風ノ旅人

東 村長

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歌の国『オルカストラ』編

平野に轟く——大砲声

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 静かでありながら暖かく、この世すべての自然が芽吹く命明の春から始まって、陽光照りつける夏で完全に成った、枯れ果てた命でさえも涙する美しき緑葉に染まった自然を見るも無惨な姿へと枯らし果たし、いつ如何なる時も生命の終わりは呆気ないと——そう酷薄にも思える無心なる世界で生く命に教示させてくる秋という季節が、この世の果から迫り来る『白と灰の色』をする冬から、その枯れ果てた身を守るための逃げに入るが如く、僕達の前から長きに渡り姿を隠そうとしている途中で、僕達は四年に一度の周期で迎えられるオルカストラ一の祭事『聖歌祭』が始まり、それと同時に終わる日を、この国に住まう民全員が迎えた。

「…………うん。やっぱりコートがあった方がいいな!」

 十一月三十日の午前六時ごろ——久方ぶりに仮眠と取り、体力と精神ともに『完全回復』した僕が、寝巻きからいつもの服装に着替えを終えると、僕の前に立つ姿見の前には、ミファーナに到着してから、いまの今まで『一度』も着用することが——アロンズのクソ野郎に至る所を切り裂かれていたせい——できなかった、爺ちゃんからのお下がりで、溶けてしまいそうなくらい暑かった夏でも肌身離さなかった『茶色のコート』を完璧に着こなす僕の姿が映っていた。全身鏡を自発的に使用するのは『僕の柄』ではないのだが、約一月ぶりに感じるコートの重さと、それを着用している僕の姿を『この目』で確かめるために、鏡を使うのは必要不可欠だったのである。そんな感じで、超が付く『ビンテージ物』らしいコートの重みを全身で受け止めている僕は、故郷の村を旅立つ時の感覚を思い出しながら、絶対に失敗できない魔王戦の前だというのに至極落ち着き払っていた。そうして、身支度を終えた僕が借りている部屋を出てると、僕の部屋の前にある廊下の壁際で、着替えをしていた僕が出てくるのを待っていたのだろう、ラーラと顔を合わせた。

「あははっ! ちょっと『おじさん』臭いんじゃない?」
「え……? やっぱりダサいの、この格好……」
「うーん……ダサいとは思わないかなぁ。ちゃんと似合ってると思う。ふふ……かっこいいわよ?」

 照れ臭そうに頬を赤らめながら「かっこいい」と褒め言葉を言ってくれるラーラに、僕は『本当に?』と疑うような、前にアミュアさんから言われた『誹謗』を口から出す。

「この格好さ、前——というか、半年くらい前にも『田舎臭い』って言われたことあるんだよねぇ……」
「……? 誰にそんなこと言われたの?」
「え? アミュアさんっていう『エルフ族』の人だよ」
「…………女の人?」
「うん。これくらいの女の子」

 何かに探りを入れるような目で、アミュアさんの性別を問うてきたラーラに、僕はまあまあ——かなり——誇張しつつ、彼女の身長を自分の腰の高さくらいであると答えた。

「あ、子供か」
「うん。子供」
「ふーん……じゃあいいや。ほら、はやく一緒に朝ごはん食べましょ。私が朝早くから頑張って手作りしたんだから。一緒に食べたら『ミファナ平野』に出発よ。ほらほら!」
「え……あ うん。分かった」
「ほらほら! 早く早く!」
「べ、別に押さなくてもすぐに行くってば」
「いいからいいから! ほらほら! 早よ早よ!」

 そうして僕とラーラは、先に食卓についてはいたものの、僕達と朝食を共にするために待っていたボイラさんの三人で、ラーラが作ったという、やや黒く焦げてしまっている、顎が痛くなりそうなほどに弾力が強すぎるパンと、テキトウに切ったのだろう、ざく切りの野菜がゴロゴロと入っている薄味の鶏ガラスープを食し——魔王戦の支度を終えて、屋敷の前で待っている馬車に乗るために玄関から外に出た。

