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第十一話

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「もう、前日か。早いなー」

華が背伸びをしながら言った。薫もそれに頷くように

「そうだな。明日だな」

「ねぇ、一つ聞いてもいい?」

「何が?」

「なんで、手を挙げなかったの?文化祭のとき、和装カフェとか、白雪姫とか、決める時!薫だけ手を挙げなかったでしょ?」

「それはさぁ、誰が好き好んで自分だけのものを人に見せねぇといけないんだってこと!」

「自分、だけの、もの?」

「そう!華の和装とか、白雪姫姿の華とか、独り占めしたいんだよ!俺以外の奴と華がキスするなんて考え……」

「しないでしょ!普通、寸止めだよ!」

「寸止めでもな駄目なんだよ!だが、俺達の白雪姫は本当にするんだぞ!」

「……えっ?」

「台本見てみろよ」

華が台本を見る。

「うわぁー……気づかなかった……薫に清書を任せた私が馬鹿だった……」

「残念だな!」

「はぁ~、絶対しないから!」

「なぁ、駅前に新しいケーキ屋が出来たんだ!行かねぇか?」

「いいよ!」



「うわぁー!沢山ある!どれにしようかな?」

「俺はチーズケーキセット!」

「じゃあ、私はガトーショコ……抹茶ケーキで!」

「好きなの食べれば?」

「いいの!これで!それに、古都っぽいでしょ?このデザイン!」


そして、ケーキが運ばれてきた。華は目を輝かせている。そして、胸の前で、「いただきます」といい、すぐさま口に運んだ。

「んー!美味しい!やっぱりこれで正解だね!」

「チーズケーキもうめぇ~」

「薫、コーヒに砂糖こんなに入れるの?」

「普通だろ?」

と言いながら、尋常ではない量の砂糖を流し込んでいる。そして、そのコーヒーを、恐る恐る口に運んだ。

「あっつい!にげーっ!」

薫は叫んでしまった。華が呆れながら……

「苦手だったら、飲まなきゃいいのに……」

と言った。それに負けじと、

「これは、戦いなんだよ!」

と言う薫。

「昔から変わってないね。そういう所。猫舌の所とか、甘いのが大好きな所とか……」

「別にいいだろ!」

「薫、可愛い!」

「やめろって!」

薫の顔が、赤くなっていた。



店を出た頃、空から雫がぽたぽたと落ちてきた。

「雨だ!」

「華、傘持ってるよな?」

そう言って薫は華の方を見る。華は

「あっ、あっ、あーーーーーーーっ!学校に傘忘れてきた……」

「えっ?あの華が?マジかよ……」

「お金持ってないから、タクシーも……薫携帯持ってないよね……」

「ああ、俺は防犯ブザーしか持ってない!」

「そうだよね……」

「走るぞ!華!」

「えっ?もっと、方法考えて……」

薫は華の手を握り、走った。



二人は、屋根のある所で少し休憩することにした。

「濡れたね……」

「大丈夫か?」

「うん」

「華これ着とけ!」

そう言って薫が渡したのは自分が着ていたジャケットだった。

「薫、風邪ひくよ!明日は文化祭なのに……」

「大丈夫だ!ほら、はやく着ろって!」

「ありがとう……」

「華はここで待ってろ!俺が迎えの車呼んでくるから!」

「大丈夫だよ!、……薫!待って……」

薫は一人雨の中に飛び込んで行った。



しばらく、華が待っていると迎えの車が来た。

「お嬢様、お待たせして申し訳ございません。」

「いいえ。薫様は?」

「薫様は、私を呼んで、家に帰られたのではないかと。」

「そう、乗らしていただきますね」

「はい」




家に帰り、華はジャケットを洗い、乾かした。出来るだけ早く、薫に礼を言いたいのだ。華は決めた。今から薫の家に行き礼を言うと。急いで用意をして、玄関へ向かった。

「お父様、今から薫様の家に参ります!」

「何用で?」

「ジャケットを貸していただいておりましたので、返却に……」

「分かった。車を用意しよう」

薫の家はすぐ近くなのだが、心配性な父のためいつもこうなってしまう。

「夜も遅い、くれぐれも迷惑にならぬようにな!」

「はい」





「薫!」

「華!どうしたんだ?」

「お礼を言いたくて……これ、ジャケット!」

「もう、乾かしたのか!」

「うん!今すぐ言いたかったから!」

「ありがとう!薫!」

満面の笑みを浮かばせる華に、薫の頬はほんのり紅くなっていた。





そして、文化祭当日となった。  

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