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しおりを挟む「ただいまー」
「おかえり」
「透、お邪魔してるよ~」
「兄さん来てたんだ」
夕方、買い物袋と共に帰宅するといつも通りの潤也さんと、湧を抱いた兄さんが出迎えてくれた。
面倒を見ていてくれたのだろうか。
「今からご飯作るけど…兄さん食べていく?」
「透の手料理か、ご馳走になりたいな」
じゃあ1人分追加で。
いつも次の日の自分の昼ごはんに回すために多めに作る。1人増えるくらいなんてことない。
「持つ」
そう言って荷物を持ってくれた潤也さんと部屋へ戻って着替えることにした。
「兄さんと何話してたんですか?」
「…えっと…お前の昔話をな」
「僕の昔話ですか?…」
一体何を言われていたのやら。
特に学生時代、目立ったことはしていないし、むしろ幸せな方だったのではないだろうか。
オメガだからと何かと言われるのは慣れるし、まあそんなものかも思えばそんなものだ。
何か言ってくるやつを何かで抜かすのは楽しかったし、そのおかげで成績も悪くはなかった。
その結果こうして幸せだからなかなかにいい人生だ。
仕事着からゆったりとした部屋着に着替え、2人で1階へと戻る。その途中、子ども部屋を覗くと湧とおもちゃで遊ぶ兄の姿が。
すーおじさん、なんて呼んで懐いているようだ。
兄は会社を継いだが結婚も番もいない。
一人暮らしだしたまに賑やかなのが恋しくなるのだろう。
「今日の夕飯、なんだ?」
「今日はミートスパゲッティと、温野菜、あと1品何にしようか悩んでます。…ポテトかチーズささみのどちらが好きですか?」
「そうだな…チーズささみ、この前美味かったからもう一度食べたい」
「わかりました」
本当に潤也さん、チーズが中に入っているものが好きだなと思う。
新婚の時から変わっていない。
個人的に、チーズインの食べ物を食べている時に伸びたり溢れるチーズを見る彼の顔が好きだ。
ぱぁ、と明るくなってまるで子供のよう。
ピザまんとか食べさせたいな、なんて。
キッチンに入ると彼も手伝うというので簡単な下ごしらえとお米の用意をしてもらった。
ささみに切込みを入れて、チーズイン。巻いた後に片栗粉と調味料をつけておけば食べる時に焼けばいい。
ミートソースは前に沢山作って冷凍していたから解凍。多機能オーブンレンジは便利だ。解凍もできるなんて優秀、なんでも作れる。
ホームベーカリーも今度買おうか検討中だ。
楓斗君も呼んで一緒に作れたら最高。
湧の分は短く切ったソフト麺で、取り分けたミートソースを別で手を加えて煮込む。
市販のアン○ンマンポテトに温野菜の代わりに湧用に作ってあるサラダ。
この味付けなら野菜も沢山食べてくれるのでよく出す。
この歳だとまだ好き嫌いは強制しにくいから難しい。
そんなことを考えながらささみを焼いていると潤也さんが食器を用意したり、湧の料理を先に分けて冷ましてくれていた。
一人でやるよりずっと早いし、こうして話しながら支度が出来るのは楽しい。
「美味そうだなぁ、湧」
「すーも?」
「今日はすーも一緒に食べるからねぇ」
「!!…すーここ!ここ!」
相変わらず湧もベッタリで、兄さんに隣に座るよう指示している。
湧に付けるエプロンを手渡し、大人用に出来たての料理を並べお酒のワインボトルを一本出しておく。
度数がかなり低く、これくらいなら兄さんも自分も全く酔わない。
息抜きにいいよね。
でも潤也さんはどうだろうか、大丈夫か。今日はもう1日面倒を見てもらったし、直ぐに寝てもらっても構わない。
「あ、兄さん車運転か」
「そうだなぁ…せっかく美味そうな酒なのに」
兄さん度数問わずお酒好きだもんなぁ、と少し可哀想に思えてきた。
少し家も遠いし、夜も遅くなりそうだ。
「兄さん止まっていきなよ、…ね、いいでしょう?潤也さん」
「もちろん」
「いやぁ…いいのか?じゃ、お言葉に甘えて」
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