「ラーラァッ! お前はこの三日間、みっちりとアタイが鍛えてやったんだ。下手こいてアタイの顔に泥塗ったら承知しないからねッッ!! 返事!!」
「押忍っ!」

 まるで『武術の師範と弟子』かのような養母と養子の遣り取りに、完全に置いてけぼりになっている僕が堪らず汗を流していると、今から魔王封印へと臨むラーラの覚悟を問うように、嘘を吐けない腹の底からの声を打ち上げることを求めたボイラさんの一言でラーラは腹の底から引っ張ってきた『引かない勇気』を喉奥から大きく吐き出し、それを聞いたボイラさんは口角を上げて、よし——と頷いた。

「ハッ! ガキのくせに良い声じゃねえか……よっしゃ! 魔王をテメエの歌で聴き惚れさせてこい、バカ娘!!」
「ラジャー!!」

 バシンッとボイラさんに背中を叩かれたラーラは『痛ったぁ!?』という苦悶の表情を浮かべつつも声には出さず、蒼天のように美しく晴れた笑顔と共に、竦みかける背中を叩き押してくれたボイラさんに背を向けて——パリオットさんが操縦する、あの時と同じ、ニューギルスたちが引く馬車へと乗り込んでいった。そんな彼女の後ろ姿を眺めていた僕が、借りっぱなしになっている『兵士の剣』を持ち、先に行ったラーラを追いかける形で馬車へと向かうと——突然「待ちな」と、ボイラさんに呼び止められてしまった。

「——? どうしました?」
「ソラ坊、オメエはそんな剣で戦うつもりかよ」
「え? あ、はい。僕が持っていた鏡面剣は、前見せたとおり半分になっているので、これを使わないと……」
「んなもんよりも良い物があるぜ——ほらよ」
「うえっ? こ、これは?」

 急に呼び止めてどうしたんだ? と気を抜いていた僕に、謎にニヤッと口角を上げているボイラさんは脇に抱えていた白い布に包まれている『何か』を僕へと放り投げ渡した。それを慌ててキャッチした僕が、ボイラさんの『その布を取れ』という視線を受けて、白布に包まれる『何か』を取り出すと——中から現れたのは、一本の『細剣』であった。細身の刀身をしまっている茶色の鞘は、おそらく、僕のコートの補修に使われている『バルムッサの剛皮』と、何らかの大樹——剛強な木材を使用しているのだろうと思わせ、この鞘だけでも一つの武器になるのではと、僕に考えさせるほどの、途轍もない力強さをヒシヒシと感じさせてきた。そんな剛強すぎる鞘にしまわれている『細剣』の柄は、以前に僕が見たことのある『銀の輝き』を煌々と放っており、ただの鞘だけでも一級品だろうそれは、僕なんかじゃ到底手が出せない代物であると僕に確信させた。そんな一級の武器なのであろう物を手に持ち、興奮を隠しきれない僕は、我慢できるわけがないとばかりに、今も僕の手中にある細剣を、その威力を封じている剛強な鞘から引き抜いた……。

「————おお…………眩しい」 

 右手で持たれた柄の先、鞘から姿を現した刀身は、鏡面剣以上の輝き——陽光煌めく『銀』の煌めきを放っていた。

「それは、今から千年前——最初の魔王封印の際に『風の勇者』が実際に使ったっていう話がある、希少好物『オリオンシルバー』っつう、ラーラの腕輪の材料にもなっている物で打ち造られた『剣』さね。一応、聖歌祭の時に使う祭事用の剣ってことになってるが、今の今まで使われた試しはなかった。だが! お前なら、風の加護を持ってるソラ坊ならば、それを使うべきだと、アタイは思ったんだよ。だからね、それで愛娘に怪我をさせようっつう魔王をぶった斬ってやんな」
「…………あの、魔王は倒したらいけないんじゃ……?」
「細けーこと言ってんじゃねえ!! アタイの娘を傷つけようとする奴は魔王だろうが勇者だろうが関係なく殴る! そんだけだ。いいかい、ソラ坊。魔王は聖歌の影響で力が半分になってるつう話だ。だけどね、くれぐれも舐めて、気を抜くんじゃないよ」
「…………押忍ッ!」
「ハッ……いいじゃねえか。行ってこい馬鹿息子!!」
「っっ——行ってきます!!」

 じいちゃんを思い出させるような豪快な笑みを浮かべているボイラさんに『バシン——ッッッ!!』と、ラーラ以上の力で思いっきり背中を叩き押された僕は、スッキリした覚悟を決めた顔で、ラーラが待つ馬車へと向かっていく。そんな僕の腰には、借りパクしていた兵士の鉄剣ではなく、ボイラさんから託された『宝真銀の細剣』が差されていた。万全なる準備。完成した心意気。生まれも育ちも違うけど、確かに同じものを持っている勇者の卵と新人歌姫の二人は、歌の国の首都・ミファーナの北に存在している『ミファナ平野』へと、国民総出で見送られながら向かうのであった。

 * * *

「あ、見えてきましたよ!」
「「おお?」」

 ミファーナを出て、駆り進むこと約一時間。かなり緊張した面持ちでニューギルスたちを操っていたパリオットさんの一言で、馬車に乗っている僕とラーラは、操縦兵の彼女が前方へ向ける人差し指の先を視線で追った。

「あそこが、ミファナ平野です! あそこに平野にある魔封土の下で、魔王が封じられているのです! ラーラ様が向かうのは、魔封土から離れた壇上で、前線を張るソラ様の配置は魔封土の側の『魔王戦地』です!」

 僕とラーラの視界の先に広がっているのは、事前に聞いていた『ミファナ平野』という凄まじい広大さを誇る、オルカストラで最も有名だろう魔王が封じられている名地だ。そこには百人超は居そうな『オルカストラ兵士』たちが待機している即席の待機所と、あの四人の聖騎士が待機しているのだろう、かの『クラウディア聖王国』の国旗が印刷されている、白一色の大きなテントが設置されていた……。そうして、僕達は先に平野に入り、待機していたオルカストラ兵士たちに挨拶を済ませ、各人の決められた配置——百数十人の兵士たちと、歌姫の騎士である僕。さらにマッキオさん他三人聖騎士達が、魔封土と呼ばれている、泥を上から滴らせ、積もらせたような歪な三角形をしている黒紫の土がある、魔王復活・封印・戦闘の最前線へ。そして、残り五十人の兵士と一人の女性聖騎士は、聖歌の壇上の上で、十分間も『封印ノ聖歌』を歌い続けなければならない歌姫・ラーラの守護に着く。そうして、復活の時間——正午の時に間に合うよう、僕達戦闘隊は馬を危険に合わせられないため、徒歩で絶対侵入禁止地『魔封土』へと向かう。

「ソラ!」
「——? どうしたの?」

 猛々しい『熱』を周囲に感じさせるほどの莫大な戦意を身体から立ち昇らせながら、決戦の戦場へと向かおうとしていた僕に、純白の『世界樹のドレス』を身に纏い、各地で回収した『聖銀の腕輪』を左腕に嵌め、両耳には蒼穹を思わせる『空の耳飾り』を吊るし、足には茶木色の『地想樹の靴』を履きこなした、全四つの擬似宝具『全て』で完全装備をしている、主役・歌姫のラーラが話しかけてきた。

「…………ううん。ふふっ、一緒にがんばりましょ!!」
「————うん。全力で、ラーラを守り抜くよ」
「ずっと信じてるからね。行ってらっしゃい!!」
「ああ——行ってきます!!」

