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ゆるゆると1日は過ぎ。
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ようやくハルカ念願の無職である。
「無職♪無職♪」
いや、こう言うと少々語弊がある。
冒険者ではなくなった、と言うのが正しい。
これで店がスタートすると、オーナー兼シェフ兼マーミヤ商会会長という兼ねすぎじゃないかという専門職まみれな人にジョブチェンジするので、あくまでも一時的な無職モードなのである。
最後の討伐は、日本ではGと呼ばれる台所によく現れる、黒光りしたアレのような色のムカデもどきのバルタンを殲滅してまた口座残高が増えたのだが、それ以前に調味料の売れ行きが絶好調なので、だんだんと見る口座がふざけた桁数の金額になっているので、ちょっと怖いのである。
先日、家や店舗の改装代金で750万ドラン(7500万円)ほど払っているので、持ち金は800万ドランほどだった筈だが、バルタン討伐のお金を入れに行ったら、また口座の金額が1000万ドランを超えていた。
本当にこの国、調味料欲しかったんだなぁ、とハルカはしみじみと思った。
しかし何しろハルカはバイトに勤しむ苦学生だったのだ。
あちらの世界では大金なんて持ちなれてる筈もないので、口座の金額が既によそ様のお財布みたいな感じなのである。
むしろこんな異世界知らずの若者に大金持たせてパーっと使ってしまったらどうするんだと不安すらある。
まあパーっと使うのは家と店の購入でやってしまったが、別にギャンブルとか酒とかではないのだ。先々の自分と仲間達との足場でもあるので、無駄遣いではない。
いやでもこの若さで家とか店とか、贅沢には変わりはないな。
恐らくケルヴィンが売上げを騙して懐に入れててもハルカは全く気づかないのだが、彼も日々好きな仕事が出来て、美味しいものが食べられればそれで満足という、誰かさんとよく似たキャラクターなので、きっと馬鹿正直に税金や経費を抜いてせっせと振り込んでくれているのであろう。
ケチャップとソースも量産体制が整い発売の目処が立ったし、メンツユも併せて発売することになった。
また口座の金額が増えていくのだろう。
ところでメンツユは恐ろしく便利なのである。
何しろ砂糖を加えたらそれだけで煮魚も野菜の煮物もお手の物なのだ。まあだしが入った醤油みたいなもんだから、皆さんも扱いやすいであろう。
魚とかは臭みとりに生姜や日本酒を入れた方がいいが、今までのこの国の調味料事情だと、魚は塩を振って焼く、塩味のスープに放り込むしかなかったのだ。
しかしこの国の人々は、食堂やってても感じるが、みんな美味しいものが大好きな食いしん坊が多い。
それなのになんで『もっと他の味つけでより美味しく食べたい!』と思わなかったのだろう。塩、砂糖、胡椒、ハチミツだけで料理のレパートリーはなかなか増えまい。
日本の調味料を生み出した皆さまを見習いたまえ。
だんだん調味料が増えていく。
これで家庭でもお店でも美味しいご飯が食べられる筈だ。
着々と【サウザーリン王国の食文化の発展計画】は進んでいるのである。
「トラちゃん、ちょっと来て」
ネット通販を出してもらい、食器を各店舗用に購入することにした。
レストランには色とりどりの皿やボウルを購入し、パティスリーはシンプルに白をメインに揃えた。
そして、制服である。
レストランは特にこだわりはないので、黒いシャツとパンツに同じく黒の腰エプロンだが、パティスリーは違う。
フリフリの乙女チックな黒のワンピースにフリルのついたエプロン。同じくフリフリのヘッドドレス。
そう、メイドカフェとかで
「お帰りなさいませご主人様」
のアレである。男性は、白シャツ黒ベスト黒パンツに細身のネクタイ。冬場用に燕尾服みたいなジャケットもご用意しますよ喜んで。
女の子はもふもふのフードつきの赤いコートとかで赤ずきん風にしてもいいが、多分仕事がやりづらいだろうからおいおい相談しよう。
