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テオとカレル
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しおりを挟む仕事を終え、自分たちの部屋に戻ってジュダに体術を教える。
以前は基礎中の基礎しか教えなかったが、少し難易度の高いものを教えても軽々こなしてしまう。
まだ筋力もまだタッパもないが、その分の身のこなし方や身軽さ、的確さが格段に高い。
「ジュダは才能あるよ、教えるのが楽しい」
「…ほんと?」
「うん。…強くなって、誰かを守れるようになりなさい」
「うん…!」
もっと教えて、と控えめながらお願いができるようになったジュダの頭を撫でてま鍛錬を再開するとカレルが帰ってくる。
「おや…ただいま、励んでいるね」
「おかえり」
「…お…おかえりなさい…!」
いち早くカレルに駆け寄るも、慣れないようにおかえりを言うとカレルの顔が緩む。
「ただいま、楽しかったかな?」
こくこくと頷くジュダを撫でると嬉しそうに笑顔を見せる。
3人で夕食を食べて、ジュダをお風呂に入れて、3人でベッドに入る。
本当は隣にジュダの部屋もあるのだがせっかくだからと3人で寝ている。
元々、普段からそれほど夜が盛んでは無い自分たちだからできる。
皇帝達は難しいだろうな、なんて少し思ってしまった。
あと2日…ジュダはどう決断するのだろう。
次の日からジュダが朝の鍛錬に着いてくるようになった。
全てに着いてくる訳では無いが、少し離れた場所を走っていたり、剣の鍛錬を他の隊員としたりしているとやはり少し離れたところで見ている。
「…やってみる?」
思わず声をかけて作り物のナイフを1本渡す。これなら軽くて扱いやすい。
基本の構えや動作を一通り教えると楽しそうに繰り返す。
「ご子息は才能がありますね」
「まだ息子じゃないんだよ…ジュダって呼んでやって。…そうだね、俺もそう思う。これから鍛錬にちょくちょく来るだろうからよろしく」
鍛錬を終えて部屋に戻るとカレルが朝食の支度をしていた。
食事自体は宮廷の使用人が作ってくれるが、配膳は自分たちでしている。
「鍛錬は楽しかった?」
「うん…たのしかった…!」
パンケーキを不安げに1口食べるとパァと顔を輝かせて次々頬張るジュダをカレルと2人微笑ましく見守る。
明日は3人で森に行って、遊ぶ。
それが終われば試し期間は終了になる。
「ジュダは…ずっとここにいたいって思う?」
「…おもう」
「ここで暮らしたい?…孤児院じゃなくて」
もちろん、遊びにはいつでも行けるよ。と付け足すとジュダが強く頷く。
「ここがいい……。たくさんあそべて…たんれんもできる…テオとカレル…も一緒だから」
一生懸命言葉にしているのかゆっくりだが懸命に話すジュダを抱きしめたくなるがカレルに先を越された。
ジュダに手を伸ばして抱きしめるカレルが「…一緒だよ。ここがジュダの家で、家族だから」と微笑むとジュダが嬉しそうに「いえ…!…かぞく…!」と繰り返す。
とりあえず、期間が終わったらもう一度孤児院には荷物を取りに行ったりしなければならないのだが。
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