落ちている。その顔に、意思は感じられない。


「モ――モモ? どうしたのよ!? あんた、一体……?」

「やめろ、ロコ! ダメだ! 今は近づかない方がいい!」


 反射的に一歩足を踏み出したロコのカラダに抱きつくようにして歩みを止める。無論、この僕にだって、今この瞬間に何が起こっているのかなんてまるでわからない。けれど、これは決して桃月の意地やカラダの中からの異変というよりは、外部からのなんらかの干渉を受けている、そうとっさに僕は判断したのだ。ならば、僕たち『リトライ者』が近づくのは危険すぎる。



『………………しばらくお待ちください……30%』



 がくがく! と桃月のカラダが揺れはじめ、おこりのように痙攣しはじめた。天井を見上げる顔の中の目は、完全に白目を剥いている。さすがに心配になってきたが、例のくそったれなマニュアルに書かれていたことの『逆もまた真』なり、という実証結果を信じるよりない。



『過去の歴史上、運命にある誰かをするのは不可能です――』

 つまり、

『過去の歴史上、運命にある誰かをするのは不可能です――』

 ということだ。



 これはすでに、あの『草食系過激思想少女』の三溝さんとタツヒコとの件で証明されていることだ。



『………………しばらくお待ちください……60%』



 やがて桃月のカラダの震えは最高潮に達し、そのうつろに開け放たれた白瞳とリップとグロスで艶めいた唇から白い閃光のような輝きが立ち昇り――轟音とともに一気に周囲に拡散した。





 ――ど……ん!





「う、うおっ!?」

「きゃっ!?」





 そして唐突に静かになる。





『………………しばらくお待ちください……90%』



 スクリーンの中で、メッセージは冷静に進捗割合を告げていた。この数値を信じるのであれば、まもなく終わるはずだ。だが……終わったその時、一体どうなるというのだろうか?



『………………しばらくお待ちください……100%』



 そしてついに一〇〇パーセントに到達した。



 のだが、なかなか完了したことを告げるらしきメッセージも合図もない。徐々に不安がこみあげてくる中、再び目を向けるといつのまにかスクリーンからはなにもかもが消えていた。


「………………ふぅ」

「――!?」


 その中で、最初に聴こえたのが桃月の切なげな溜息だったことに僕らはひどく驚いてしまう。そのことにすごく不思議そうな表情を浮かべながら、桃月は残念そうにこう言ったのだった。


「……すっごく悔しいし、すっごくつらいけど……ロコとムロのこと、わ」

「………………え――え?」


 そう。
 まるで桃月は、さっきまでのやりとりのすべてを忘れてしまったようだったのである。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

JKがいつもしていること

フルーツパフェ
大衆娯楽
平凡な女子高生達の日常を描く日常の叙事詩。 挿絵から御察しの通り、それ以外、言いようがありません。

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

彼女に振られた俺の転生先が高校生だった。それはいいけどなんで元カノ達まで居るんだろう。

遊。
青春
主人公、三澄悠太35才。 彼女にフラれ、現実にうんざりしていた彼は、事故にあって転生。 ……した先はまるで俺がこうだったら良かったと思っていた世界を絵に書いたような学生時代。 でも何故か俺をフッた筈の元カノ達も居て!? もう恋愛したくないリベンジ主人公❌そんな主人公がどこか気になる元カノ、他多数のドタバタラブコメディー! ちょっとずつちょっとずつの更新になります!(主に土日。) 略称はフラれろう(色とりどりのラブコメに精一杯の呪いを添えて、、笑)

幼なじみとセックスごっこを始めて、10年がたった。

スタジオ.T
青春
 幼なじみの鞠川春姫(まりかわはるひめ)は、学校内でも屈指の美少女だ。  そんな春姫と俺は、毎週水曜日にセックスごっこをする約束をしている。    ゆるいイチャラブ、そしてエッチなラブストーリー。

[完結済み]男女比1対99の貞操観念が逆転した世界での日常が狂いまくっている件

森 拓也
キャラ文芸
俺、緒方 悟(おがた さとる)は意識を取り戻したら男女比1対99の貞操観念が逆転した世界にいた。そこでは男が稀少であり、何よりも尊重されていて、俺も例外ではなかった。 学校の中も、男子生徒が数人しかいないからまるで雰囲気が違う。廊下を歩いてても、女子たちの声だけが聞こえてくる。まるで別の世界みたいに。 そんな中でも俺の周りには優しいな女子たちがたくさんいる。特に、幼馴染の美羽はずっと俺のことを気にかけてくれているみたいで……

【R15】【第一作目完結】最強の妹・樹里の愛が僕に凄すぎる件

木村 サイダー
青春
中学時代のいじめをきっかけに非モテ・ボッチを決め込むようになった高校2年生・御堂雅樹。素人ながら地域や雑誌などを賑わすほどの美しさとスタイルを持ち、成績も優秀で運動神経も発達し、中でもケンカは負け知らずでめっぽう強く学内で男女問わずのモテモテの高校1年生の妹、御堂樹里。親元から離れ二人で学園の近くで同居・・・・というか樹里が雅樹をナチュラル召使的に扱っていたのだが、雅樹に好きな人が現れてから、樹里の心境に変化が起きて行く。雅樹の恋模様は?樹里とは本当に兄妹なのか?美しく解き放たれて、自由になれるというのは本当に良いことだけなのだろうか? ■場所 関西のとある地方都市 ■登場人物 ●御堂雅樹 本作の主人公。身長約百七十六センチと高めの細マッチョ。ボサボサ頭の目隠れ男子。趣味は釣りとエロゲー。スポーツは特にしないが妹と筋トレには励んでいる。 ●御堂樹里 本作のヒロイン。身長百七十センチにIカップのバストを持ち、腹筋はエイトパックに分かれる絶世の美少女。芸能界からのスカウト多数。天性の格闘センスと身体能力でケンカ最強。強烈な人間不信&兄妹コンプレックス。素直ではなく、兄の前で自分はモテまくりアピールをしまくったり、わざと夜に出かけてヤキモチを焼かせている。今回新たな癖に目覚める。 ●田中真理 雅樹の同級生で同じ特進科のクラス。肌質や髪の毛の性質のせいで不細工扱い。『オッペケペーズ』と呼ばれてスクールカースト最下層の女子三人組の一人。持っている素質は美人であると雅樹が見抜く。あまり思慮深くなく、先の先を読まないで行動してしまうところがある。

13歳女子は男友達のためヌードモデルになる

矢木羽研
青春
写真が趣味の男の子への「プレゼント」として、自らを被写体にする女の子の決意。「脱ぐ」までの過程の描写に力を入れました。裸体描写を含むのでR15にしましたが、性的な接触はありません。

処理中です...