58 / 149
冒険の始まり
ハバー大陸一周の旅 3
しおりを挟む
蜘蛛絹の村から北に伸びる道を歩いていくと、左手に見覚えのある建物と、大きくて白いモノが見えてきた。
「あっ、リノ牧場だ!」
「わぁ、あれが羊ですね。大きくてモコモコですね」
一日目のお昼は、見学に訪れた事のあるリノ牧場に連絡しておいた。ここで、昼食をとり、日持ちのする肉を買う予定だ。
『あっ、父さんです。迎えに来てくれました』
皆で大きな羊を眺めていると、その間から、更に大きなミンテの父親のシスが軽い足取りで近付いてきた。
ココは、あまりの迫力に全身の毛を逆立てた。
「ココ、ミンテの父親だから、そんなに、怖がらなくて、大丈夫だよ」
『わ、分かりました…』
と、答えるも、ココは後退り、俺の後ろに隠れる。
『久しぶりです。どうですか?ウチの子は』
「こんにちは、ミンテは優秀ですよ。いろいろ器用にこなしますし、空間魔法も、すごく助かってます」
『それは、良かった。お昼の準備が出来てますので、皆さん背に乗ってください』
ミンテが、喜び父親の背に一番で飛び乗り、クラリーちゃん、リョウの順で乗り、何故か、俺がココを抱っこして乗ることに…
『か、格が違いすぎますよ。ハーフとはいえ神の子じゃないですかぁ。ワタシはペットとして作られただけですよ。魔術も初級の光魔法だけですから…ちょっと、吠えられれば、消えてしまいますよぉー』
と、半泣きで訴えてきた。
「大袈裟だなぁ、ミンテとは、しょっちゅう、じゃれ合っているのに」
『ミンテは、まだ、子供ですから…』
ココをなだめつつ、シスの背に揺られていくと、見学の時に料理をした建物の前で下ろされた。
「やぁ、やぁ、いらっしゃい。待ってましたよ。今日は、リョウ君がレシピ登録したふわふわパンケーキを用意しましたので、堪能していってください」
セルバンさんが、両手を広げ上機嫌で迎えてくれた。
「ありがとうごさまいます。その後どうでしたか?」
「ハッハッハ、あの後、ギルドと相談して、シスの湖畔でペンションと喫茶店をしている知り合いに教えてたら、瞬く間に話題になって、すごい勢いで広まりつつありますよ。シーズの市場にも出店する話も出ていますし、他の喫茶店主も習いに来てるので、新しい名物になるのは間違いないですね。ウチとしても、ブランド化した商品を使った食事処のを出す計画をしているので、また、リョウ君の意見を聞きたいのですよ。この旅から帰ってきたら、指名依頼出しますから、お願いします」
凄い勢いで話されて、思わず頷いてしまったけれど、ん?リョウに指名依頼?
