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第132話 ついに……眠れる獅子も寝ぼけまなこで起きる時 at 1995/7/21

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「まいったな……。みんな、巻きこんじゃってゴメン!」


 僕ら『電算論理研究部』フルメンバー揃っての、はじめての部活動がこんな形になるとは、一体誰が予想できただろうか。狭い部室に集まったみんなに向けて、僕は畳に額をこすりつけるようにして頭を上げて詫びた。

 そこに早速喧嘩腰でツッコミを入れてきたのはロコである。


「ホントにまったくもう! こっちはそこまでやるつもりもない兼部メンバーなんだからね!」

「……あ、あのな? お前はそっち側じゃなくて、僕と一緒に謝る側だって自覚、ないのか?」


 ……あ。
 と、周囲の視線を受けつついそいそと歩み出て、僕の隣で土下座をしはじめるロコ。





 一学期の最終日である今日、突如勃発した『小山田組』VS『イケメングループ』VS『僕』というとんでもなく不利な戦いを決定づけてしまったのは、遅れて参戦表明してきた室生が突き付けた追加条件と、それを即座にがぶ飲みしてしまったロコの超余計な一言だったのである。


『僕が勝ったら、ロコには男子テニス部のマネージャーになってもらうよ。当然そっちは退部だ』


 どの角度からでも自然とさまになるイケメンの室生がきっぱりとそう宣言すると、クラスの女子たちから『きゃあああ!』という黄色い悲鳴が上がった。ロコが名指しで選ばれたのだというショックと、胸キュンヒロイックな激アツセリフにノックアウトされてしまったようである。


『そ、そんなの勝手すぎるって! 大体さ、ロコは物なんかじゃ――!』

『いーじゃない、上等よ! んだから! 吼え面かかせてやる!』


 ――そして、今に至る、と。





「ホント……ごめんねー。なーんか、話聞いてたらさー。ムカムカっ! ってしちゃって……」

「まったくだよ、もう……。僕は断る気満々だったのに」


 並んで仲良く土下座の体勢をとりぶちぶちと不満を漏らしていると、僕の腕が引っ張られた。


「な、なんだよ、いきなり! どうしたんだよ、みんな!?」

「いーい? これはチャンス、ビッグチャンスが来たんだよ、モリケン!」


 たちまち男子三人に囲まれ、僕の腕を掴んで放そうともしない渋田が代表して口火を切った。


「そ、そうですよ! これって絶対、成功したらたちまちモテモテになっちゃうフラグです!」

「孫子いわく『ずその愛する所を奪わば、すなわち聴かん』です。今こそリーダーの本領発揮です」


 佐倉君、五十嵐君までそんなことを言い出す始末。一体どうした、おい。女子部員四名はそっちのけで、まるで洗脳でもしそうなイキオイで僕に囁きかけてくる。再び渋田は訴えた。


「いーい? モリケンは僕ら陰キャを代表する陰キャなんだよ? みんなの希望の星なんだ!」

「ええー……それって、陰キャ中の陰キャってこと? 嬉しくないなー……」


 まあ確かに?
 この中では割とイキイキしてる僕だけど、クラスの他の連中とはそんなに話す機会ないし。


「まあ、もうどのみち断れる状況じゃないもんな……やるしかないよね。協力、してくれる?」


 渋田、佐倉、五十嵐の三人が揃ってチカラ強くうなずいた。そして、五十嵐君が口を開いた。


「では、僕からまず、みなさんにご報告があります。よろしいでしょうか、古ノ森リーダー?」

「もちろん。何?」


 そこで五十嵐君はイキオイよく立ち上がると、女子を含めた全員に向けてこう言ったのだった。





「我ら『電算論理研究部』の宿を実施します! これは顧問承認済みの決定事項です!」

「「「「「「「………………は?」」」」」」」





 彼を除く七人全員が、ぽかん、と呆気にとられる中、さらにこうセリフは締めくくられたのである。


「こういうこともあろうかと顧問にも了承を得ています。いえ、宿泊場所は僕のツテがありますのでご心配には及びません。顧問からは『引率はできないので定時連絡をするように』と」


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