同居人の一輝くんは、ちょっぴり不器用でちょっぴり危険⁉

朝陽七彩

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ちょっぴりウソつきな男友達くん

P104

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「されたの?」


『された』って。
 何を?


「キス」


 出てきた、とんでもない言葉が。
 一輝くんの口から。





 たった一言。
 なのだろう、他の人たちにとっては。

 だけど。
 私にとっては。
 あまりにも衝撃的な言葉。



『キス』
 聞いてしまったからだろう、その言葉を。

 すでにパニック状態、頭の中は。
 そんな中。
 さらにスピードを上げ悪化してしまっている。


 わからない、もう。
 なにがなんだか、全く。



 どうやら。
 停止してしまった、完全に。
 頭の中の回路。


「結菜ちゃん、
 マジでわかりやす過ぎ」


 停止中、頭の中の回路。

 そんな私とは違い。
 余裕であろう一輝くんは完全に呆れ顔。


「でもっ、
 頬にだよっ‼」


 頭の中の回路。
 停止中だから何も浮かばない、何も言えない。
 そう思っていた。

 それなのに。
 出た、言葉が。







 だけど。
 おかしい、何かが。

 何かが、ではない。
 おかしい、完全に。





 一輝くんの言葉。
 それの返答には相当まずい言葉。



『頬にだよ』
 なぜそんな大胆な言葉が出てきてしまったのだろう。

 やっぱり頭の中の回路が停止していて通常通りの考えや判断ができなかったのかもしれない。


 たぶん頭の中が混乱していて誤った働きをしてしまったのだろう。

 頬にされただけだからセーフでしょ?
 そう思ってしまった、一瞬。



 ならなかったのに、そんな考え方には。
 通常通りなら。


「……本当にされたんだ」


 え。


「ええっ⁉」


 今、何が起きているのか。

 理解をする。
 そのことが怖くて。
 引き続き頭の中の回路を停止状態に。


 考えたら。
 きっと恐ろしくなってきてしまう。
 そう思ったから。


「ただ鎌をかけただけなのに。
 まさか本当にキスされてたとは」


 予感がした、なんとなく。

『本当にされたんだ』
 一輝くんの言葉を聞き。
 思った、その瞬間。
 鎌をかけられたのかもしれない、と。


 だけど。
 本当にそうだったとは。


「騙したんだっ、一輝くんっ」


 まだ戻っていない、通常通りに。
 頭の中が。


 それだからだろうか。
『騙した』
 言ってしまった、そんな言葉を。


「騙したって人聞き悪い」


 冷静さが欠けている。
 そんな私とは違い。
 一輝くんは不気味なくらいに冷静。


 今の一輝くんの表情は。
 呆れたような冷ややかなような。
 一言では表現できない表情をしている。

 そんな一輝くんの表情を見て。
 なんとも言えない気持ちになった。





 だけど。
 そういう気持ちになった。
 それと同時に。
 思った、こんなことも。


 言った、一輝くんは。
『人聞き悪い』と。

 だけど。
 騙しているようなものではないだろうか。



 言いたい、そのことを一輝くんに。

 だけど。
 やめておこう、言うのは。
 そう思った。


 今の一輝くんに何を言っても。
 不利な方に働きそうだから。


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