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「えー……そうかな、俺は良い関係だと思うけど。その分他のバイトなんかより給料は全然良いし、俺たちが応えれば応える程キャストさん達は輝いてくれる。キャストさん達も俺らを求めてくれるんだから、俺はやり甲斐あると思うよ?」
「へ、変ですよ、そんなの……いくら給料が良いからってそんなのおかしいです」
「これに関してはやってる内に分かるから大丈夫だって」
大丈夫なもんか!
悪びれない笑みを浮かべる一夏さんに対して俺がまた噛みつこうとしたところで、ロッカー室の扉がガチャ、と開いた。
「一夏、咲くん、ナンバー入りキャストさん達全員揃ったからこっち来て」
ーードアの隙間から顔を覗かせたのは春名さん。
手招きをしながらにこにこと人の良さそうな笑みを浮かべている。
「よっしゃ、せっかくだから全員に挨拶させて貰いなよ!」
「え、ちょ、一夏さん!まだ話が……!」
一夏さんに手を引かれ、俺は強制的にロッカー室から引っ張り出された。
訳も分からないまま先程の控室に入ると、先程まで雨月さんと晴兎さんだけしかいなかったその部屋には合計11人の男性が座っている。
テーブルを囲む大きなソファと、いくつかにのパイプ椅子に好きな様に腰を掛けて話していたりスマホを弄っていたり。
ーー勿論そこには鵺雲さんの姿もあった。
「…………」
一瞬目があった気がしたけれど、鵺雲さんはすぐに興味無さ気な表情で手元のスマホへと視線を戻す。
雑誌やテレビで観たことがあるようなイケメンが所狭しと並んでいるこの部屋は妙な緊張感が漂ってて、ごくりと喉が鳴った。
「……じゃ、幹部会議始める前に新しいボーイの紹介しとくか」
一番最初に切り出したのは、オーナーの乙女坂さん。
相変わらずガラが悪い……。
長い足を組み、煙草を吸いながら俺の方へ鋭い視線を向けてくる。
すると、他の全員の視線も俺へと向いた。
思わず俺の背筋は緊張につられ、ピンと伸びる。
「あ……えっと」
何か喋り出すべきか悩み、ちらりと乙女坂さんの方へと視線を向けると「喋れ」とばかりに顎を動かされた。
……ど、どう、しよう。
変な事言わずに名前だけでいいよな……?
変にウケとか狙って滑ったら地獄だし……。
「あ、と……咲本千紘です。咲《さき》って呼んでください。宜しくお願いします」
久しく自己紹介なんてしてなかった俺は、背中に冷や汗を滲ませながら全員に向かって頭を下げた。
するとーー
「一番大事な事言い忘れてんじゃねえよ」
鵺雲さんの低い声が室内に響き、俺に向いていた視線は鵺雲さんへと流れる。
「へ……?」
「へ、変ですよ、そんなの……いくら給料が良いからってそんなのおかしいです」
「これに関してはやってる内に分かるから大丈夫だって」
大丈夫なもんか!
悪びれない笑みを浮かべる一夏さんに対して俺がまた噛みつこうとしたところで、ロッカー室の扉がガチャ、と開いた。
「一夏、咲くん、ナンバー入りキャストさん達全員揃ったからこっち来て」
ーードアの隙間から顔を覗かせたのは春名さん。
手招きをしながらにこにこと人の良さそうな笑みを浮かべている。
「よっしゃ、せっかくだから全員に挨拶させて貰いなよ!」
「え、ちょ、一夏さん!まだ話が……!」
一夏さんに手を引かれ、俺は強制的にロッカー室から引っ張り出された。
訳も分からないまま先程の控室に入ると、先程まで雨月さんと晴兎さんだけしかいなかったその部屋には合計11人の男性が座っている。
テーブルを囲む大きなソファと、いくつかにのパイプ椅子に好きな様に腰を掛けて話していたりスマホを弄っていたり。
ーー勿論そこには鵺雲さんの姿もあった。
「…………」
一瞬目があった気がしたけれど、鵺雲さんはすぐに興味無さ気な表情で手元のスマホへと視線を戻す。
雑誌やテレビで観たことがあるようなイケメンが所狭しと並んでいるこの部屋は妙な緊張感が漂ってて、ごくりと喉が鳴った。
「……じゃ、幹部会議始める前に新しいボーイの紹介しとくか」
一番最初に切り出したのは、オーナーの乙女坂さん。
相変わらずガラが悪い……。
長い足を組み、煙草を吸いながら俺の方へ鋭い視線を向けてくる。
すると、他の全員の視線も俺へと向いた。
思わず俺の背筋は緊張につられ、ピンと伸びる。
「あ……えっと」
何か喋り出すべきか悩み、ちらりと乙女坂さんの方へと視線を向けると「喋れ」とばかりに顎を動かされた。
……ど、どう、しよう。
変な事言わずに名前だけでいいよな……?
変にウケとか狙って滑ったら地獄だし……。
「あ、と……咲本千紘です。咲《さき》って呼んでください。宜しくお願いします」
久しく自己紹介なんてしてなかった俺は、背中に冷や汗を滲ませながら全員に向かって頭を下げた。
するとーー
「一番大事な事言い忘れてんじゃねえよ」
鵺雲さんの低い声が室内に響き、俺に向いていた視線は鵺雲さんへと流れる。
「へ……?」
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