「え?僕?料理は、こっちに来てからやり始めたから、よく分からないよ」
「いえいえ、調理はこちらでやりますから、味見と盛り付けの方の指導をお願いします」
「えっ?えっ?ますます、分からないことなんだけど…」
セルバンさんの勢いにリョウも戸惑ってしまい、いつの間にか俺の後ろにしがみつきなから、首を横に振っている。
「大丈夫ですよ。リョウ君の記憶を元に、パンケーキを作った従業員が転移者レシピに興味を持ちましてね。ギルドでいろいろ入手したら、ウチの製品を活かせるレシピが沢山あったんですよ。ですので、その料理の味見をお願いしたいのです。あと、その料理がどう盛り付けされていたのか、参考の為に知りたいのですよ」
「なるほど、転移者レシピのモノだから、リョウにか、それなら出来るんじゃないか?」
「う、うん、わかる範囲なら…」
「もちろんそれで十分ですので、さぁ、さぁ、中にどうぞ、直ぐに焼きますので、サラダとかスープも好きなのを選んで、待っていてください」
「うわぁ、ビュッフェって、この世界にもあったんだ」
リョウは慣れた様子で、椀を持ち早速サラダを盛っている。
「ビュッフェ?立って食べるのか?」
「え?違うよぉ、こうやって食べたいものを好きに選んで食べる事だよ」
「それは、バイキングだろ?ビュッフェは、立食パーティーや、立ったまま食べる軽食って聞いたけどなぁ…」
「ディルさん、ディルさん、どっちでも良いようですよ。昔は、そんな風に分けて考えてましたけど、最近、来た異世界人が言うには、一緒になっているようです。まぁ、違いがあるとしたら、バイキングより、ビュッフェの方が、洒落た料理が並んでいるという感じでしょうか」
「立食ではなくなったということですか?」
「そうです。ですから、好きに取って、あちらの席で召し上がってください。あっ、クラリーちゃんは、こっちに、蒸し野菜や茹で野菜がありますよ。ドレッシングも全て火を通してあるから、好きに選んで良いですよ」
「ありがとうございます」
クラリーちゃんも、笑顔で椀を取り、選び始める。
「凄いね。野菜やトッピング、ドレッシングの種類も多いし、見て見て、スープの鍋も五種類もあるし、ジュースも凄い並んでるよぉ」
凄いを連発しながらリョウが選んだのは、ルッコラを中心とした香味野菜のサラダにカリカリベーコンと粉チーズをトッピングしとものと、コンソメスープ。
クラリーちゃんは、根菜を中心とした蒸し野菜に、転移者が広めた味噌を使ったソースをかけたものと、同じく味噌を使ったスープを持ってきた。
「え?クラリーちゃん、パンケーキだよ」
「何か、おかしいですか?」
リョウがクラリーちゃんの料理をみて眉を寄せた。
「どうした?」
「んー、ニホンの感覚だと、味噌汁はご飯の時に飲むスープって思っていたから、なんか、違和感が…」
「そうなのですか?パンケーキには、合いませんか?」
「う、うーん、試してみるのはいいかも…」
「あっ、リノ牧場だ!」
「わぁ、あれが羊ですね。大きくてモコモコですね」
一日目のお昼は、見学に訪れた事のあるリノ牧場に連絡しておいた。ここで、昼食をとり、日持ちのする肉を買う予定だ。
『あっ、父さんです。迎えに来てくれました』
皆で大きな羊を眺めていると、その間から、更に大きなミンテの父親のシスが軽い足取りで近付いてきた。
ココは、あまりの迫力に全身の毛を逆立てた。
「ココ、ミンテの父親だから、そんなに、怖がらなくて、大丈夫だよ」
『わ、分かりました…』
と、答えるも、ココは後退り、俺の後ろに隠れる。
『久しぶりです。どうですか?ウチの子は』
「こんにちは、ミンテは優秀ですよ。いろいろ器用にこなしますし、空間魔法も、すごく助かってます」
『それは、良かった。お昼の準備が出来てますので、皆さん背に乗ってください』
ミンテが、喜び父親の背に一番で飛び乗り、クラリーちゃん、リョウの順で乗り、何故か、俺がココを抱っこして乗ることに…
『か、格が違いすぎますよ。ハーフとはいえ神の子じゃないですかぁ。ワタシはペットとして作られただけですよ。魔術も初級の光魔法だけですから…ちょっと、吠えられれば、消えてしまいますよぉー』
と、半泣きで訴えてきた。
「大袈裟だなぁ、ミンテとは、しょっちゅう、じゃれ合っているのに」
『ミンテは、まだ、子供ですから…』
ココをなだめつつ、シスの背に揺られていくと、見学の時に料理をした建物の前で下ろされた。
「やぁ、やぁ、いらっしゃい。待ってましたよ。今日は、リョウ君がレシピ登録したふわふわパンケーキを用意しましたので、堪能していってください」
セルバンさんが、両手を広げ上機嫌で迎えてくれた。
「ありがとうごさまいます。その後どうでしたか?」
「ハッハッハ、あの後、ギルドと相談して、シスの湖畔でペンションと喫茶店をしている知り合いに教えてたら、瞬く間に話題になって、すごい勢いで広まりつつありますよ。シーズの市場にも出店する話も出ていますし、他の喫茶店主も習いに来てるので、新しい名物になるのは間違いないですね。ウチとしても、ブランド化した商品を使った食事処のを出す計画をしているので、また、リョウ君の意見を聞きたいのですよ。この旅から帰ってきたら、指名依頼出しますから、お願いします」
凄い勢いで話されて、思わず頷いてしまったけれど、ん?リョウに指名依頼?
