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番外編
あふたぬーんてぃ(竜神様の正月休み)後編
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俺達が、朝食をとっている間になんとか人形になった竜神さまは…
「竜神様って、以外に若かったんですね…」
母さんが、ポツリとこぼしたけど、俺も同じ意見だ。
髪は、腰まである長髪でストレート、しっとりつやつやで、高貴なイメージ、色白でスッキリとした顔立ちだけど、日本人とは、ちょっと、違うような…鼻が高いのか…うーん、格好いいなぁ…
身長は、俺らとほぼ同じ、少し低いかな?という感じで、線の細い体つき…どう見ても、十代…童顔だと言い張っても、二十歳ぐらいがやっという感じだ。
「ん?そうなのか?ワシは…人界の流れでいうと…二百に、ちと足りんというところだぞ?」
うん、喋り方は変わらないから、ものすごく違和感がある。
「その外見で、ワシって言われると、ちょっと、引くね…」
「確かに、俺達と同年代にしか見えないもんな」
瑞樹と俺でそんな事をいうと、竜神様は、俺や瑞樹、正兄を見回す。
「ん?そう言われれば…しかし、ワシは、生まれでた時からワシと言っとるしなぁ…しかし、お主らの言い分も分かる。ワシのところで、計算すると…十六歳となるからのう」
「「「「十六歳?」」」」
マジか…俺たちより若かった…
「その外見だと、俺より、僕の方が合いそうですよ」
「僕か、心得た」
「…いろいろ、言いたいことはありますが、取り敢えず、外に出たら、余り喋らないで下さいね」
「?、ワシ…いや、僕は、口を開かぬ方が良いのか?」
「そうですね。今は、そんな喋り方はする人、なかなか会いませんからね…」
「う、うむ、心得た…」
濃紺の着物は、正月だからそのままで良いだろうということで、皆で外に出たけど…なにやら、視線が気になる…
改めて、客観的に見てみて、納得…
正兄とキルさんが、身長高いからそれだけでも目立つけど、精霊四人に加え竜神様も、美男美女…というか美少女…目を引くよねー、これは…
ホームステイの外国人を案内しています的な感じ?
「竜神様だけ目立つより、分散させた方が良いかと思って、精霊達も見えるようにしてもらったけど…想像以上に、みんな見てくるなぁ」
「まぁ、都会や観光地と違って、外国人がいたないからね」
「善光寺方面行けば、紛れるか?」
「そういうものでもないでしょう。皆、綺麗すぎるから」
「「……確かに」」
?、正兄と瑞樹の反応が、想像していたのと違う。どういうこと?
「見慣れすぎたな」
「うん、ちょっと、ヤバイね。もしかして、この中にいる俺達の方が浮いてる?」
あっ、そういう考えもあるのか…
「ふふふ、大丈夫ですよぉ、瑞樹様方も、美男でいらっしゃるから」
てっ、アルフさんは言うけれど…今日のアルフさんは、百六十センチ位の美少女で、いつもの涼しげな格好ではなく、ちゃんと膝丈のクリーム色のダウンコートに、白のロングブーツ、髪も母さんが編み込みにし白いフワフワした髪飾りをして、お嬢様って感じになっている。
その、アルフさんが、嬉しそうに瑞樹と腕を組んで歩いてる…
うーん、まぁ、そんなに、違和感ないかな?
