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第108話 『電算論理研究部』正式スタート!(4) at 1995/7/7
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実のところ。
「は、はぁあああああ!?」
と思わず叫び声を上げてしまったのは、僕だけではなかったのである。
今まで傍観者というか、あたしーカンケーないしーという醒めた態度で僕と咲都子のやりとりを眺めていたロコは、突然のとばっちりに、間に座っていた純美子の頭越しに咲都子に噛みつく。
「な! なんであたしまで頭数に入れてんのよ!? あたし、カンケーないじゃん!!」
「だって、ノハラさんってモリケンの師匠なんでしょ? 弟子の不始末は師匠の責任じゃん? それに、ツッキーは絶対可愛くなるはずだから、あたしが変身させてみんなを驚かせるぞって」
「そ、それは……! 確かに言ったけど……」
んぐ、と言葉に詰まるロコ。
渋々認める言葉を口に出す。
しかし、すぐに体勢を立て直して反撃に出るつもりのようだ。
「で、でもさ!? あたし、一年の頃からとっくに体操部の部員なんだけど!? 秋の文化祭に向けて、発表用のダンス練習してるし! 人数少ないから、抜けるなんてできないってば!」
「あー、いいのいいの。抜ける必要ないからさー」
「……え?」
とまどうばかりのロコに、咲都子はにやりと笑いながらこう告げた。
「テニス部の椿山センセと体操部の山崎センセには、もう兼部の許可もらってあるから。本業に支障がない範囲なら、大いに結構、やりなさい、って。校長の前で約束してもらったから」
「なっ! なに勝手に許可取ってんのよっ!?」
椿山亜矢子センセイと山崎曜センセイに断る選択肢なんて与えられなかったんだろうな、と思ったりする。なにしろウチは、校長肝煎りの新設部なわけで、きっとご大層な大義名分と未来予想図を熱く熱く語られたに違いないからだ。にしても、そこまで計算ずくで校長を巻き込んで兼部の許可を取っておいた咲都子の手腕には感心してしまった。あとはその計算高さも。実務と交渉ごとがきっちりこなせる社交的で堅実なオタクって、ホント怖い。
ただ――あの咲都子が、と考えると、どうにもおかしい。
妙に違和感があって落ち着かなかった。
(ウチの部に入るだけなら、一人だって平気な性格なのに、いろいろ理屈をこねすぎてる……)
恐らく、人数合わせというのは建前だろう。咲都子は何かしらの理由があって、純美子とロコを巻き込みたかったのだ。もしくは、二人のうちのいずれかを。けれど、なんのために?
「状況はわかった。まずは部員一人一人の意見を聞いてから決めようと思う」
謎が気になって仕方ないものの、とにかく今は一名の入部希望者と二名の兼部希望者について『電算論理研究部』部長としてなんらかの結論を出さないといけない。僕は渋田を見た。
「どう思う、シブチン? ……って、お前には、聞くだけ時間の無駄のような気がするな」
「ひどすぎる! ……ま、もちろんサトチンと一緒なんだもん、断る理由はないよねー」
……予想どおりじゃんか。
僕は次に、佐倉君、五十嵐君に尋ねてみる。
「二人の考えはどう? 彼女たち三人を、新たに部員として迎え入れることに関して」
「ぼ、僕は、いいと思います。勉強会でも一緒だし、知らない仲じゃないですもん」
「僕も、反対は、しませんね」
「『反対はしない』って、ちょっと含みがあるようにも聞こえるんだけど……気のせい?」
僕が五十嵐君の答えを引用して揶揄すると、案の定、五十嵐君は僕に微笑み返してきた。
「彼女たちの加入によって、部員それぞれが本来の目的を見失わないのであれば、ということです。僕自身、古ノ森リーダーに条件を提示している身ですから、大きな口は叩けませんが」
「それもまた青春の一ページ、って考える僕は、リーダー失格かな?」
「いえいえ。完全否定するつもりはありません。そういった感情も、僕の学ぶべき一つです」
