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第245話 リトライ者同盟(3) at 1995/9/22

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『なにもプロを自称するつもりはないが、こと「リトライ」に関しては私たちの方が先輩だ』


 時巫女トキミコ・セツナは、結局カノジョたちの『リトライ』の終点がどこ――いつまでなのかを明かすことはなかった。僕とロコを傷つけることになる、それがカノジョの語る理由だ。


『ならばこそ、お前たちにアドバイスやサポートをしてやるのはやぶさかではないのだが――』

「『行動の自由が利かない』、そう言ってたよな、さっき?」

『ああ。そのとおりだ』

「それは――君じゃない、の影響で、ってことなのか?」


 時巫女・セツナからの返事はすぐには返ってこなかった。ちゃぶ台越しのロコの顔が、さっきと同様に、無言のまま『どういうこと?』と尋ねてくるが、僕は気づかないフリをした。


『……』

「答えるのが難しければ別にいいさ。君たちには君たちの事情がある。そうなんだろ?」

『………………すまない』

「いいって。この話題になるとハナシが進まなくなるから、他のことを話そうか。じゃあ――」


 そこで、ふと、以前時巫女・セツナと交わした会話が脳裏によみがえってきた。


「そういえば、前にこんなことを言ってなかったっけ? 『過去には決して起こりえなかった選択をしてみた』とかなんとか。あの時はなんだか必死にごまかそうとしていたけれど――」

『――っ!?』


 電話の向こう側で動揺のあまりかどこかにカラダをぶつけたような呻きが漏れた。


『……お前が知る必要なぞない、あの時も確かにそう言ったはずだぞ!? 古ノ森健太っ!!』

「いやいやいや。気になるじゃんか。だって、いつも冷静で、めた態度の君がそんなに――」

『あ、慌ててなどおらぬ! どどど動揺なんぞこれっぽっちもしてはおらぬのじゃ!!』

 おいおいおい。なぜか口調が『のじゃロリ』になってしまうくらい動揺しまくりじゃんか。


「ますます気になるだろって。おい、ロコ、そうだよな?」

「は、はぁ? ……いや、まー確かに気にはなるけどさ?」

『ええい! ロクに話を聞いてなかったクセに、こんな時だけ調子を合わせおって!!』


 ようやく自分にもわかるハナシになってきたからか、一瞬迷惑そうに眉をひそめたロコだったが、たちまち悪戯いたずらっぽい顔付きになると僕のテキトーなフリにうまく話しを合わせてきた。


「なになに、セツナっち、誰かに告白とかしちゃったのー!? 隅に置けないねぇー?」

『んぐっ!?』


 どうやらビンゴだったようだ。きっと電話口の向こうでは、真っ赤になって脂汗をだらだら流しているに違いない、と想像してみたとたん、妙に親近感が湧いてきた。今までは、どちらかといえば横柄でいけすかない人種に分類されていた、あの時巫女・セツナに対して、だ。


「ねー? ねー? お相手は誰なの? なんて言ったの? 超気になるー!」

『わ……にそんな大それた真似ができるわけなかろう! 向こうから言ってきたんだ!』

「………………えええええ! だって、相手って、あ、あの――!!」


 驚きのあまり、興奮気味に言いかけた口を、慌てて自分の両手で塞いだ。まだ明かしたくない、と言っているのに、僕が彼の名前を口走ったらさすがにロコだって気づくだろうからだ。


『あ、あいつはどこか変なのだ……。い、今まで、にそんなことを言う奴など、ただの一人もいなかったというのに……。変わり者の中でも、とびきりの変わり者だぞ……!?』


 幸い、瞳をきらきらと輝かせてがっちり喰いついているロコにも、ガラにもなくもじもじ照れているであろう時巫女・セツナにも、僕の中途半端な失言は届いていなかったらしい。


『き……君は可憐で愛らしい! などと、は、歯の浮くようなセリフを並べ立ておって……!』

「で――なんて答えたんだい、時巫女・セツナ?」


 とどめの一言に断固抵抗する姿勢を崩さなかった時巫女・セツナだったが、最後に白状した。


『そ、その……あくまで、未来の変革のために、だな……よ、よろしくお願いします、と……』


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