 * * *

 音が遠のく決戦の地——魔封土の前。そこに僕達はいた。毒々しい色の土が形作る、歪な三角形の前で、最前線に立つ僕は、腰に差していた『宝真銀の細剣』を鞘から引き抜き、眩い銀光を周囲にチラつかせる。その陽光と同等の銀光な輝きに呼応するように、数メートル後ろで配置についていた百数十の兵士たちが一斉に各々の武器を装備する。数時遅れて、正午を迎える数分前——僕の横、僕と同じく最前線に立っている二人の聖騎士達が、槍を、戦斧を構え、一人静かに目を瞑っていた……隠しきれない魔族への憎悪を周囲に発散している、聖騎士隊を任されている『マッキオ小隊長』が、その左腕で腰に差されていた、僕の銀の剣とは対極の、太陽のような輝きを発する『黄金の剣』を引き抜き、構えた。そして、その構えと同時刻に時が満ちる。

 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…………。

 と、大地が小刻みに揺れ動き、僕の目の前で、歪に積み重ねられていた魔封土がポロポロと上部から崩れ落ちていき、心も身体も確かに構えられている戦士達の間に緊張が走る。これから何が起きるのかを知っている者も、何一つも知らぬ者も等しく高まり続ける緊張感を共有する中、緊張で汗を流しそうになっている僕は「ゴクリ……」と息を飲んだ。そして——僕達の前にあった『魔封土』が、大きく爆ぜた。

 ドンッ——ゴロゴロ————
 
 鼓膜を傷めるほどの莫大な爆音が轟く中で、目の前の魔封土の爆砕により発生した粉塵で視界が奪われてしまっている僕達は、困惑しつつも混乱はせず、皆が目の前に居る、この世のものと思えない常軌を逸した存在感を発している気配の主——復活した『魔王』への最大限の警戒を続けた。

『キヒッ、キヒャヒャヒャ! おっはぁよぉ~~~~!』

 警戒を続ける僕達の耳に届いたのは、まだ見ぬ魔王——世界の害悪『魔族の王』という架空の敵を想像していた僕達・魔王戦未経験者の驚愕を一気に掻っ攫うものであった。あまりにも幼い……声変わりをしていなさそうな高い声の主は、土煙が風で吹き飛び去った中から、その姿を現した。

「なっ!?」
「こ、子供……!?」
「あれが、魔王なのか……!?」

 口々に混乱を吐き出す魔王戦未経験の兵士たちと同じく、僕は目の前に立つ魔王……なのだろう、アミュアさんと同じくらいの背丈をしている『子供』に視線を釘付けにした。黒緑色の髪と目。やや猫背気味になっている身長は『百三十センチ』後半くらいか。しかし、僕の目を引くのはそんなところではない。皮が弛むほどに異常肥大化している喉。そして、羊のように『うねった歪な形』を開いている、自身の後方へと向かうように頭から生えている——鬼人とは毛色が異なった『二本の角』だ。その子、いや、魔王は嫌な奴——アロンズ——を思い出させる独特な笑い声を上げながら、動揺する僕達に気の良い挨拶を吐く。あまりの動揺で顔を引き攣らせてしまいながら、この中で一番の実力者であろう僕を『じぃー』っと見つめる魔王の視線により、全く身動きができない僕は、ただ、魔王と視線を交わした。

『お? おお? おおお? おおおおおおおおおお!! キヒャヒャア! おっひっさ——んんん? ありゃりゃ別人かぁ……』
「…………何を言ってる?」
『んーー? 君には関係ないよぉ~ん! キャハッ!』

 僕を見つめていた魔王が、まるで『僕のことを知っている』かのような、至極楽しそうな顔で声を上げようとして、唐突に顔を怪訝にした魔王が、何かを探るように、再び僕を見ると、自身の知っている者とは何ら関係がなかったようで『どうした?』という顔で問いかけた僕に『なんでもない』と、その会話を終わらせるように手をひらつかせた。その、やけに緊張感のない魔王に僕が目に見えて戸惑っていると、立ち止まったままの僕の隣で『地面が爆砕』した。
 