そう考えれば、俺はもちろん、正兄だって似た顔立ちだ。大丈夫たろう…
「負けてるのはわかってる。深く考えないでおこう」
正兄の呟きに賛成し、正兄の会社に向かう。
正兄の勤めている雑貨店は、県内にいくつか支店がある。今から行く本店は五階建てのビルで、一、二階が店舗、三、四階が事務所や会議室、資料室やらで、五階が、社長宅ということだ。
店舗の前に広がる広い駐車場は満車状態。
「スゴいね。ここが、満車になっているの初めて見た」
「俺も」
「去年も、二日、三日は、こうだったぞ」
「あっ、そうだったんだ。俺達、四日に来たからね」
「その時は、満車ではなかったけど、結構混んでたから、滞在時間短かったし」
「お前らなぁ…」
『しょうがないじゃない、苦手なんだから、で、どうするの?かなり賑わっているみたいよ?』
正兄の肩に乗った母さんに促され、店内を見ると、人、人、人…うーん、凄いな。しかも、ほとんどが、女性…
「凄いなぁ。ミニ栽培セットの福袋、物色したかったけど、どうしよう…」
「ああ、あれは、メインが、桜か、松か、紅葉で分かれてるんだ。後は、バジルやミニトマト、大葉に、小ネギ、三つ葉、ワイルドストロベリー、チャービルの中から三つと、後、二種類のハーブの種が入って、二千円だな」
「桜、松、紅葉…迷うなぁ、どうしよう…」
「予算は?」
「五千円」
「お年玉は?」
「うーん、使っても良いけど…そうなると、バス代が…」
「じゃぁ、一つは俺が買うよ。バイトしてるし、バス代も瑞樹より使わないし、育てたハーブとか、貰ってるしな」
「いいのか?アフタヌーンティーセット、高いんだろ?」
「まぁ、お正月だし、普通に買ったら、倍ぐらい掛かるセットだから、得だと思えるから良いよ」
「やったー。そうと決まれば、ちゃちゃっと行ってこよう」
店内を見て回りたかったけど、それは諦め、目当ての物だけ買ってサッサッと店を出る。
「あれ?正兄は?」
「何か、店の人と話してたよ」
「そうか、じゃぁ、待ってる間に、お参りしてくるか…」
店の入り口から少し外れたところで、正兄を待つ間、秋葉さんにお参りに行くことにする。ファラムは、抱っこしてるからだけど、キルさんと竜神様もついてきた。
「なにやら、こまい奴がおるぞ」
ここは、小さな社でそのまえに一メートルばかりの石畳に人一人が、やっと通れる鳥居がある。そこに、近づくと、竜神様が呟いた。
「こまい?」
「この国の…妖精でしょうか?五匹ほどいます」
「妖精が、五匹?どういうこと?」
「ほれ、社の前を見よ」
竜神様とキルさんに促され、ファラムが指差す方を見ると、赤色で輪郭がボヤけているネズミみたいな動物が五匹、綺麗に横一列で俺達を迎えてた。
「火鼠か、ここの守りをしてるのか?」
『そうでございます。昨晩、使いのものがきて、我らの悩み、こう様に相談すれば解決すると云われました』
「なぬ?ワ…僕か?して、その悩みとは?」
『はい、ここの社の周りにいる人間達は、信心深く、いつも綺麗に掃除もし、季節の花も飾ってくださりとても住み心地が良いのですが…最近は、火を使うものが少ないのです。ですので、我らの居場所が無くなりつつあるのです』
「なるほどのう。僕のところで、面倒を見ろということか?」
『あっ、いえ、こう様のところには、烏天狗の方々が、おられますので、ただ、私達は、火を使う人間達を紹介してほしいのです』
「そうなのか?そんなことなら、ワシの社の周りの人間達は、まだ火を使っておるぞ、ここにいる、光輝も火を使い料理をしとる」
『本当ですか?取り敢えず、この三人を預かってもらえませんか?』
そう言って、俺の方に、三人…三匹の鼠が押し出されてきた。見れば、竜神様と話をしている二匹より小さいような…えっと、親子?
「あっ、預かるって?どうするの?普通の家だよ」
『竈の番が我らの仕事ですので、火のそばであれば良いだけです。火を使っている知り合いの方がいましたら、別けても大丈夫ですよ。一匹で十分役立ちますよ』
『ええ、保証しますよ。しっかりと、教育してありますので』
えっと、揉み手でそんな事を言われても、怪しい商人のような鼠にしか見えないんですけど…
俺がそんな風に怪しんでると、キルさんとファラムが火鼠に近づいた。
『こっ、こちらの方々は…』
火鼠達が一斉に後退り、社の石壁に張り付くようにして目を見開き、キルさん、ファラムを見上げる。
「えっと、俺と契約している精霊達だよ」
『は、はは、もう、何なりと、申し付けくださいませ。誠心誠意御使い致します』
「え?どういうこと?」
「ん?知らんのか?お前達についてる精霊達は、我らの長老方と同じ位の古き精霊だぞ。近年生まれた、妖精達では、太刀打ちできんわ」
まぁ、紀元前の俺らの魂と契約したんだった…それ以前から、漂っていたとか言っていたし…
ああなるのが、本来の姿なのか?トルト王やルフナさんは、特殊ってこと?
「あっ、まぁ、そうなのかな…って、竜神様は?」
「ん?言ったであろう、ワ…僕は、生まれでた時からこうであったと…だから、長老方が五月蝿いのだ」
ん?なんとなく自覚してる?生まれた時から、こんな風に話されたら、かわいげないよねぇ…
だから、単身赴任?左遷?のような状態なのかな?
「光輝さま、少々気になるところはありますが、能力的には、問題ないようです。どうしますか?連れて行きますか?」
「えっと、そうだね…ちょっと、家主と相談してくるよ」
相談した家主の正兄は、鼠年で縁起が良いからと、即OK…そんな感じで、新たに、火鼠の妖精が我が家の住人に…何か、昨年夏から、凄い勢いで住人が増えてる感じがする…
そして三日目、皆が楽しみにしていたアフタヌーンティーをすることに、竜神様の送別と新たに来た妖精達の歓迎会も兼ねて準備に入ると、その妖精達もお手伝い、いろいろなお菓子やパンが焼き上がる。何気に、大活躍、焼き物の仕上がり具合が絶妙で、すばらしいです。
妖精達のテーブルの真ん中に、三段になったお皿があり、一番下は、サンドイッチや、菓子パン、二段目は、包みパイに、キッシュ、一番上には、クッキーやビスケットが積まれてる。その段になったお皿の周りにも、ゼリーやプリンも数種類…んー、我ながら、頑張った。精霊や妖精達の力借りまくりだけどね…
『ほほぅ、これが、あふたぬーんてぃか、素晴らしいのう』
竜神様は、いつも通りの小さな竜の姿になって、妖精達とテーブルを囲んでる。烏天狗の二人もテンション高めで、なにやら話し込んでる。母さんも、ご機嫌で妖精達のと紅茶選びから楽しんでいる。更に、キルさんやファラム、ダリルくんとアルフさんまで、妖精達のと同じサイズになってテーブルへ…
「大きさが自由自在の精霊達は、良いなぁ」
「だね。基本必要ないとか言ってたのに、ちゃっかり、座ってるし、食べること好きだよね」
「うん、でもまぁ、普通サイズで催促せれるより、妖精達や、母さんに合わせたので良いから、材料費も押さえられていいけどね」
「まぁ。確かに、妖精達も、ルフナさんも、来たときより、落ち着いてきたしな。このサイズでも良いのか」
そういって、俺達は、ダイニングテーブルで、直径二センチ程の包みパイや、クッキー、五センチ程のパンを手に取る。
「まっ、味は、良いけど、腹にたまらんな」
「でも、楽しいでしょ。いろいろあって」
「確かに、これなら、全種類食べれそうだ」
「流石にそれは…でも、まぁ、これで、竜神様も満足して帰ってくれるんじゃない?」
「だな。これで暫く大人しくしていてくれると良いな」
そんな会話をしていると、妖精達のテーブルから、フワリと竜神様が飛び出して、ふよふよと俺達のところまで飛んでくる。
「どうしました?何か、足りないものでも?」
「いや、あれは満足しておる。ただな…その…」
「「?」」
なにやら、言いにくそうに、竜神様がもじもじしている。と、いうか、うねうねしてる…その仕草は、普通に蛇に見えるので止めてほしいです。
「正月休みが。三日と言うたがのう、人界の流れでは無く、ワ…僕のところの流れで三日なのじゃ…」
「ん?それは、どういうこと…あ、人界で二百歳でも…実際は十六歳でしたっけ?ということは…」
「ふむ、あちらの一日は、こちらでは。十二日程になるな」
