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第106話 『電算論理研究部』正式スタート!(2) at 1995/7/7
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「――!!」
僕と咲都子の視線が激しくぶつかり合う。
やがて、ふいっ、と視線を外したのは咲都子の方だった。
「……あっそ。じゃあ、あたしたちは仲間でもなんでもない、ってわけね。そう言いたいのね」
「そうは言ってないだろ」
「同じことじゃない!?」
こみあげる感情に突き動かされるように咲都子が僕の胸元に手を伸ばしてシャツを掴んだ。しょせん女の子だと高を括っていたが、腕力は相当なもので一番上のボタンが弾け飛んだ。
「あんたが真剣だってことは知ってる、聞いてたもの! だからこそ、チカラになりたいって思ったらイケナイの? ずっと一緒だったでしょ!? 仲間だと思ってたのはあたしだけ!?」
思わず、はっ、とする。
咲都子の目には、うっすらと光るものが見えたからだ。
「………………ごめん。悪かった」
ようやく絞り出された僕の声が聴こえたのか、しばらくそのままの態勢だったが、やがて、
「……ふんっ」
と一つ鼻を鳴らしてから咲都子は僕のシャツを開放すると、皺になった部分を申し訳程度に二、三度撫でた。
僕は自分を振り返る。
傲慢になっていたのかもしれない、と。
未来を知っている、この先を体験している。
今のみんなのことは知っているし、未来のみんなのことも知っている。
しかし、だからといって、みんながどう考えるか、ましてや『過去に起こらなかった出来事』でみんながどう感じ、どう行動するかなんてことは、この僕にさえわかるはずがなかったのだ。だが僕は、勝手にみんなのことをすべて理解したつもりになって、勝手に決めつけてしまった。きっとこうだろう、どうせこうに違いない、そうやって思いどおりになるんだと考えていた。
でも、そうじゃなかった。
ここにいるみんなは、僕の中に残る『記憶の断片』なんかではなく、自我を持ったひとりの人間なのだ。それぞれが思い、考え、決断して、自分の決めた道を自分の足で歩んでいくのだ。
(ったく……こんなあったり前のことを……。ホント、僕って奴は……)
次の瞬間『電算論理研究部』部室内に集まった七人は、さぞや、ぎょっ、としたことだろう。この僕が突然、渾身のチカラを振り絞って自分の両頬を、ぴしり、と叩いたのだから。
「えっと……。みんな、ごめん! ちょっと僕、なんか思い上がって舞い上がってたみたいだ」
咲都子は視線を外して肩をすくめると、純美子の隣のスペースまで戻って、ぺたん、と座った。純美子もきっと同じ気持ちだったのだろう、僕と視線が合うと、冗談が入り込む余地のない真剣な眼差しで、こくり、とうなずいてみせる。ロコは――なんだか落ち着かなげだった。
「改めて、だけど――」
僕は釈明がわりに経緯を話すことにする。
「僕が『電算論理研究部』を作りたい、って荻センと校長に相談した時、条件を出されたんだ。『夏休み前までに、あと四人の部員を集めること』ってね。それがダメなら、正式な部として認められない、って」
みんな黙って僕の話す一語一語に集中しているようだ。そのまま続ける。
「それで僕とシブチンは、どの部活にも所属してない生徒がいないか聞いてまわって、ウチのクラスだった佐倉君と五十嵐君を誘った。二人とも活動内容に興味を持ってくれて、入部することに決めてくれた――それぞれから条件っていうか宿題みたいなのを出されたんだけどね」
その二人にちらりと視線を向けると、佐倉君が真っ赤になってあわあわし出した。かわいい。
「そして、最後の一人、コンピューター経験者の水無月さんに出会えた。これで目標達成さ」
僕と咲都子の視線が激しくぶつかり合う。
やがて、ふいっ、と視線を外したのは咲都子の方だった。
「……あっそ。じゃあ、あたしたちは仲間でもなんでもない、ってわけね。そう言いたいのね」
「そうは言ってないだろ」
「同じことじゃない!?」
こみあげる感情に突き動かされるように咲都子が僕の胸元に手を伸ばしてシャツを掴んだ。しょせん女の子だと高を括っていたが、腕力は相当なもので一番上のボタンが弾け飛んだ。
「あんたが真剣だってことは知ってる、聞いてたもの! だからこそ、チカラになりたいって思ったらイケナイの? ずっと一緒だったでしょ!? 仲間だと思ってたのはあたしだけ!?」
思わず、はっ、とする。
咲都子の目には、うっすらと光るものが見えたからだ。
「………………ごめん。悪かった」
ようやく絞り出された僕の声が聴こえたのか、しばらくそのままの態勢だったが、やがて、
「……ふんっ」
と一つ鼻を鳴らしてから咲都子は僕のシャツを開放すると、皺になった部分を申し訳程度に二、三度撫でた。
僕は自分を振り返る。
傲慢になっていたのかもしれない、と。
未来を知っている、この先を体験している。
今のみんなのことは知っているし、未来のみんなのことも知っている。
しかし、だからといって、みんながどう考えるか、ましてや『過去に起こらなかった出来事』でみんながどう感じ、どう行動するかなんてことは、この僕にさえわかるはずがなかったのだ。だが僕は、勝手にみんなのことをすべて理解したつもりになって、勝手に決めつけてしまった。きっとこうだろう、どうせこうに違いない、そうやって思いどおりになるんだと考えていた。
でも、そうじゃなかった。
ここにいるみんなは、僕の中に残る『記憶の断片』なんかではなく、自我を持ったひとりの人間なのだ。それぞれが思い、考え、決断して、自分の決めた道を自分の足で歩んでいくのだ。
(ったく……こんなあったり前のことを……。ホント、僕って奴は……)
次の瞬間『電算論理研究部』部室内に集まった七人は、さぞや、ぎょっ、としたことだろう。この僕が突然、渾身のチカラを振り絞って自分の両頬を、ぴしり、と叩いたのだから。
「えっと……。みんな、ごめん! ちょっと僕、なんか思い上がって舞い上がってたみたいだ」
咲都子は視線を外して肩をすくめると、純美子の隣のスペースまで戻って、ぺたん、と座った。純美子もきっと同じ気持ちだったのだろう、僕と視線が合うと、冗談が入り込む余地のない真剣な眼差しで、こくり、とうなずいてみせる。ロコは――なんだか落ち着かなげだった。
「改めて、だけど――」
僕は釈明がわりに経緯を話すことにする。
「僕が『電算論理研究部』を作りたい、って荻センと校長に相談した時、条件を出されたんだ。『夏休み前までに、あと四人の部員を集めること』ってね。それがダメなら、正式な部として認められない、って」
みんな黙って僕の話す一語一語に集中しているようだ。そのまま続ける。
「それで僕とシブチンは、どの部活にも所属してない生徒がいないか聞いてまわって、ウチのクラスだった佐倉君と五十嵐君を誘った。二人とも活動内容に興味を持ってくれて、入部することに決めてくれた――それぞれから条件っていうか宿題みたいなのを出されたんだけどね」
その二人にちらりと視線を向けると、佐倉君が真っ赤になってあわあわし出した。かわいい。
「そして、最後の一人、コンピューター経験者の水無月さんに出会えた。これで目標達成さ」
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