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ー始動ー

DAY 1-9

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 機動隊が手際良く死体を回収し、去っていく。まるで、機械のように。

「どうして……」

 隣で、紀香が声を震わせている。俺はかける言葉が見つからず、俯く。

 登坂や野崎も、開いた口が塞がらないといった様子だった。

「なんで、殺されたんや…」

 野崎が呟く。


「それはきっと、条文の範囲を超えた、というルール違反からでしょう」

 奥から、眼鏡の位置を直しながらボサボサ頭のインテリ風の男が近づいて来た。

「私は志賀彰人と申します。結論から述べますと、彼は傷害罪を犯してしまったのです」

 傷害罪?俺が許された罪だ…

 志賀は辺りを歩きながら続ける。

「彼は、途中までは暴力が許されていた。しかし、傷害罪へと切り替わってしまった。そのポイントはどこか?それは、貴方の口元に隠されています」

 志賀は、野崎の唇を指差す。

「暴行の結果により貴方の口が切れ、出血した事から、彼の罪は傷害罪へと切り替わったのです。だから、彼は撃たれた」

 どうやら、志賀は法律を詳しく知っているようだった。暴行罪が、傷害罪へと変わったから、撃たれた。彼の説明で、納得した。

「そうだったのか…何だか、悪い事をした気分だ」

 登坂は口元を抑え、俯く。紀香は貴方は悪くないわ、と言いながら箱ティッシュを差し出していた。

 本当なら、俺が止められたはずだった。今まで何度となくして来た不良撃退脳内シミュレーションを実行すべきだった。何故なら、俺は傷害罪が許された人間だから。変な話、彼は暴行しか出来なかったが、俺は、最悪出血させても良かったんだ。

 あの時の屋良の目は、狂気に染まっていた。彼は、焦りを暴力でしか癒せなかったのだろう。彼もきっと、恐怖していた。彼も、このゲームの被害者なのだ。

 俺の罪は、言うなれば彼の罪の上位互換だ。あの場には俺しか、止められる人間はいなかったんだ。

 重い責任を感じ、ギュッと強く目を瞑る。己の不甲斐なさと、このゲームの理不尽さを、心から呪った。
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