「つまり、あちらでは、竜神様方々が出掛けてから一日もたってないと…」
「…まぁ、そうなるな」
「じゃぁ、帰るのも、今日ではなく…えっと、三十三日後?」
「そうなるな。こちらでは…節分か、それまで、世話になるな」
そう言って、ふよふよとまたお茶会に戻っていく…
「マジか…」
俺達は、三人揃ってため息をついた。
この三日、特に問題なかったから大丈夫だよね…と思いながら…
「竜神様って、以外に若かったんですね…」
母さんが、ポツリとこぼしたけど、俺も同じ意見だ。
髪は、腰まである長髪でストレート、しっとりつやつやで、高貴なイメージ、色白でスッキリとした顔立ちだけど、日本人とは、ちょっと、違うような…鼻が高いのか…うーん、格好いいなぁ…
身長は、俺らとほぼ同じ、少し低いかな?という感じで、線の細い体つき…どう見ても、十代…童顔だと言い張っても、二十歳ぐらいがやっという感じだ。
「ん?そうなのか?ワシは…人界の流れでいうと…二百に、ちと足りんというところだぞ?」
うん、喋り方は変わらないから、ものすごく違和感がある。
「その外見で、ワシって言われると、ちょっと、引くね…」
「確かに、俺達と同年代にしか見えないもんな」
瑞樹と俺でそんな事をいうと、竜神様は、俺や瑞樹、正兄を見回す。
「ん?そう言われれば…しかし、ワシは、生まれでた時からワシと言っとるしなぁ…しかし、お主らの言い分も分かる。ワシのところで、計算すると…十六歳となるからのう」
「「「「十六歳?」」」」
マジか…俺たちより若かった…
「その外見だと、俺より、僕の方が合いそうですよ」
「僕か、心得た」
「…いろいろ、言いたいことはありますが、取り敢えず、外に出たら、余り喋らないで下さいね」
「?、ワシ…いや、僕は、口を開かぬ方が良いのか?」
「そうですね。今は、そんな喋り方はする人、なかなか会いませんからね…」
「う、うむ、心得た…」
濃紺の着物は、正月だからそのままで良いだろうということで、皆で外に出たけど…なにやら、視線が気になる…
改めて、客観的に見てみて、納得…
正兄とキルさんが、身長高いからそれだけでも目立つけど、精霊四人に加え竜神様も、美男美女…というか美少女…目を引くよねー、これは…
ホームステイの外国人を案内しています的な感じ?
「竜神様だけ目立つより、分散させた方が良いかと思って、精霊達も見えるようにしてもらったけど…想像以上に、みんな見てくるなぁ」
「まぁ、都会や観光地と違って、外国人がいたないからね」
「善光寺方面行けば、紛れるか?」
「そういうものでもないでしょう。皆、綺麗すぎるから」
「「……確かに」」
?、正兄と瑞樹の反応が、想像していたのと違う。どういうこと?
「見慣れすぎたな」
「うん、ちょっと、ヤバイね。もしかして、この中にいる俺達の方が浮いてる?」
あっ、そういう考えもあるのか…
「ふふふ、大丈夫ですよぉ、瑞樹様方も、美男でいらっしゃるから」
てっ、アルフさんは言うけれど…今日のアルフさんは、百六十センチ位の美少女で、いつもの涼しげな格好ではなく、ちゃんと膝丈のクリーム色のダウンコートに、白のロングブーツ、髪も母さんが編み込みにし白いフワフワした髪飾りをして、お嬢様って感じになっている。
その、アルフさんが、嬉しそうに瑞樹と腕を組んで歩いてる…
うーん、まぁ、そんなに、違和感ないかな?
