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9話 生徒会裁判 弐
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[天方祈 さん の生徒会裁判の開始時刻が決定致しました。
・開始時刻 23時00分
生徒特別指導室にて、行います。]
そんな文字の羅列が、学園から支給されているスマートフォンに映し出される。
はぁ~、とため息をつく祈。
カンタには、絶対やめないから、などと言ったが、本心は不安で一杯だった。
自分で庶民だと認めてしまったのだから。それに、人間であることもバレたら、もう、退学はやむを得ないだろう。
問題は、この状況をどのように打破していくか。とはいっても、庶民で人間であることは事実。それを、どうやって弁明するのか。
否定し続ける?いや、それは無理だ。何故なら相手は吸血鬼。吸血鬼は人間の血を吸うのだから、人間が持つ、血の香りでもうバレる。一応、香りを消すペンダントは付けているのだが、エマは【拷問】と言っていたので、何をするかは分からない。もし、無理矢理血を吸われたら、もう否定できない。
さあ、どうする?天方祈!
…………あ、
職権乱用でいこうか…
私は学校教師管理顧問だぞ!逆らうな!的な?
ダメだ。この事は唯月四兄弟にしか言ってないし、理事長からも正式には任命されてないし、信憑性がない!それ以外となると…
…………何も浮かんでこない!
どうしよう…
ふと、時計を見てみる祈。時計が指している時刻は、22時30分である。
あ、もう時間!行かないと…
一日中考えたが、見つからなかった。このままでは、本当に……ううん!こういう時こそ、ポジティブ思考!何か、あるかもしれな…
「侵入者だ!逃げろ!」
祈が扉を開けた途端、そんな声が響き渡る。
「侵入者?一体誰だ?」
「頭に、つ、ツノが生えた、か、怪物らしい!」
そう言って、逃げ惑う吸血鬼達。
そうか、彼らは、裕福な純血の吸血鬼等は、守ってもらっているのか。自分達は戦わず、のうのうと、血を吸って。怖いものが来たら、怯えて。強い権力を持ちながら。
なんと、弱い生き物なのだろう。彼らも。こうして怯えている私も。
その時、背後に大きな気配を感じた。
祈が振り返ったその先には、【鬼】の姿があった。
しかし、祈は至って冷静だった。
「お願い、みんなを護って。」
そう、祈が呟いた途端、あたりは眩しく輝いて、他の吸血鬼等も目を瞑った。
そして、その光が消えた後、そこに鬼達の姿はなかった。
「うそ、だろ?あの鬼達、一体、どこへ…?」
「もしかして、天方祈が俺たちを、護って…?」
「い、いや、そんなはず無いだろ?あ、アイツは、庶民、なんだぞ?ま、魔法なんて、使えない、だろ…?」
先程の、光を見た者はひどく驚く。何故なら、この状況を打開したのは、誰でもなく祈だと云うことを、確信したからである。あの瞬間、祈が、『お願い、みんな護って。』と言った時、祈しかいない場所から、眩しく光ったのだから。
だが、皆はこれをなかった事にするらしい。これが知れ渡れば、生徒会裁判で、祈が退学するリスクが下がる。と云う事は、庶民でも、この学園に通えるかもしれない。そうすれば、庶民でも、入学許可が下りるかもしれない。そうなれば、この学園の品位は下がり、此処に通う存在意義もなくなってくる。それだけは、避けたいようだ。
皆はどれだけ、この学園に執着しているのだろう。そんなことを、思う祈だった。
そんな中、特別生徒指導室に着く祈。そして、祈は深く深呼吸をして、その扉を開けるのだった。
・開始時刻 23時00分
生徒特別指導室にて、行います。]
そんな文字の羅列が、学園から支給されているスマートフォンに映し出される。
はぁ~、とため息をつく祈。
カンタには、絶対やめないから、などと言ったが、本心は不安で一杯だった。
自分で庶民だと認めてしまったのだから。それに、人間であることもバレたら、もう、退学はやむを得ないだろう。
問題は、この状況をどのように打破していくか。とはいっても、庶民で人間であることは事実。それを、どうやって弁明するのか。
否定し続ける?いや、それは無理だ。何故なら相手は吸血鬼。吸血鬼は人間の血を吸うのだから、人間が持つ、血の香りでもうバレる。一応、香りを消すペンダントは付けているのだが、エマは【拷問】と言っていたので、何をするかは分からない。もし、無理矢理血を吸われたら、もう否定できない。
さあ、どうする?天方祈!
…………あ、
職権乱用でいこうか…
私は学校教師管理顧問だぞ!逆らうな!的な?
ダメだ。この事は唯月四兄弟にしか言ってないし、理事長からも正式には任命されてないし、信憑性がない!それ以外となると…
…………何も浮かんでこない!
どうしよう…
ふと、時計を見てみる祈。時計が指している時刻は、22時30分である。
あ、もう時間!行かないと…
一日中考えたが、見つからなかった。このままでは、本当に……ううん!こういう時こそ、ポジティブ思考!何か、あるかもしれな…
「侵入者だ!逃げろ!」
祈が扉を開けた途端、そんな声が響き渡る。
「侵入者?一体誰だ?」
「頭に、つ、ツノが生えた、か、怪物らしい!」
そう言って、逃げ惑う吸血鬼達。
そうか、彼らは、裕福な純血の吸血鬼等は、守ってもらっているのか。自分達は戦わず、のうのうと、血を吸って。怖いものが来たら、怯えて。強い権力を持ちながら。
なんと、弱い生き物なのだろう。彼らも。こうして怯えている私も。
その時、背後に大きな気配を感じた。
祈が振り返ったその先には、【鬼】の姿があった。
しかし、祈は至って冷静だった。
「お願い、みんなを護って。」
そう、祈が呟いた途端、あたりは眩しく輝いて、他の吸血鬼等も目を瞑った。
そして、その光が消えた後、そこに鬼達の姿はなかった。
「うそ、だろ?あの鬼達、一体、どこへ…?」
「もしかして、天方祈が俺たちを、護って…?」
「い、いや、そんなはず無いだろ?あ、アイツは、庶民、なんだぞ?ま、魔法なんて、使えない、だろ…?」
先程の、光を見た者はひどく驚く。何故なら、この状況を打開したのは、誰でもなく祈だと云うことを、確信したからである。あの瞬間、祈が、『お願い、みんな護って。』と言った時、祈しかいない場所から、眩しく光ったのだから。
だが、皆はこれをなかった事にするらしい。これが知れ渡れば、生徒会裁判で、祈が退学するリスクが下がる。と云う事は、庶民でも、この学園に通えるかもしれない。そうすれば、庶民でも、入学許可が下りるかもしれない。そうなれば、この学園の品位は下がり、此処に通う存在意義もなくなってくる。それだけは、避けたいようだ。
皆はどれだけ、この学園に執着しているのだろう。そんなことを、思う祈だった。
そんな中、特別生徒指導室に着く祈。そして、祈は深く深呼吸をして、その扉を開けるのだった。
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