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第一章
2. 異世界の神様に聖女候補として呼ばれました(2)
しおりを挟むーーと、いうわけで。
見渡す限りどこまでも真っ白な異空間で、ここには今や私と美形神様だけしか居なくなってしまった。
なんで、私だけ残ってるの?いや、私だけ並ばなかったからだとは思うけど。
うう……急に美形神様と二人きりとか、気まずいんですけど。
「ーーはあ」
え、ため息?今のって、この神様がため息ついたの?
「前代未聞の事態だな。せっかく引っ張ってきた魂が、まさか聖女転生を拒むとは」
え?あれ?なんか神様……口調とか、雰囲気とか……。
こ、これは神様怒っていらっしゃる?
「怒ってなどいない。この我が。このような些末事に」
うわ、声のトーン低っ!
……あれ?私、今声出してないよいね?そもそも口が無いから声とか出せないよね?
「我は神。魂体の思念を聞くことなどたやすいわ」
うわぁマジか。いつから?もしかしてさっきからのグダグダ思ってたことって、
「そなたの思念はひときわ大きい。すべて我に届いている」
……さようでございますか。誠に申し訳ございません。
神様はもう一度ため息をつくと、小さく頭を振って気を取り直すかのようにしてから、改めてこちらを見た。
「よい。思考は自由。たとえそれが、我の意向を否定するものだとしてもな」
す、すみません。悪気はなかったんです。単なる個人的な意見で、勝手な思い込みとか偏見とかも入ってるんで……本当にすみませんでした。
なんとか浮遊魂でも頭下げられないかしら。うう、無理。前後に跳ねるだけだわ。
「ーーふ、」
あれ、笑った?気のせいかな?
「気のせいだ」
でも今ーーはい、気のせいです、すみません。
「さて、ではどうするか」
神様はそう呟きながらこちらへ手を伸ばしてきて、すいっと私を掌に乗せた。いや、お乗せになった。
「我はおよそ100年周期で異世界から乙女の魂を召喚して来たが、拒まれたのは初めてのこと。そなたの意思など関係なく聖女に仕立てることは出来るが、できれば自らの意思で転生をしてもらいたい。実際のそなたは異世界で死んでおり、この世界に魂体でそう長くはいられぬ。つまりそなたは転生するか、このまま消滅するかのどちらかしかない」
はい。やっぱりそうですよね。そうなっちゃいますよね。
でも……でもやっぱり、まだ死にたくない。
いや、元の世界で一回死んでるんだけど。でも、せっかく異世界に呼んでもらえたんだから!もっと、もっと長生きしたいよ!
「すまぬが、」
神様っ!確かにさっきはは嫌だと思いましたけど、このまま消えるくらいなら、やっぱり私も聖女になります!聖女として頑張ります!だから消さないでお願いしますっ!
「……」
い、今更遅いの?な、なんか言ってください、神様。
そんな、悲しそうな、まるで憐れむような目で、見つめないで。
「すまぬが、そなたの考える聖女像はあながち間違っていないのだ」
え?
「そなたたちは異界からここまでたどり着いた強き魂の持ち主ではあるが、聖女として瘴気で穢れた地を浄化し、生き物に癒しと治癒を与えるとなると、その生命力を多く削られる。よって、みなそう長くは生きられない」
……。
「奴隷、とまでは思って欲しくはないがーーおおむね短命であることは否定できぬ」
……。
……結局。
新たに生まれ変わっても、こき使われるだけ使われて、命削られてあっという間に死んじゃうって、こと?
ほら。ほら、やっぱりだ。
ーーそうだ。だったら、聖女以外の何か、他の何か。もうただの普通の人に転生させてもらえないだろうか?私は容姿とかはどうでもいいし、身分とかも高くなくていい。だから、
「すまぬ」
出来ないの?どうして?
「……異世界からの異物を、得も利も無くこの世界に入れ込むことは出来ぬ。受け入れられるのは、唯一聖女のみ」
……。
ああ、そうですか。
私たちのことを、異物?そんな風に言っちゃうんだ。
なら、私だって言わせてもらいますけどね。
同意も得ずにそっちが勝手に連れてきたくせに、今更そんなこと言うんじゃないっての!
こんの、クソ神がっ……!
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