「え?僕?料理は、こっちに来てからやり始めたから、よく分からないよ」
「いえいえ、調理はこちらでやりますから、味見と盛り付けの方の指導をお願いします」
「えっ?えっ?ますます、分からないことなんだけど…」
セルバンさんの勢いにリョウも戸惑ってしまい、いつの間にか俺の後ろにしがみつきなから、首を横に振っている。
「大丈夫ですよ。リョウ君の記憶を元に、パンケーキを作った従業員が転移者レシピに興味を持ちましてね。ギルドでいろいろ入手したら、ウチの製品を活かせるレシピが沢山あったんですよ。ですので、その料理の味見をお願いしたいのです。あと、その料理がどう盛り付けされていたのか、参考の為に知りたいのですよ」
「なるほど、転移者レシピのモノだから、リョウにか、それなら出来るんじゃないか?」
「う、うん、わかる範囲なら…」
「もちろんそれで十分ですので、さぁ、さぁ、中にどうぞ、直ぐに焼きますので、サラダとかスープも好きなのを選んで、待っていてください」
「うわぁ、ビュッフェって、この世界にもあったんだ」
リョウは慣れた様子で、椀を持ち早速サラダを盛っている。
「ビュッフェ?立って食べるのか?」
「え?違うよぉ、こうやって食べたいものを好きに選んで食べる事だよ」
「それは、バイキングだろ?ビュッフェは、立食パーティーや、立ったまま食べる軽食って聞いたけどなぁ…」
「ディルさん、ディルさん、どっちでも良いようですよ。昔は、そんな風に分けて考えてましたけど、最近、来た異世界人が言うには、一緒になっているようです。まぁ、違いがあるとしたら、バイキングより、ビュッフェの方が、洒落た料理が並んでいるという感じでしょうか」
「立食ではなくなったということですか?」
「そうです。ですから、好きに取って、あちらの席で召し上がってください。あっ、クラリーちゃんは、こっちに、蒸し野菜や茹で野菜がありますよ。ドレッシングも全て火を通してあるから、好きに選んで良いですよ」
「ありがとうございます」
クラリーちゃんも、笑顔で椀を取り、選び始める。
「凄いね。野菜やトッピング、ドレッシングの種類も多いし、見て見て、スープの鍋も五種類もあるし、ジュースも凄い並んでるよぉ」
凄いを連発しながらリョウが選んだのは、ルッコラを中心とした香味野菜のサラダにカリカリベーコンと粉チーズをトッピングしとものと、コンソメスープ。
クラリーちゃんは、根菜を中心とした蒸し野菜に、転移者が広めた味噌を使ったソースをかけたものと、同じく味噌を使ったスープを持ってきた。
「え?クラリーちゃん、パンケーキだよ」
「何か、おかしいですか?」
リョウがクラリーちゃんの料理をみて眉を寄せた。
「どうした?」
「んー、ニホンの感覚だと、味噌汁はご飯の時に飲むスープって思っていたから、なんか、違和感が…」
「そうなのですか?パンケーキには、合いませんか?」
「う、うーん、試してみるのはいいかも…」
0
お気に入りに追加
156
あなたにおすすめの小説
箱庭の異世界でスローライフ万歳!