そう考えれば、俺はもちろん、正兄だって似た顔立ちだ。大丈夫たろう…
「負けてるのはわかってる。深く考えないでおこう」
正兄の呟きに賛成し、正兄の会社に向かう。
正兄の勤めている雑貨店は、県内にいくつか支店がある。今から行く本店は五階建てのビルで、一、二階が店舗、三、四階が事務所や会議室、資料室やらで、五階が、社長宅ということだ。
店舗の前に広がる広い駐車場は満車状態。
「スゴいね。ここが、満車になっているの初めて見た」
「俺も」
「去年も、二日、三日は、こうだったぞ」
「あっ、そうだったんだ。俺達、四日に来たからね」
「その時は、満車ではなかったけど、結構混んでたから、滞在時間短かったし」
「お前らなぁ…」
『しょうがないじゃない、苦手なんだから、で、どうするの?かなり賑わっているみたいよ?』
正兄の肩に乗った母さんに促され、店内を見ると、人、人、人…うーん、凄いな。しかも、ほとんどが、女性…
「凄いなぁ。ミニ栽培セットの福袋、物色したかったけど、どうしよう…」
「ああ、あれは、メインが、桜か、松か、紅葉で分かれてるんだ。後は、バジルやミニトマト、大葉に、小ネギ、三つ葉、ワイルドストロベリー、チャービルの中から三つと、後、二種類のハーブの種が入って、二千円だな」
「桜、松、紅葉…迷うなぁ、どうしよう…」
「予算は?」
「五千円」
「お年玉は?」
「うーん、使っても良いけど…そうなると、バス代が…」
「じゃぁ、一つは俺が買うよ。バイトしてるし、バス代も瑞樹より使わないし、育てたハーブとか、貰ってるしな」
「いいのか?アフタヌーンティーセット、高いんだろ?」
「まぁ、お正月だし、普通に買ったら、倍ぐらい掛かるセットだから、得だと思えるから良いよ」
「やったー。そうと決まれば、ちゃちゃっと行ってこよう」
店内を見て回りたかったけど、それは諦め、目当ての物だけ買ってサッサッと店を出る。
「あれ?正兄は?」
「何か、店の人と話してたよ」
「そうか、じゃぁ、待ってる間に、お参りしてくるか…」
店の入り口から少し外れたところで、正兄を待つ間、秋葉さんにお参りに行くことにする。ファラムは、抱っこしてるからだけど、キルさんと竜神様もついてきた。
「なにやら、こまい奴がおるぞ」
ここは、小さな社でそのまえに一メートルばかりの石畳に人一人が、やっと通れる鳥居がある。そこに、近づくと、竜神様が呟いた。
「こまい?」
「この国の…妖精でしょうか?五匹ほどいます」
「妖精が、五匹?どういうこと?」
「ほれ、社の前を見よ」
竜神様とキルさんに促され、ファラムが指差す方を見ると、赤色で輪郭がボヤけているネズミみたいな動物が五匹、綺麗に横一列で俺達を迎えてた。
「火鼠か、ここの守りをしてるのか?」
『そうでございます。昨晩、使いのものがきて、我らの悩み、こう様に相談すれば解決すると云われました』
「なぬ?ワ…僕か?して、その悩みとは?」
『はい、ここの社の周りにいる人間達は、信心深く、いつも綺麗に掃除もし、季節の花も飾ってくださりとても住み心地が良いのですが…最近は、火を使うものが少ないのです。ですので、我らの居場所が無くなりつつあるのです』
「なるほどのう。僕のところで、面倒を見ろということか?」
『あっ、いえ、こう様のところには、烏天狗の方々が、おられますので、ただ、私達は、火を使う人間達を紹介してほしいのです』
「そうなのか?そんなことなら、ワシの社の周りの人間達は、まだ火を使っておるぞ、ここにいる、光輝も火を使い料理をしとる」
『本当ですか?取り敢えず、この三人を預かってもらえませんか?』
そう言って、俺の方に、三人…三匹の鼠が押し出されてきた。見れば、竜神様と話をしている二匹より小さいような…えっと、親子?
「あっ、預かるって?どうするの?普通の家だよ」
『竈の番が我らの仕事ですので、火のそばであれば良いだけです。火を使っている知り合いの方がいましたら、別けても大丈夫ですよ。一匹で十分役立ちますよ』
『ええ、保証しますよ。しっかりと、教育してありますので』
えっと、揉み手でそんな事を言われても、怪しい商人のような鼠にしか見えないんですけど…
俺がそんな風に怪しんでると、キルさんとファラムが火鼠に近づいた。
『こっ、こちらの方々は…』
火鼠達が一斉に後退り、社の石壁に張り付くようにして目を見開き、キルさん、ファラムを見上げる。
「えっと、俺と契約している精霊達だよ」
『は、はは、もう、何なりと、申し付けくださいませ。誠心誠意御使い致します』
「え?どういうこと?」
「ん?知らんのか?お前達についてる精霊達は、我らの長老方と同じ位の古き精霊だぞ。近年生まれた、妖精達では、太刀打ちできんわ」
まぁ、紀元前の俺らの魂と契約したんだった…それ以前から、漂っていたとか言っていたし…
ああなるのが、本来の姿なのか?トルト王やルフナさんは、特殊ってこと?
