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第367話 サムシング・ゼア at 1995/12/6
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「――信じられない」
「――サイッテー!」
次の日も。
その次の日も。
桃月天音は学校に来なかった。
そして、誰が言いはじめるともなく、学校におけるロコへの風当たりがさらに一層強くなっていった。はじめこそ、ロコや室生、荒山たちイケメングループには隠して、という体裁をとっていたものが、もう坊主憎けりゃなんとやらで、あからさまな敵意がむき出しになっていた。
「――っ」
そして。
その肝心のロコはというと。
「ねーねー、ムロ? ちょっと聞きたいことがあるんだけど――?」
特段気にするそぶりもなく、いつもどおりに――あくまで表面上は、だが――学校生活を過ごしていた。が、敵意持つ連中にはそれが気にさわるようで四方から嫌な視線を浴びせられるものの、ロコの生まれ持つ容姿と培ってきた負けん気がミックスされた鋭い視線には勝てないらしい。
「え……あ、ああ。なになに? ロコの聞きたいことって?」
「えっと……このさー? この前出た数式がわかんなくって」
「へー! ロコも勉強するんだね! マジ意外なんだけど!」
「……あのね、ムロ?」
場の空気を少しでもなごませようと、室生が茶化したのがまずかった。ロコの口調が一変して硬く、数段階も低いトーンになる。その内なる意思の強さを体現したような言葉が飛び出す。
「あたしが言ってないし、思ってもないこと勝手に信じないで。誰に聞いたかは見当つくけど」
「あ……いや、ご、ごめんな、ロコ。そ、そうだよな……」
「な、なーんちゃって! ちょっと大げさに怒ってみただけだってぇー! まじめすぎかー!」
と思ったら急にロコまでおちゃらけモードになり、僕は内心、うげぇ、と舌を出していた。
(なーにが『だってぇー!』だよ、四〇女が! ま、僕も人のことは言えないんだけどさ……)
室生のご機嫌をうかがおうと、妙にかわいこぶったり、はしゃいだりしているロコを見ていると、むしゃくしゃして嫌な気分になってきてしまうのだ。
大体、室生がロコにベタ惚れだったのは、未来から『リトライ』するためにやってきた僕らには周知の事実なわけで。そんな小細工やくだらない駆け引きなんてしなくても、室生はロコのことを嫌いになんてならないのに。
(にしても……。相当こたえてるだろうに、まったくタフな奴だな、ロコは)
なにせ、女子生徒の大半が、今や『ロコの敵』なのだ。
僕ならば、とうに登校拒否児童になっていることだろう。
(学校一の美少女! たって、外見だけが人気だったわけじゃないのに。ひどいもんだな……)
そして、どうしても気になるのは、僕のスマホの中のアプリ『DRR』のことだ。
こんな事態になろうとも、一切通知が来なくなった。
もちろん現実乖離率も、この騒動がはじまる前からひとつも変わっていないのだ。
(もしかして……僕の未来――『現実』と関係がないからか? いいや、そんなはずないだろ)
僕が行動を起こさない限り『現実乖離率』が変動しないのであれば、この数値に意味はない。
『リトライ者』が複数存在するケースを想定していない可能性もなくはなかったが、やはりこのアプリとそれが弾き出す数値にはなんの意味もない、という結論になってしまう。モノが違うとはいえ、それではあまりに稚拙なシステムじゃないか。例外パターンを潰してこそのプログラムだと僕は思っている。ゲーム開発でもこれまでそうしてきたし、プログラマーの誰もがそうするはずだと僕は思うのだ。
(となれば……? 『現実』に影響を及ぼすイベントは、まだ発生していない? 馬鹿な――)
「――サイッテー!」
次の日も。
その次の日も。
桃月天音は学校に来なかった。
そして、誰が言いはじめるともなく、学校におけるロコへの風当たりがさらに一層強くなっていった。はじめこそ、ロコや室生、荒山たちイケメングループには隠して、という体裁をとっていたものが、もう坊主憎けりゃなんとやらで、あからさまな敵意がむき出しになっていた。
「――っ」
そして。
その肝心のロコはというと。
「ねーねー、ムロ? ちょっと聞きたいことがあるんだけど――?」
特段気にするそぶりもなく、いつもどおりに――あくまで表面上は、だが――学校生活を過ごしていた。が、敵意持つ連中にはそれが気にさわるようで四方から嫌な視線を浴びせられるものの、ロコの生まれ持つ容姿と培ってきた負けん気がミックスされた鋭い視線には勝てないらしい。
「え……あ、ああ。なになに? ロコの聞きたいことって?」
「えっと……このさー? この前出た数式がわかんなくって」
「へー! ロコも勉強するんだね! マジ意外なんだけど!」
「……あのね、ムロ?」
場の空気を少しでもなごませようと、室生が茶化したのがまずかった。ロコの口調が一変して硬く、数段階も低いトーンになる。その内なる意思の強さを体現したような言葉が飛び出す。
「あたしが言ってないし、思ってもないこと勝手に信じないで。誰に聞いたかは見当つくけど」
「あ……いや、ご、ごめんな、ロコ。そ、そうだよな……」
「な、なーんちゃって! ちょっと大げさに怒ってみただけだってぇー! まじめすぎかー!」
と思ったら急にロコまでおちゃらけモードになり、僕は内心、うげぇ、と舌を出していた。
(なーにが『だってぇー!』だよ、四〇女が! ま、僕も人のことは言えないんだけどさ……)
室生のご機嫌をうかがおうと、妙にかわいこぶったり、はしゃいだりしているロコを見ていると、むしゃくしゃして嫌な気分になってきてしまうのだ。
大体、室生がロコにベタ惚れだったのは、未来から『リトライ』するためにやってきた僕らには周知の事実なわけで。そんな小細工やくだらない駆け引きなんてしなくても、室生はロコのことを嫌いになんてならないのに。
(にしても……。相当こたえてるだろうに、まったくタフな奴だな、ロコは)
なにせ、女子生徒の大半が、今や『ロコの敵』なのだ。
僕ならば、とうに登校拒否児童になっていることだろう。
(学校一の美少女! たって、外見だけが人気だったわけじゃないのに。ひどいもんだな……)
そして、どうしても気になるのは、僕のスマホの中のアプリ『DRR』のことだ。
こんな事態になろうとも、一切通知が来なくなった。
もちろん現実乖離率も、この騒動がはじまる前からひとつも変わっていないのだ。
(もしかして……僕の未来――『現実』と関係がないからか? いいや、そんなはずないだろ)
僕が行動を起こさない限り『現実乖離率』が変動しないのであれば、この数値に意味はない。
『リトライ者』が複数存在するケースを想定していない可能性もなくはなかったが、やはりこのアプリとそれが弾き出す数値にはなんの意味もない、という結論になってしまう。モノが違うとはいえ、それではあまりに稚拙なシステムじゃないか。例外パターンを潰してこそのプログラムだと僕は思っている。ゲーム開発でもこれまでそうしてきたし、プログラマーの誰もがそうするはずだと僕は思うのだ。
(となれば……? 『現実』に影響を及ぼすイベントは、まだ発生していない? 馬鹿な――)
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