自分にはとても似合わないのでフリフリ系は辛いが、可愛い子が多いこの国では眼福この上ないはずだ。
シャイナさん……たまーにでいいから店の看板娘してくれないかなあ。
子供達はまだ抵抗出来る強さもないし、あれだけ可愛いと誘拐待ったなしだから却下だ。
「トラちゃんはどっち着るー?執事服とメイド服。レストランの方もあるけど」
ハルカはみんなの希望を聞くためにお試しで購入した制服を広げて見せた。
『個人的にはパティスリーの方がいいですね。可愛らしいのでメイド服を』
サラサラと紙にペンで書きながら、トラちゃんがコクコクする。
「ずっと聞きたかったんだけど、トラちゃん女の子なの?男の子なの?」
『作り物なのでどちらでもありません。お陰様で気に入った服はどちらも着られます。洋服は可愛いのも格好いいのも好きでございます。ハルカ様のお陰で楽しい生活が出来てワタクシ大変感謝しております』
「これ土下座はやめんか。私が越後屋みたいじゃないか」
手足が短いので土下座というより五体投地みたいになるトラを慌ててハルカが止めた。
「トラちゃんはメイド服、と。後は晩ごはんの時にみんなに聞いてみようかな」
討伐してオークやらドードー鳥やら色々捕獲してきてもらわないと行けないし(まだ肉関連の在庫は沢山あるけど、高級食材の方が多いのよね)、色々とやらないといけない事が山積みである。
引っ越ししたら家財道具もトラから買わないといけない。今買うと荷物になるので、ほぼ荷物らしい荷物はなんもないので、自分は明日から引っ越しと言われても問題ない。
ケルヴィンやクライン、ミリアンはずっとこの国で生活していたのでそれなりの荷物があるだろう。どのくらいまとめるのにかかるんだろうか。
(……あ、私とかプルちゃんやシャイナさん達が先に引っ越ししとけばいいのか。待ってる時間が勿体ないし)
そうだそうしよう。
とりあえずそろそろご飯の支度をしないと。
傾いてきた陽を眺め、今夜はカツカレーにしようかなー、と呟きながらハルカはトラを連れてキッチンに向かうのであった。
「無職♪無職♪」
いや、こう言うと少々語弊がある。
冒険者ではなくなった、と言うのが正しい。
これで店がスタートすると、オーナー兼シェフ兼マーミヤ商会会長という兼ねすぎじゃないかという専門職まみれな人にジョブチェンジするので、あくまでも一時的な無職モードなのである。
最後の討伐は、日本ではGと呼ばれる台所によく現れる、黒光りしたアレのような色のムカデもどきのバルタンを殲滅してまた口座残高が増えたのだが、それ以前に調味料の売れ行きが絶好調なので、だんだんと見る口座がふざけた桁数の金額になっているので、ちょっと怖いのである。
先日、家や店舗の改装代金で750万ドラン(7500万円)ほど払っているので、持ち金は800万ドランほどだった筈だが、バルタン討伐のお金を入れに行ったら、また口座の金額が1000万ドランを超えていた。
本当にこの国、調味料欲しかったんだなぁ、とハルカはしみじみと思った。
しかし何しろハルカはバイトに勤しむ苦学生だったのだ。
あちらの世界では大金なんて持ちなれてる筈もないので、口座の金額が既によそ様のお財布みたいな感じなのである。
むしろこんな異世界知らずの若者に大金持たせてパーっと使ってしまったらどうするんだと不安すらある。
まあパーっと使うのは家と店の購入でやってしまったが、別にギャンブルとか酒とかではないのだ。先々の自分と仲間達との足場でもあるので、無駄遣いではない。
いやでもこの若さで家とか店とか、贅沢には変わりはないな。
恐らくケルヴィンが売上げを騙して懐に入れててもハルカは全く気づかないのだが、彼も日々好きな仕事が出来て、美味しいものが食べられればそれで満足という、誰かさんとよく似たキャラクターなので、きっと馬鹿正直に税金や経費を抜いてせっせと振り込んでくれているのであろう。
ケチャップとソースも量産体制が整い発売の目処が立ったし、メンツユも併せて発売することになった。
