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第232話 『西中まつり』アフター(1) at 1995/9/15
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きーんこーんかーんこーん――。
時刻は一五:三〇。
ついに『西中まつり』の終わりを告げるチャイムが校内中に響き渡った。
「みなさま、本日のご来場、まことにありがとうございましたー!」
あちこちのスピーカーから流れる下校案内の曲は、ドボルザーク作曲、『新世界から』より『遠き山に日は落ちて』だ。次第に音量を増していくメロディに負けじと、僕ら『電算論理研究部』の全部員は、家路に着くお客さんたちに大きな声で感謝の言葉を述べ、頭を下げる。
「ははは! お客様のお見送りとは、実に感心感心! あたしたちも思いがけず楽しめたぞ!」
「あ! せりさん! しのぶさん! 今日は……本当にありがとうございました!」
「いやあ、大したことしてないッスよ、僕たちは。あは、あははは……」
佐倉家の『やればできる子』長女せりさんと『とてもじゃないけどできそうにない子』次女しのぶさんの後ろには……どよん、とした負のオーラを背負ったボーイッシュな美少女の姿が。
「もーぅ! ひっどいですひどいですぅー、古ノ森リーダー!」
あ、やっぱ怒ってる……よねー?
そう、見た目は美少女、ココロは漢。遺伝子的にも立派な男の子! の佐倉かえで君だ。いつぞやの時と同じ、改造済みのハレンチ軍服みたいなアイドル衣装は『葉桜ふぅ』仕様である。
「た、たしかにぃ!? 何でもやる覚悟があります! って言いましたよ? でもでもぉ!?」
「かえでちゃん――いや、ふぅちゃん! すっごく良かったよ! ……って、ぐぶほぉっ!?」
「良かったよ(サムズアップ)じゃないでしょ、ド馬鹿。はいはい、こっちで座ってようねー」
ぐったりした襟首をつままれ、ずるずる……と引きずられていく渋田。なんという握力か。しかしというか、おかげでというか、佐倉君も怒るタイミングを逸してしまったらしい。
「ま、まあ、お役に立てたのであれば……いいんですけど……ぶつぶつ……」
「とっても助かったよ、佐倉君! あれがなければ、あんなにお客さんを集めることなんてできなかったからね! マニアの間では、前のゲリラライブの件がウワサになってるらしいから」
そう言って佐倉君の肩に腕を回して、労うように、ぽんぽん、と叩く僕。けれど、佐倉君はまだ『葉桜ふぅ』のアイドル衣装のままなわけで。いい匂いはもちろんのこと、間近で見る完成されたメイクと膨らんだ胸に思わず目がいき、どきどきして思わず顔が赤くなってしまう。
「は……はずかしいですよぅ……」
「……ケーンーターくーんー!?」
「……はっ!? 僕は一体何を!」
ずびしっ! ずびしっ! と脇腹めがけて幾度も繰り出される純美子の細くて白い、鋭くとがった突きに呻きをあげながら僕は逃げ回る。とてもついさっきまで王女だったとは思えない。
「仲間というのは良いものですね」
「うん。た、楽しかった……ね?」
逃亡中に、ちら、と視線を向ければ、五十嵐君と水無月さんが笑顔でうなずきあっていた。彼らのその表情を見れただけでも、充分やった甲斐があった、と僕は満足できただろう。
そこで、
「はいはい! まだ『西中まつり』は終わってないよー? 浮かれてないで、さあ、さあ!」
柏手を打つように手を叩いて注意を集めたロコは、困ったように笑いながらそう言った。僕は足を止め――背中に純美子がぶつかった――げんなりした声を出す。
「ええー……。い、いや、わかってるよ。片づけが残ってる、っていうんだろ? それは――」
「違うってば」
だが、ロコは呆れた顔付きであっさりと首を振った。
「後夜祭、って知らないの!? 片づけした後は、キャンプファイヤーで盛り上がるんじゃない。これだから陰キャは、もー!」
時刻は一五:三〇。
ついに『西中まつり』の終わりを告げるチャイムが校内中に響き渡った。
「みなさま、本日のご来場、まことにありがとうございましたー!」
あちこちのスピーカーから流れる下校案内の曲は、ドボルザーク作曲、『新世界から』より『遠き山に日は落ちて』だ。次第に音量を増していくメロディに負けじと、僕ら『電算論理研究部』の全部員は、家路に着くお客さんたちに大きな声で感謝の言葉を述べ、頭を下げる。
「ははは! お客様のお見送りとは、実に感心感心! あたしたちも思いがけず楽しめたぞ!」
「あ! せりさん! しのぶさん! 今日は……本当にありがとうございました!」
「いやあ、大したことしてないッスよ、僕たちは。あは、あははは……」
佐倉家の『やればできる子』長女せりさんと『とてもじゃないけどできそうにない子』次女しのぶさんの後ろには……どよん、とした負のオーラを背負ったボーイッシュな美少女の姿が。
「もーぅ! ひっどいですひどいですぅー、古ノ森リーダー!」
あ、やっぱ怒ってる……よねー?
そう、見た目は美少女、ココロは漢。遺伝子的にも立派な男の子! の佐倉かえで君だ。いつぞやの時と同じ、改造済みのハレンチ軍服みたいなアイドル衣装は『葉桜ふぅ』仕様である。
「た、たしかにぃ!? 何でもやる覚悟があります! って言いましたよ? でもでもぉ!?」
「かえでちゃん――いや、ふぅちゃん! すっごく良かったよ! ……って、ぐぶほぉっ!?」
「良かったよ(サムズアップ)じゃないでしょ、ド馬鹿。はいはい、こっちで座ってようねー」
ぐったりした襟首をつままれ、ずるずる……と引きずられていく渋田。なんという握力か。しかしというか、おかげでというか、佐倉君も怒るタイミングを逸してしまったらしい。
「ま、まあ、お役に立てたのであれば……いいんですけど……ぶつぶつ……」
「とっても助かったよ、佐倉君! あれがなければ、あんなにお客さんを集めることなんてできなかったからね! マニアの間では、前のゲリラライブの件がウワサになってるらしいから」
そう言って佐倉君の肩に腕を回して、労うように、ぽんぽん、と叩く僕。けれど、佐倉君はまだ『葉桜ふぅ』のアイドル衣装のままなわけで。いい匂いはもちろんのこと、間近で見る完成されたメイクと膨らんだ胸に思わず目がいき、どきどきして思わず顔が赤くなってしまう。
「は……はずかしいですよぅ……」
「……ケーンーターくーんー!?」
「……はっ!? 僕は一体何を!」
ずびしっ! ずびしっ! と脇腹めがけて幾度も繰り出される純美子の細くて白い、鋭くとがった突きに呻きをあげながら僕は逃げ回る。とてもついさっきまで王女だったとは思えない。
「仲間というのは良いものですね」
「うん。た、楽しかった……ね?」
逃亡中に、ちら、と視線を向ければ、五十嵐君と水無月さんが笑顔でうなずきあっていた。彼らのその表情を見れただけでも、充分やった甲斐があった、と僕は満足できただろう。
そこで、
「はいはい! まだ『西中まつり』は終わってないよー? 浮かれてないで、さあ、さあ!」
柏手を打つように手を叩いて注意を集めたロコは、困ったように笑いながらそう言った。僕は足を止め――背中に純美子がぶつかった――げんなりした声を出す。
「ええー……。い、いや、わかってるよ。片づけが残ってる、っていうんだろ? それは――」
「違うってば」
だが、ロコは呆れた顔付きであっさりと首を振った。
「後夜祭、って知らないの!? 片づけした後は、キャンプファイヤーで盛り上がるんじゃない。これだから陰キャは、もー!」
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