「あっ、まぁ、そうなのかな…って、竜神様は?」
「ん?言ったであろう、ワ…僕は、生まれでた時からこうであったと…だから、長老方が五月蝿いのだ」
ん?なんとなく自覚してる?生まれた時から、こんな風に話されたら、かわいげないよねぇ…
だから、単身赴任?左遷?のような状態なのかな?
「光輝さま、少々気になるところはありますが、能力的には、問題ないようです。どうしますか?連れて行きますか?」
「えっと、そうだね…ちょっと、家主と相談してくるよ」
相談した家主の正兄は、鼠年で縁起が良いからと、即OK…そんな感じで、新たに、火鼠の妖精が我が家の住人に…何か、昨年夏から、凄い勢いで住人が増えてる感じがする…
そして三日目、皆が楽しみにしていたアフタヌーンティーをすることに、竜神様の送別と新たに来た妖精達の歓迎会も兼ねて準備に入ると、その妖精達もお手伝い、いろいろなお菓子やパンが焼き上がる。何気に、大活躍、焼き物の仕上がり具合が絶妙で、すばらしいです。
妖精達のテーブルの真ん中に、三段になったお皿があり、一番下は、サンドイッチや、菓子パン、二段目は、包みパイに、キッシュ、一番上には、クッキーやビスケットが積まれてる。その段になったお皿の周りにも、ゼリーやプリンも数種類…んー、我ながら、頑張った。精霊や妖精達の力借りまくりだけどね…
『ほほぅ、これが、あふたぬーんてぃか、素晴らしいのう』
竜神様は、いつも通りの小さな竜の姿になって、妖精達とテーブルを囲んでる。烏天狗の二人もテンション高めで、なにやら話し込んでる。母さんも、ご機嫌で妖精達のと紅茶選びから楽しんでいる。更に、キルさんやファラム、ダリルくんとアルフさんまで、妖精達のと同じサイズになってテーブルへ…
「大きさが自由自在の精霊達は、良いなぁ」
「だね。基本必要ないとか言ってたのに、ちゃっかり、座ってるし、食べること好きだよね」
「うん、でもまぁ、普通サイズで催促せれるより、妖精達や、母さんに合わせたので良いから、材料費も押さえられていいけどね」
「まぁ。確かに、妖精達も、ルフナさんも、来たときより、落ち着いてきたしな。このサイズでも良いのか」
そういって、俺達は、ダイニングテーブルで、直径二センチ程の包みパイや、クッキー、五センチ程のパンを手に取る。
「まっ、味は、良いけど、腹にたまらんな」
「でも、楽しいでしょ。いろいろあって」
「確かに、これなら、全種類食べれそうだ」
「流石にそれは…でも、まぁ、これで、竜神様も満足して帰ってくれるんじゃない?」
「だな。これで暫く大人しくしていてくれると良いな」
そんな会話をしていると、妖精達のテーブルから、フワリと竜神様が飛び出して、ふよふよと俺達のところまで飛んでくる。
「どうしました?何か、足りないものでも?」
「いや、あれは満足しておる。ただな…その…」
「「?」」
なにやら、言いにくそうに、竜神様がもじもじしている。と、いうか、うねうねしてる…その仕草は、普通に蛇に見えるので止めてほしいです。
「正月休みが。三日と言うたがのう、人界の流れでは無く、ワ…僕のところの流れで三日なのじゃ…」
「ん?それは、どういうこと…あ、人界で二百歳でも…実際は十六歳でしたっけ?ということは…」
「ふむ、あちらの一日は、こちらでは。十二日程になるな」
「つまり、あちらでは、竜神様方々が出掛けてから一日もたってないと…」
「…まぁ、そうなるな」
「じゃぁ、帰るのも、今日ではなく…えっと、三十三日後?」
「そうなるな。こちらでは…節分か、それまで、世話になるな」
そう言って、ふよふよとまたお茶会に戻っていく…
「マジか…」
俺達は、三人揃ってため息をついた。
この三日、特に問題なかったから大丈夫だよね…と思いながら…
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