また口座の金額が増えていくのだろう。
ところでメンツユは恐ろしく便利なのである。
何しろ砂糖を加えたらそれだけで煮魚も野菜の煮物もお手の物なのだ。まあだしが入った醤油みたいなもんだから、皆さんも扱いやすいであろう。
魚とかは臭みとりに生姜や日本酒を入れた方がいいが、今までのこの国の調味料事情だと、魚は塩を振って焼く、塩味のスープに放り込むしかなかったのだ。
しかしこの国の人々は、食堂やってても感じるが、みんな美味しいものが大好きな食いしん坊が多い。
それなのになんで『もっと他の味つけでより美味しく食べたい!』と思わなかったのだろう。塩、砂糖、胡椒、ハチミツだけで料理のレパートリーはなかなか増えまい。
日本の調味料を生み出した皆さまを見習いたまえ。
だんだん調味料が増えていく。
これで家庭でもお店でも美味しいご飯が食べられる筈だ。
着々と【サウザーリン王国の食文化の発展計画】は進んでいるのである。
「トラちゃん、ちょっと来て」
ネット通販を出してもらい、食器を各店舗用に購入することにした。
レストランには色とりどりの皿やボウルを購入し、パティスリーはシンプルに白をメインに揃えた。
そして、制服である。
レストランは特にこだわりはないので、黒いシャツとパンツに同じく黒の腰エプロンだが、パティスリーは違う。
フリフリの乙女チックな黒のワンピースにフリルのついたエプロン。同じくフリフリのヘッドドレス。
そう、メイドカフェとかで
「お帰りなさいませご主人様」
のアレである。男性は、白シャツ黒ベスト黒パンツに細身のネクタイ。冬場用に燕尾服みたいなジャケットもご用意しますよ喜んで。
女の子はもふもふのフードつきの赤いコートとかで赤ずきん風にしてもいいが、多分仕事がやりづらいだろうからおいおい相談しよう。
自分にはとても似合わないのでフリフリ系は辛いが、可愛い子が多いこの国では眼福この上ないはずだ。
シャイナさん……たまーにでいいから店の看板娘してくれないかなあ。
子供達はまだ抵抗出来る強さもないし、あれだけ可愛いと誘拐待ったなしだから却下だ。
「トラちゃんはどっち着るー?執事服とメイド服。レストランの方もあるけど」
ハルカはみんなの希望を聞くためにお試しで購入した制服を広げて見せた。
『個人的にはパティスリーの方がいいですね。可愛らしいのでメイド服を』
サラサラと紙にペンで書きながら、トラちゃんがコクコクする。
「ずっと聞きたかったんだけど、トラちゃん女の子なの?男の子なの?」
『作り物なのでどちらでもありません。お陰様で気に入った服はどちらも着られます。洋服は可愛いのも格好いいのも好きでございます。ハルカ様のお陰で楽しい生活が出来てワタクシ大変感謝しております』
「これ土下座はやめんか。私が越後屋みたいじゃないか」
手足が短いので土下座というより五体投地みたいになるトラを慌ててハルカが止めた。
「トラちゃんはメイド服、と。後は晩ごはんの時にみんなに聞いてみようかな」
討伐してオークやらドードー鳥やら色々捕獲してきてもらわないと行けないし(まだ肉関連の在庫は沢山あるけど、高級食材の方が多いのよね)、色々とやらないといけない事が山積みである。
引っ越ししたら家財道具もトラから買わないといけない。今買うと荷物になるので、ほぼ荷物らしい荷物はなんもないので、自分は明日から引っ越しと言われても問題ない。
ケルヴィンやクライン、ミリアンはずっとこの国で生活していたのでそれなりの荷物があるだろう。どのくらいまとめるのにかかるんだろうか。
(……あ、私とかプルちゃんやシャイナさん達が先に引っ越ししとけばいいのか。待ってる時間が勿体ないし)
そうだそうしよう。
とりあえずそろそろご飯の支度をしないと。
傾いてきた陽を眺め、今夜はカツカレーにしようかなー、と呟きながらハルカはトラを連れてキッチンに向かうのであった。
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