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プロローグ
プロローグ6
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その日、土砂降りの雨が降った。
いつものようにユイカは森の中で座り込んで彼を待っていた。
今日も来るとは言っていたがさすがのこの雨では来るはずもないだろう。
そう思い始めていた。
彼を待ってもう数時間は経過している。
そろそろ、夜に入る時間だった。
ユイカは立ち上がり、また家を荒らして住処を奪いに向かおうとした矢先、奥地のほうからガサガサと木ずれの音が響いて近づいてくる。
ユイカが身構えた時、一人の雨がっぱをした優人が転がり出てきた。
「おまえ……どうして……」
「よかったぁ、いてくれて。今日も遊ぼうって約束してたでしょ。遅くなってごめんね。父さんの目を盗んで逃げだすのに苦労して」
ユイカの胸にジクリとした痛みが走る。
こんな自分に必死になってまた会いに来てくれた。
なによりも、それがユイカにはうれしかった。
「って、こうして遊びに来て申し訳ないけどやっぱり、この天気じゃ無理だよね。あはは」
「いや、会えただけでも私はうれしい。来てくれてありがとう」
「そんな、お礼なんていいよ。僕が勝手にユイカちゃんに会いたいって思ったんだからさ」
「そうか」
気恥ずかしい。
でも、うれしいし彼に思い切り抱き着きたい。
ユイカはそう思ってしまう。
だが、脳裏には昨日の夜の海岸で見た光景がフラッシュバックした。
そうだ。
コイツは別に自分だけに優しいわけではない。
ユイカは自然と一歩彼から距離を話してしまう。
「うん? ユイカちゃん?」
「もう、戻らなくていいのか?」
「いや、まだ大丈夫だよ。あとちょっとだけはなそう」
「……そうか」
「そういえば、ユイカちゃんここでいつも何しているの? お家では遊ばないの?」
「…………」
躊躇もなくズケズケと聞いてくる優人に悩ましげな表情を見せた。
それをみた優人は慌てて首を振った。
「ごめん! もう聞かないよ。言いたくないことなんだったら」
「以前にも聞いていたな、似たようなことを」
「うっ……」
「そんなに私が何をしているのか気になるのか?」
「それは……」
ユイカは考えてしまう。
そろそろ、彼には打ち明けてもいいんじゃないかと。
「なら、明日また遊べ。その時話してやる」
「え……明日?」
「そうだ。なんだ、無理なのか?」
「ごめん、明日は……友達と一緒に祭りに行く約束をしているんだ……」
「そう……なのか」
友達といわれて思い出すのはやはり昨日の海岸の人物だ。
あの子たちのことを言っているのだろうか。
「その友達というのは……女の子なのか……」
「え」
「……」
質問に対して彼の答えを待った。
かなり戸惑った様子だった彼だったがしばらくして、首を振った。
「違うよ。男の子」
ほっと安心する。
男の子だとすれば昨日の子ではないのか。
「明日はどうしてもそれだから無理なんだ。でも、明後日なら遊べるからその時に遊ぼうよ」
「わかった……なら、その時私がいつもどうしているのか教えてやる」
そのような約束を交わした、あと彼は携帯電話を見た。
「ごめん、僕そろそろ」
「そうか」
「じゃあ、明後日」
「ああ」
彼が走り去っていく後姿をしばらく見送ろうとした後だ、彼が再び戻ってきてユイカに何かを手渡した。
「これ、よかったら使って」
「これって……」
それは折り畳み傘だった。
男の子っぽいデザインから少年が普段使っているものだと判断できた。
そのまま、優人は踵を返して元来た道を戻って帰っていった。
森林に残ったユイカは手渡された傘を大事そうにしながら胸に抱きしめた。
後に彼に裏切られるとは知らずずっと彼を思い続けて。
いつものようにユイカは森の中で座り込んで彼を待っていた。
今日も来るとは言っていたがさすがのこの雨では来るはずもないだろう。
そう思い始めていた。
彼を待ってもう数時間は経過している。
そろそろ、夜に入る時間だった。
ユイカは立ち上がり、また家を荒らして住処を奪いに向かおうとした矢先、奥地のほうからガサガサと木ずれの音が響いて近づいてくる。
ユイカが身構えた時、一人の雨がっぱをした優人が転がり出てきた。
「おまえ……どうして……」
「よかったぁ、いてくれて。今日も遊ぼうって約束してたでしょ。遅くなってごめんね。父さんの目を盗んで逃げだすのに苦労して」
ユイカの胸にジクリとした痛みが走る。
こんな自分に必死になってまた会いに来てくれた。
なによりも、それがユイカにはうれしかった。
「って、こうして遊びに来て申し訳ないけどやっぱり、この天気じゃ無理だよね。あはは」
「いや、会えただけでも私はうれしい。来てくれてありがとう」
「そんな、お礼なんていいよ。僕が勝手にユイカちゃんに会いたいって思ったんだからさ」
「そうか」
気恥ずかしい。
でも、うれしいし彼に思い切り抱き着きたい。
ユイカはそう思ってしまう。
だが、脳裏には昨日の夜の海岸で見た光景がフラッシュバックした。
そうだ。
コイツは別に自分だけに優しいわけではない。
ユイカは自然と一歩彼から距離を話してしまう。
「うん? ユイカちゃん?」
「もう、戻らなくていいのか?」
「いや、まだ大丈夫だよ。あとちょっとだけはなそう」
「……そうか」
「そういえば、ユイカちゃんここでいつも何しているの? お家では遊ばないの?」
「…………」
躊躇もなくズケズケと聞いてくる優人に悩ましげな表情を見せた。
それをみた優人は慌てて首を振った。
「ごめん! もう聞かないよ。言いたくないことなんだったら」
「以前にも聞いていたな、似たようなことを」
「うっ……」
「そんなに私が何をしているのか気になるのか?」
「それは……」
ユイカは考えてしまう。
そろそろ、彼には打ち明けてもいいんじゃないかと。
「なら、明日また遊べ。その時話してやる」
「え……明日?」
「そうだ。なんだ、無理なのか?」
「ごめん、明日は……友達と一緒に祭りに行く約束をしているんだ……」
「そう……なのか」
友達といわれて思い出すのはやはり昨日の海岸の人物だ。
あの子たちのことを言っているのだろうか。
「その友達というのは……女の子なのか……」
「え」
「……」
質問に対して彼の答えを待った。
かなり戸惑った様子だった彼だったがしばらくして、首を振った。
「違うよ。男の子」
ほっと安心する。
男の子だとすれば昨日の子ではないのか。
「明日はどうしてもそれだから無理なんだ。でも、明後日なら遊べるからその時に遊ぼうよ」
「わかった……なら、その時私がいつもどうしているのか教えてやる」
そのような約束を交わした、あと彼は携帯電話を見た。
「ごめん、僕そろそろ」
「そうか」
「じゃあ、明後日」
「ああ」
彼が走り去っていく後姿をしばらく見送ろうとした後だ、彼が再び戻ってきてユイカに何かを手渡した。
「これ、よかったら使って」
「これって……」
それは折り畳み傘だった。
男の子っぽいデザインから少年が普段使っているものだと判断できた。
そのまま、優人は踵を返して元来た道を戻って帰っていった。
森林に残ったユイカは手渡された傘を大事そうにしながら胸に抱きしめた。
後に彼に裏切られるとは知らずずっと彼を思い続けて。
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