文月 蓮
ファンタジー
神様が落としたコレクターズボックスの角に頭をぶつけて死んでしまった葉月は、生前プレイしていたサンドボックス型のゲームによく似た世界で、若返り、蘇った。
せっかくだから、農業やものづくりをとことん楽しんでやる。
異世界でスローライフを楽しむ主人公の、のんびり、まったりなお話。
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
【完結】お花畑ヒロインの義母でした〜連座はご勘弁!可愛い息子を連れて逃亡します〜
himahima
恋愛
夫が少女を連れ帰ってきた日、ここは前世で読んだweb小説の世界で、私はざまぁされるお花畑ヒロインの義母に転生したと気付く。
えっ?!遅くない!!せめてくそ旦那と結婚する10年前に思い出したかった…。
ざまぁされて取り潰される男爵家の泥舟に一緒に乗る気はありませんわ!
★恋愛ランキング入りしました!
読んでくれた皆様ありがとうございます。
連載希望のコメントをいただきましたので、
連載に向け準備中です。
*他サイトでも公開中
日間総合ランキング2位に入りました!
【完結】実家に捨てられた私は侯爵邸に拾われ、使用人としてのんびりとスローライフを満喫しています〜なお、実家はどんどん崩壊しているようです〜
よどら文鳥
恋愛
フィアラの父は、再婚してから新たな妻と子供だけの生活を望んでいたため、フィアラは邪魔者だった。
フィアラは毎日毎日、家事だけではなく父の仕事までも強制的にやらされる毎日である。
だがフィアラが十四歳になったとある日、長く奴隷生活を続けていたデジョレーン子爵邸から抹消される運命になる。
侯爵がフィアラを除名したうえで専属使用人として雇いたいという申し出があったからだ。
金銭面で余裕のないデジョレーン子爵にとってはこのうえない案件であったため、フィアラはゴミのように捨てられた。
父の発言では『侯爵一家は非常に悪名高く、さらに過酷な日々になるだろう』と宣言していたため、フィアラは不安なまま侯爵邸へ向かう。
だが侯爵邸で待っていたのは過酷な毎日ではなくむしろ……。
いっぽう、フィアラのいなくなった子爵邸では大金が入ってきて全員が大喜び。
さっそくこの大金を手にして新たな使用人を雇う。
お金にも困らずのびのびとした生活ができるかと思っていたのだが、現実は……。
異世界でのんびり暮らしてみることにしました
松石 愛弓
ファンタジー
アラサーの社畜OL 湊 瑠香(みなと るか)は、過労で倒れている時に、露店で買った怪しげな花に導かれ異世界に。忙しく辛かった過去を忘れ、異世界でのんびり楽しく暮らしてみることに。優しい人々や可愛い生物との出会い、不思議な植物、コメディ風に突っ込んだり突っ込まれたり。徐々にコメディ路線になっていく予定です。お話の展開など納得のいかないところがあるかもしれませんが、書くことが未熟者の作者ゆえ見逃していただけると助かります。他サイトにも投稿しています。
単身赴任しているお父さんの家に押し掛けてみた!
小春かぜね
恋愛
主人公の父は会社の諸事情で、短期間で有るはずの単身赴任生活を現在もしている。
休暇を取り僅かだが、本来の住まいに戻った時、単身赴任の父の元に『夏休み、遊びに行く!』と急に言い出す娘。
家族は何故かそれを止めずにその日がやって来てしまう。
短いけど、父と娘と過ごす2人の生活が始まる……
恋愛小説ですが激しい要素はあまり無く、ほのぼの、まったり系が強いです……
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
実家が没落したので、こうなったら落ちるところまで落ちてやります。
黒蜜きな粉
ファンタジー
ある日を境にタニヤの生活は変わってしまった。
実家は爵位を剥奪され、領地を没収された。
父は刑死、それにショックを受けた母は自ら命を絶った。
まだ学生だったタニヤは学費が払えなくなり学校を退学。
そんなタニヤが生活費を稼ぐために始めたのは冒険者だった。
しかし、どこへ行っても元貴族とバレると嫌がらせを受けてしまう。
いい加減にこんな生活はうんざりだと思っていたときに出会ったのは、商人だと名乗る怪しい者たちだった。
騙されていたって構わない。
もう金に困ることなくお腹いっぱい食べられるなら、裏家業だろうがなんでもやってやる。
タニヤは商人の元へ転職することを決意する。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる