運命とは強く儚くて

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Ⅱ -1 3人での暮らし

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婚礼をあげてから直ぐに僕は后の仕事に追われることになった。
追われるとは言っても、サインをしなければならない書類、他国や属国からの使者への対応、手紙の返事。
そして一番大変だったのは后としての勉強だった。
知識から礼儀作法を最低限身につけなければならなかった。

デニスが教育係のアッシアと共に庭園で遊ぶのを東屋から眺めつつ資料に溜息をつく。
元々は様々な国が集まるこの帝国だから厳格な文化や伝統などはない。
だからこそ楽な部分もあるが、少しでも属国や地方によっての特色は知っておかなくてはいけない。
慣れたとはいえまだ覚えることは沢山ある。


「えでぃ、みてみて!」

と、デニスが花冠片手にこちらへ駈けてきた。
デニスはもう自分で走れるようにもなった。とは言っても、まだたどたどしくてアッシアが隣でハラハラしている。
アッシアは現在17歳の少年だ。北の属国出身で、文武両道のとても優秀な子だ。
王都の学舎を上位で卒業したのでこうして教育係としてデニスについてもらっている。
彼自身、貧しい生まれだったようで仕送りが満足にできると喜んでいた。まるで少し前の自分を見ているようで可愛がってしまう。

「あげる!」

「ありがとう、アッシアに手伝ってもらったの?」

「うん。えでぃ・れじぁに、貴殿をリワーフ帝国の后と認めぅ」

手を伸ばしてこちらの頭へ冠を乗せ、婚礼と共に行われた式の真似事をするデニスに笑ってしまう。

「慎んで務めさせていただきます。…ほら、おやつにしよう。アッシアも座って」

「いえ、俺は…いいんですか?」

「いいんだよ、のんびりして。僕も堅苦しいのは苦手だから」

「ありがとうございます」

バスケットからビスケットやお茶をテーブルの上に出すと甲斐甲斐しくデニスの世話を焼いてくれる。
その後は3人でおやつを食べて宮廷に戻ることにした。

「えでぃ、抱っこ」

「はいはい」

抱っこを強請るデニスを抱き上げ、バスケットと資料をアッシアに持ってもらう。
それにしても重たくなった。ここに来た時はまだあんなに小さかったのに。
そう数年も経っていないのに子供の成長はなんて早いのだろう。

「…えでぃ、いい匂いする…お花の匂い」

「冠被ってるからかな」

「ううん…違うよ。でも甘い匂い」

スンスンと首元の匂いを嗅ぐデニスの言葉に少し驚かされる。
宮廷に戻るとデニスはアッシアと共に部屋へ戻って行った。皇帝はまだ仕事中だろうか、少し見に行こうと執務室へ向かった。
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