「魔オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオウッッッ!!」
「————はっ!? マッキオさんっっっ!?」

 戦意を一切感じさせない気の抜けたような魔王に、両手で構えた黄金の剣の切っ先を向け、叫び突撃していくのは、聖騎士隊の小隊長マッキオだった。彼の突然の『特攻』に、驚愕した僕は汗粒を周囲に散らしつつ、無謀にも思える彼の突撃に合わせて駆け出そうと力強く地面を踏み締め——

 今までの気の抜けた会話の中で、僕が魔王に対して先陣を切らなかったのは、なにも考えがなかったわけではない。僕達は『封印ノ聖歌』をラーラが歌い終える『十分』もの間、ただ、魔王を足止めすればいいのだ。それを先程まで行っていた会議で聞いていた僕は、魔王を倒せないという制約もあるため、その『足止め』に納得し、賛同していた。だから、先の会話を無理矢理にでも続けて、今この時も着実に進んでいる時間を稼ごうという下心があったのである。
 
 それを、彼——マッキオの特攻で完全に崩された!
 今この時、避けられぬ戦いが始まってしまったのである!!

 それをコンマ数秒もの一瞬で理解した僕は、不殺の制約で締め付けていた、魔族への恨みを憎しみを殺意を解放し、莫大な戦意を体外へと放出しながら、剣を構え、先を突き進む彼の後を全速力で追おうとした。しかし——!!

 ドゴォッッン——という豪音と共に空へと『打ち上げられた』マッキオの姿を視界に入れた僕は時を止めてしまう。

「ゴォ————ッッッアガ!? グォッガァァッッ——…………」

 今何が起きたのか、この場で理解していたのは——いや、魔王の動きを目で追えていたのは、この場で僕だけだった。僕よりは遅いものの、人外じみた速さで突撃していくマッキオよりも速く——魔王は動き! 奴は僕ですら追えなかった拳速を持って、目の前で掻き消えた魔王の姿を見失い、突撃の走を止めかけたマッキオの腹部を強打したのである。

『魔王は『封印ノ聖歌』の影響で、元の半分の強さだ』

 馬鹿を言うな。半分? 半分の強さだと? 僕は、僕は、魔王の動きを全く目で追えなかった! 奴の速さは僕の体幹で、あのトウキ君やカラスと同等以下だ——しかし! 僕以上の強さを持つ、強者だったアロンズよりも、断然速い!!


『《ボアアアアアアアアアアッッッ!!】」

 致命的ミス。緊張で足を止めてしまった僕はそう悟った。僕は——僕の役目は、コイツの足止め。前線で、兵士たちを置き去りにするほど戦わなければならなかった僕のミス。それは、そのミスの結果は——

 魔王の焼け爛れたかのように異常肥大化している喉から発せられた、十分という、長すぎる時間も続くこととなる、戦い開戦を告げる『大砲声』の轟によって、僕に示された。

「ぐぅぅぅっ……ぅぅぅっ!? なんだあっっっ!?」

 魔王の大砲声——振動による攻撃を防げたのは、風の加護を持つ僕と 震攻対策のためにと過去の人間が用意した、空の耳飾りをつけるラーラだけだった。

『キヒャッヒャハハハハハハハハハハハハハハハ!!』

 全滅! 僕とラーラ以外の全戦力が、先ほどの魔王の大砲声によって、戦闘——否、行動すらままならないほどの、穴という穴から血を流すほどの重傷を負い、魔王封印・決戦を行う『ミファナ平野』に立つ者は……

『遊ぶなら、あの時みたいに三人で! キヒャヒャヒャ!!』

 その死刑宣告のような言葉は、雲一つない絶望写す蒼穹へと吸い込まれていく。
 戦場に転がる戦闘不能者達を背にする僕は——流れる汗を、地に落とす……。
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