最後に僕は、入部したての水無月さんに優しく尋ねてみた。
「ツッキー、君はどう思う? 君の率直な意見を聞かせて欲しいんだ――」
「は、はぁあああああ!?」
と思わず叫び声を上げてしまったのは、僕だけではなかったのである。
今まで傍観者というか、あたしーカンケーないしーという醒めた態度で僕と咲都子のやりとりを眺めていたロコは、突然のとばっちりに、間に座っていた純美子の頭越しに咲都子に噛みつく。
「な! なんであたしまで頭数に入れてんのよ!? あたし、カンケーないじゃん!!」
「だって、ノハラさんってモリケンの師匠なんでしょ? 弟子の不始末は師匠の責任じゃん? それに、ツッキーは絶対可愛くなるはずだから、あたしが変身させてみんなを驚かせるぞって」
「そ、それは……! 確かに言ったけど……」
んぐ、と言葉に詰まるロコ。
渋々認める言葉を口に出す。
しかし、すぐに体勢を立て直して反撃に出るつもりのようだ。
「で、でもさ!? あたし、一年の頃からとっくに体操部の部員なんだけど!? 秋の文化祭に向けて、発表用のダンス練習してるし! 人数少ないから、抜けるなんてできないってば!」
「あー、いいのいいの。抜ける必要ないからさー」
「……え?」
とまどうばかりのロコに、咲都子はにやりと笑いながらこう告げた。
「テニス部の椿山センセと体操部の山崎センセには、もう兼部の許可もらってあるから。本業に支障がない範囲なら、大いに結構、やりなさい、って。校長の前で約束してもらったから」
「なっ! なに勝手に許可取ってんのよっ!?」
椿山亜矢子センセイと山崎曜センセイに断る選択肢なんて与えられなかったんだろうな、と思ったりする。なにしろウチは、校長肝煎りの新設部なわけで、きっとご大層な大義名分と未来予想図を熱く熱く語られたに違いないからだ。にしても、そこまで計算ずくで校長を巻き込んで兼部の許可を取っておいた咲都子の手腕には感心してしまった。あとはその計算高さも。実務と交渉ごとがきっちりこなせる社交的で堅実なオタクって、ホント怖い。
ただ――あの咲都子が、と考えると、どうにもおかしい。
妙に違和感があって落ち着かなかった。
(ウチの部に入るだけなら、一人だって平気な性格なのに、いろいろ理屈をこねすぎてる……)
恐らく、人数合わせというのは建前だろう。咲都子は何かしらの理由があって、純美子とロコを巻き込みたかったのだ。もしくは、二人のうちのいずれかを。けれど、なんのために?
「状況はわかった。まずは部員一人一人の意見を聞いてから決めようと思う」
謎が気になって仕方ないものの、とにかく今は一名の入部希望者と二名の兼部希望者について『電算論理研究部』部長としてなんらかの結論を出さないといけない。僕は渋田を見た。
「どう思う、シブチン? ……って、お前には、聞くだけ時間の無駄のような気がするな」
「ひどすぎる! ……ま、もちろんサトチンと一緒なんだもん、断る理由はないよねー」
……予想どおりじゃんか。
僕は次に、佐倉君、五十嵐君に尋ねてみる。
「二人の考えはどう? 彼女たち三人を、新たに部員として迎え入れることに関して」
「ぼ、僕は、いいと思います。勉強会でも一緒だし、知らない仲じゃないですもん」
「僕も、反対は、しませんね」
「『反対はしない』って、ちょっと含みがあるようにも聞こえるんだけど……気のせい?」
僕が五十嵐君の答えを引用して揶揄すると、案の定、五十嵐君は僕に微笑み返してきた。
「彼女たちの加入によって、部員それぞれが本来の目的を見失わないのであれば、ということです。僕自身、古ノ森リーダーに条件を提示している身ですから、大きな口は叩けませんが」
「それもまた青春の一ページ、って考える僕は、リーダー失格かな?」
「いえいえ。完全否定するつもりはありません。そういった感情も、僕の学ぶべき一つです」
最後に僕は、入部したての水無月さんに優しく尋ねてみた。
「ツッキー、君はどう思う? 君の率直な意見を聞かせて欲しいんだ――」
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