136 / 219
39
.
しおりを挟む「湧、忘れ物は?」
「ない!!」
「残念、ハンカチと給食セット忘れてまーす」
「あちゃぁ」
あちゃー、と絵本のセリフがブームらしい。
幼稚園の肩掛けカバンには必要なものより、大事そうに昨夜書いたお手紙と折り紙が鎮座している。
海來君あてらしい。
2人で決めたのか、「みーくん」「ゆーくん」と2人だけの呼び名を作って呼びあっている。
幼稚園の話を聞けば必ず「みーくん」という言葉が聞こえてくるほどだ。
「透、やっぱり咲夜、熱がある。学校には連絡したが…たまに様子を見てやってくれると助かる」
しんどそうだったもんなぁ、と咲夜君の朝の様子を思い出す。
何か考え事をしているようだったし遅くまで起きていたから体調を崩したのだろう。
幸い、自分は今日は休みだから安心できるだろう。
「はい、任せてください。…じゃあ2人とも、行ってらっしゃい」
湧に行ってらっしゃいのハグをして、潤也さんにも行ってらっしゃいのキスをする。
2人が出ていったのを見届けると、咲夜君の部屋をノックする。
「大丈夫?…薬飲むのに何かお腹に入れなきゃいけないんだけど、食べれそう?」
「少しなら…多分…」
熱もあるし大変だ。冷えピタを替えて氷枕を置いて台所へと戻る。
朝ごはんの用意も片付けなくては。
潤也さんのお弁当に詰めたお米の残りを鍋にかけて手早くお粥を作って少し冷ましておく。
ミルク粥風に少し味をつけたのだが食べてくれるだろうか。
スポーツドリンクのペットボトルと薬と水、お粥を持って行くと少し食べてくれた。
無事に薬も飲めたし、あとは寝るしかない。
「じゃあ、僕は休みだから。なにかあったら携帯でもなんでも言ってね」
「ありがとうございます…」
先日咲夜君に聞かれたことが頭をよぎる。
何故そんなことを聞いたのかは気になるところではあるが、あれ以上は聞くべきじゃないのかもしれない。
とりあえず、やるべき事を終わらせなければ。
なるべく煩くならないように掃除や洗濯機を回したりして午前を過ごした。
昼頃に昼食をどうするか聞くために部屋を覗くと眠っていたので様子だけみてまた後から行くことにした。
結局、咲夜君は2時過ぎに朝のお粥の残りを食べて、薬を飲んでまた眠ってしまった。
「たぁいまー」
「手洗ってね」
3時半ほどだったろうか、湧を迎えに行って家に着くと家の前に蓮君がいた。
「蓮君、だよね」
「プリントとか…届けに来ました」
そう言ってファイルに入ったプリント類を手渡したかの目の下には濃いクマが。
心做しか疲れているようだ。
「…じゃあ…」
「待って、良かったら上がってって?…」
「でも…」
「ケーキあるんだけど食べきれなくて」
「…行きます」
これじゃあ怪しいおじさんだ。
なんて思っていたが、ケーキを出した途端に首を縦に振った蓮君。
それでいいのか…?!
早く早くと急かす湧を連れて蓮君を家に引き入れた。
11
お気に入りに追加
1,498
あなたにおすすめの小説
あなたに誓いの言葉を
眠りん
BL
仁科一樹は同棲中の池本海斗からDVを受けている。
同時にストーカー被害にも遭っており、精神はボロボロの状態だった。
それでもなんとかやっていけたのは、夢の中では自由になれるからであった。
ある時から毎日明晰夢を見るようになった一樹は、夢の中で海斗と幸せな時を過ごす。
ある日、他人の夢の中を自由に行き来出来るというマサと出会い、一樹は海斗との約束を思い出す。
海斗からの暴力を全て受け入れようと決意してから狂いが生じて──。
孕めないオメガでもいいですか?
月夜野レオン
BL
病院で子供を孕めない体といきなり診断された俺は、どうして良いのか判らず大好きな幼馴染の前から消える選択をした。不完全なオメガはお前に相応しくないから……
オメガバース作品です。
【doll】僕らの記念日に本命と浮気なんてしないでよ
月夜の晩に
BL
平凡な主人公には、不釣り合いなカッコいい彼氏がいた。
しかしある時、彼氏が過去に付き合えなかった地元の本命の身代わりとして、自分は選ばれただけだったと知る。
それでも良いと言い聞かせていたのに、本命の子が浪人を経て上京・彼氏を頼る様になって…
幼馴染から離れたい。
June
BL
アルファの朔に俺はとってただの幼馴染であって、それ以上もそれ以下でもない。
だけどベータの俺にとって朔は幼馴染で、それ以上に大切な存在だと、そう気づいてしまったんだ。
βの谷口優希がある日Ωになってしまった。幼馴染でいられないとそう思った優希は幼馴染のα、伊賀崎朔から離れようとする。
誤字脱字あるかも。
最後らへんグダグダ。下手だ。
ちんぷんかんぷんかも。
パッと思いつき設定でさっと書いたから・・・
すいません。
【本編完結】αに不倫されて離婚を突き付けられているけど別れたくない男Ωの話
雷尾
BL
本人が別れたくないって言うんなら仕方ないですよね。
一旦本編完結、気力があればその後か番外編を少しだけ書こうかと思ってます。
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる